ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

【観戦記】東京六大学野球:東京大学-早稲田大学(偉大なるアマチュア集団)

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4月10日、神宮で東京六大学野球を観戦。

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大学野球のある春が戻ってきたことに感謝。

〇 スタンドの空気感、グラウンド上の緊張感

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日陰は肌寒い季節であるが、野球観戦にはベストに近いコンディション。メディアを騒がせるようなスター候補は不在であるが、母校愛を静かに胸に抱いた各大学OBや熱心な野球観戦者が集うスタンドの雰囲気は個人的に好きだ。また、スコアブックやメモを記入する方々の姿を見ると、野球は「記録のスポーツ」であると改めて実感する。

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昨年の秋季リーグを優勝した早稲田大学東京大学が対戦したオープニングゲームは、初回に2点を先制した早大が追加点を積み上げることに成功。

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東大は堅実な守備で失点に繋がるようなミスはなかったが、シンプルに投手が早大打線に力負けしてしまったように見えた。

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ただし、東大ナインの集中力は途切れることなく堅実なプレーを続けており、点差を感じさせない締まった雰囲気で試合は進んだ。東大に限らず、厳しい状況下で試合が行われていることに対する重みを選手が感じているからなのか、良い緊張感、熱い気持ちが伝わるプレーが多く見られた。

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試合終盤、劣勢が続いていた東大の反撃が始まった。7回に早大の先発・徳山選手からタイムリーと四死球で3点を返した後、8回表にタイムリーと押し出しで2点を追加して1点差に迫る。

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早大はリリーフ陣が制球に苦しみ、小宮山監督が自らマウンドに向かうなど、冷静さを取り戻そうという動きを見せた。

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1点差に迫り、なおも一死満塁のチャンスを作った東大であるが、早大リリーフ陣が踏ん張り、同点とはならず。このまま試合は終了して早大が逃げ切ることに成功。

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勝利を挙げた早大はもちろん、東大に対してもスタンドから大きな拍手が送られた。

〇 「偉大なるアマチュア集団」の奮闘もまた六大学野球ならではの魅力

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以前、NHKの大越キャスター(東大野球部OB)がオフィシャルガイドブックの特別インタビューにおいて「『東大に負ける』ことこそが、相手にとっての一番の弱点であり、東大の武器である」というコメントを残していた。この日の試合は、大越キャスターの至言を体現するような展開だったと思う。

全国から集ったプロ候補生集団である各大学の野球エリートたちに対し、謙虚な姿勢で対抗する東大ナインの奮闘は、大越キャスターの言葉を借りれば「偉大なるアマチュア集団」の姿そのものであろう。勝敗がある競技だけに、誰しもが勝利を目指していることは間違いないが、そこに至る過程でどう取り組むかが問われるのはプロとは異なる点だ。

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しばらく勝利から遠ざかっている東大であるが、扉には手をかけている状況は続いている。その日はそこまで遠くないと感じさせる好ゲームだった。

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【観戦記】イースタン・リーグ:読売ジャイアンツ-北海道日本ハムファイターズ(ジャイアンツ球場のリニューアルと「TOKYO GIANTS TOWN」に関する考察)

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3月27日、ジャイアンツ球場にてイースタン・リーグを観戦。

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オープン戦に足を運べなかったため、筆者にとって今年初の野球観戦。球場周辺の桜も美しく、春にしては少し暑いくらいの気温が屋外観戦には丁度良かった。

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試合は、高卒ルーキー・秋広のプロ初本塁打、香月の弾丸ライナー本塁打など、期待のかかる選手たちの活躍もあって、今季初の連勝を飾った。対戦相手のファイターズも今川選手(JFE東日本)、立野選手(東海理化)といった社会人野球出身の選手たちのプレーを見ることができたのは嬉しかった。

〇 大幅リニューアルしたジャイアンツ球場

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イースタン・リーグの会場であるジャイアンツ球場が、今季から大幅リニューアルされたことも観戦理由の1つにあった。

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バックネット裏の後方席に「屋根付きシート」、同席を含むネット裏・両サイドの座席を背もたれ+ドリンクホルダーを設置した「SS席」「S席」を新設し、内野席の差別化を図った。フィジカルディスタンスの関係で全席販売していないものの、当日販売分は完売しており、熱心な観戦者の需要を満たしていると言えるだろう。

〇 スタグルレベルを凌駕する「東京しゃもの親子丼」

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また、ハード面に限らず、ソフト面にもテコ入れを図っている。従前、常設売店で軽食類のみを提供していたが、キッチンカー出店と飲食スペースを新設した。このうち、球場のある多摩地区の食材を取り扱った「TOKYO多摩キッチン」で筆者がチョイスした「東京しゃもの親子丼」の絶品ぶりには驚かされた。

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観戦後に調べてみたところ、「東京しゃも」は江戸時代にルーツを持つ東京都のブランド鶏であり、あきる野市青梅市の生産者が携わっている。一般的に食べる鶏肉とは異なるコクのある味わいで、フワトロの玉子と鶏肉が絡み合いも絶妙。オーダーを受けてから作るため少し時間を要するが待つ価値は確実にある。2000人弱の観客規模だから提供できるハイクオリティぶりであり、球場飯の枠に収まらない一品と言える。

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この他、TOKYO多摩キッチンでは、多摩産の生姜をふんだんに使った「ジンジャーエール」、阿部監督にちなんだ「ビッグミットチキン」等の豊富なメニューを取り揃えていた。試合後半に顔を出したところ、ドリンク類以外は完売したらしい。今後も、土日の試合開催日は継続出店するとのことで、次回観戦時も見逃せない存在となった。

〇 球場リニューアルの背景にある壮大な構想

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私見であるが、巨人が球場リニューアルを軸とした二軍戦の集客事業を明確に打ち出した背景には、2016年に発表された「TOKYO GIANTS TOWN」構想の実現に向けた下地作りと考えることができるだろう。球団は稲城市にファーム用の新球場を新設。選手育成拠点の整備と球団施設を構える多摩地区の地域振興を意識した壮大な構想を掲げていた。

一方、当初予定では2023年3月の球場完成を予定していたが、昨年7月に24年3月以降に延期が発表*1し、今後のスケジュールが不明確となったため、現行施設で出来る取組として今回のジャイアンツ球場リニューアルに着手したものと考えらえる。こうした取組を新球場の運営にフィードバックすると考えれば、延期も決して悪くないだろう。

将来的には、北海道日本ハムファイターズ鎌ヶ谷球場のように、MLBマイナーリーグ球団を彷彿とさせる地域密着を絡めた独自の取組*2を進めることができれば良いだろう。福岡ソフトバンクホークスのファーム本拠地・タマホームスタジアム筑後のようにハード面の整備=育成現場として機能すれば両立することができるだろう。近年、復活の狼煙をあげた「育成の巨人」というブランドイメージを象徴となる場になることを願う。

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*1:巨人、ファーム新球場の開業延期 コロナ影響考え設計を見直す - 野球 - SANSPO.COM(サンスポ)

*2:ただし、アメリカでは昨季マイナーリーグ機構がMLBに吸収合併されたかたちで統合されており、地域密着型の球団経営が岐路に立たされている

「魂込めて」:第95回 天皇杯・全日本総合バスケットボール選手権大会 観戦記

本記事は「川崎ブレイブサンダース Advent Calendar 2020 - Adventar」に第11日目に寄稿するものです。昨日(12月12日)は、ゆーさんの「アウェイ観戦に行こう!|ゆー|note」でした。遠征欲が高まる素敵な記事でした。こちらも是非ご覧ください。

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○ はじめに 

 「こんなはずじゃなかった」という言葉を何度も使い続けているうちに2020年は終わろうとしている。「想定内(外)」が流行語大賞を受賞したのは2005年であることに驚いたが、想定外の事態が1年間を通じて続くとは考えもしなかった。ちなみに、北海道日本ハムファイターズヒルマン元監督の「シンジラレナ~イ」は2006年の流行語大賞にノミネートされている(どうでもいい情報)

 そうした想定外の事象と想定内の仕事の多忙さも相まって、筆者は今季のアリーナ観戦に足を運べていない。が、今年を終える前に書き残しておきたい試合がある。それが1月に観戦した「天皇杯 全日本総合バスケットボール選手権大会」(以下「天皇杯」という)の2試合のことである。

 川崎ブレイブサンダースとしての初タイトルを目指した2日間の激闘は、筆者の観戦者生活においても深く胸に刻まれるものであった。今はまだあの熱狂を生み出すためには遠い状況ではあるが、再び戻ることを信じて本記事の筆を進めていきたいと思う。

1月11日:準決勝・宇都宮ブレックス

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 アリーナ席の入場を待つ待機列で思わず「マジか」と声に出そうになった。9日に行われた準々決勝・アルバルク東京戦の逆転勝利に貢献した藤井祐眞選手がインフルエンザの感染し、この日の準決勝に欠場することが明らかになったのである。

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 前年12月のリーグ戦で負傷した篠山竜青選手が欠く川崎にとって、藤井選手の存在が鍵になると思われただけに厳しい現実を突きつけられた。しかも、相手は宇都宮ブレックスさんである。やり繰りをして戦うには、厳しい相手であることは言うまでもない。

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 苦境を前にして「覚悟を決める」という気持ちは選手・観戦者も同じだったと思う。そうした強い気持ちが体現された試合だった。タイトな守備を志向する両チームらしくロースコアで進んだ序盤戦だったが、ジョーダン・ヒース選手がプレッシャーのかからない外からのシュートで得点を重ねてリードを作る(前半18得点)。守備では篠山・藤井両選手に代わってポイントガードで起用された辻選手のハードワークも光った。

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 前半13点リードを奪うことに成功した川崎であるが、限られた戦力での継続したハードワークが見られていただけに、リードと運動量を維持できるかが1つのポイントであった。3Q、宇都宮さんは攻めの姿勢を見せて巻き返しを図ってきたが、大塚選手のスリーポイント+バスカンの4点プレー、青木選手の果敢なアタックで反撃ムードを抑え込むことに成功する。

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誰か、ではなく全員が集中力と気迫を押し出したプレーで勝利をつかんだ。

 

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 難しい展開を乗り切れたのは、佐藤HCがシーズン当初から追求し続けてきたチームのスタイルと、逆境を乗り切ろうとする強い気持ちだと思う。間違いなく観戦してきた中でのベストゲームだ。

1月12日:決勝・サンロッカーズ渋谷

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 激勝の余韻に浸る暇もなく、翌日の決勝戦を迎えた。対戦相手のサンロッカーズ渋谷さんは、前日の準決勝(滋賀戦)を観戦した時に「これは強い」と唸らされただけに、厳しい試合が予想された。

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 2019-2020シーズンの渋谷さんは、新体制の色合いが強かったため、開幕前は未知数であったが、「全員バスケ」というシンプルなテーマを維持するために徹底したプレータイムシェアによるチームマネジメントを駆使して、アルバルク東京千葉ジェッツといった強豪ひしめく東地区で確かな存在感(未開催となったがチャンピオンシップ進出も確実だった)を見せていた。

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 プレー強度を維持するためにベンチに入った全選手の出場時間を徹底管理することで試合終盤のディフェンス・走力を維持することで強度を保ち、強豪相手に粘り勝ちする試合展開を作る渋谷さんに対して、限られた戦力を全員の気迫で決勝に進出した「気持ち」の川崎が挑むという構図となった。

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 試合は、前日の激戦による体力の消耗が激しい川崎が、一時的に9点差リードを奪われるなど苦しい展開に陥ったが、同点に持ち込んで折り返すことに成功。接戦の展開となったが、終盤まで強度と集中を保てるかが鍵となった。

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 後半も、終盤まで1点を争う熱い展開。ワンポゼッションごとの攻防にハラハラとさせられる。リードを許した川崎も最後まで粘ったが、最後は個のクオリティとプレー強度に勝る渋谷さんが勝利を掴み取り、優勝を果たした。

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 連日のフル稼働で三井寿を彷彿とさせる限界ギリギリの表情とプレーを見せた辻選手に象徴されるように、苦しいチーム事情で迎えたファイナルラウンドでチームは大きく成長できたと思う。

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 主にサッカーでシルバーコレクターとして立ち振る舞ってきた筆者であるが、この試合ほど「悔いはない」と思う試合はなかった。試合を見る全ての人の心を揺さぶる素晴らしい試合だったと思う。

 3.終わりに

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 プロレス業界をけん引する最大手団体・新日本プロレスが、どん底の状態に瀕していた時から後楽園ホールのバルコニーに「魂込めて!新日本プロレス」という手書きの横断幕が掲出されていたのを覚えている。掲出に対して是非はあったと思うが、気持ちのあるファイトを見せてほしいというファンの思いを体現だったと筆者は考える。

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 川崎ブレイブサンダースが戦った2日間の激闘も「魂込めて!」という試合だった。選手はもちろん、ブースターも同じであった。宇都宮さんの力強いブレックスコールに臆することなく、川崎コールも力強くSSAのコートに響き渡った。苦境を迎えた渋谷さんと試合でも、最後まで声やハリセンの音で後押しした。優勝という結果を手にすることはできなかったが、ステージに辿り着くまでの過程がファミリーの絆を強くしたと思う。DAZNで目にするカール・ルイスの名言を添えて本記事を締めたいと思う。

 

It's all about the journey, not the outcome. 

「過程が全て、結果が全てじゃないんだ」

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

明日(12月14日)は「うにたん #川崎ファイト」さんの『❨仮❩いろんな場所からの景色』です。こちらも是非ご覧ください。

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観戦記:明治安田生命J1リーグ・川崎フロンターレ-清水エスパルス

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8月29日、等々力陸上競技場清水エスパルス戦を観戦。

試合は、川崎が3試合ぶりの勝利。以下、当日の観戦を通じて感じたことについて書いていきたいと思います。

1.ビルドアップVSプレッシング

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対戦相手となる清水さんは、フレッシュな選手を起用して試合に臨まれた。その意味では、両チームとも、起用したメンバーがピッチ上で上手くかみ合うのか否かが、勝敗の行方を占うという印象を受けた。こうした条件下において、川崎は前線からのプレッシングで優位な状況に持ち込むことに成功した。

クラフモフスキー監督が就任した清水さんは、GKから組み立てるビルドアップを採用し、自陣から手数をかけてボールを運ぶことをコンセプトにしておりました。この日の川崎は、相手陣内の深い位置までアグレッシブにプレスを仕掛けていった。連動性は高いとは言えなかったが、両翼に据えた斎藤・宮代両選手の出足の速さは鋭く、ダミアン選手の迫力ある単騎特攻プレスは、ここまで出場機会が限られていた選手を中心に臨んだ清水さん側にとっては嫌なアプローチだと思う。

また、清水さんが最終ラインの圧を外したところに待ち構える、中盤のトライアングルの潰しが効いていた。下田・旗手両選手もやはり機動性に優れ、キャプテンマークを巻いた守田選手も前に出て潰す役割を担うなど、この日の組合せの良い部分を引き出すことができたと思う。

このように、ボール奪取から素早くゴールを狙うかたちを狙う縦の推進力を押し出すことによって、積極的に攻め続けた結果がシュート数「36本」に表れている。極端であるが、今季の川崎が目指す、攻め続ける姿勢を色濃く体現する試合になったと思う。

2.タイムシェア&ローテーション

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表1:川崎フロンターレ 試合出場選手・プレー時間(8月版)

モーニング娘。の往年の名曲『真夏の光線』ではないが、エンドレス、エンドレスサマー連戦中の川崎。去年どころか、今後もまず起こり得ない展開だろう。地獄のような日程の中でも、ルヴァン杯プライムステージ進出、リーグ戦の連勝を10まで伸ばすことができたことは客観的に見ても大きな成果だ。

ただし、アウェイ連戦となった直近2試合は「1敗1分」。今後の戦いに不安を感じたサポーターも少なくはなかっただろう(筆者を含む)。上記表2-2にあるとおり、10連勝を達成した直前3連戦もアウェイ連戦だったこともあり、連戦の疲労度が多くのメンバーに集中していた。連勝が止まった名古屋戦の終盤、名古屋さんのプレー強度の前に跳ね返すことができなかったのは、名古屋イレブンの高い集中力とタスク処理能力によるところが大きいが、川崎側に反撃するだけのエネルギーが残されておらず、ガス欠状態であったことも追い打ちをかけてしまった。連戦の難しさをあらためて実感する敗戦だったと言える。

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表2:8月の出場選手数、プレー時間が180・215分以上

等々力に戻って迎えた8月最後の試合、鬼木監督はフレッシュな選手を先発起用し、リハビリを続けてきた憲剛さんも約10か月ぶりにメンバーに名を連ねた。上記の試合雑感で述べたとおり、清水さんのゲームモデルとの相性は大きかったと思うが、斎藤・宮代選手のように運動量を全面に押し出せるのは疲労度の少なさも攻守のアグレッシブさを後押しするかたちとなった。清水戦の前半は、出場機会と活躍に飢えた選手たちのエナジーに満ち溢れた45分だった。

8月を振り返ると、タイムシェアによる特定選手への依存傾向の軽減に加えて、ターンオーバーによる休養を置くことでコンディションを高い水準にキープする重要性が求められることを実感した。1か月で9試合を消化する非常にハードなスケジュールを、負傷等による離脱は無く乗り切れたことは良かったと思う。7月に離脱した長谷川選手が戻ってくれば、今季を戦う陣容は概ね整ったといえる。まずは、ルヴァン杯を含めた9月13日までの中2~3日の4試合を乗り切るか?鬼木監督の運用面での対応に注目していきたい。

3.思いは重なる

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清水戦を迎える前日、1枚の写真が話題となった。神戸戦の試合前に斎藤選手がジョギングをする場面を撮影した写真だった。前節の名古屋戦で負傷した三笘選手に変わって急遽、ベンチ入りする可能性があった斎藤選手だが、結局出番は訪れず。折しも、最初の移籍ウインドー終了間近だったこともあり、サポーターは様々な思いを巡らせた。3年目を迎えた斎藤選手の今季にかける決意は誰しもが知るところであり、こうした状況下で出場機会を得られないことに憤りを感じているかもしれないとも考えた。

清水戦で先発出場した斎藤選手には、一段と大きな手拍子が送られたように思えた。今日の活躍に対する期待、真摯な姿勢に対する敬意の双方がこもっているように感じた。思いに応えるかのように斎藤選手はピッチを全力で駆け抜けた。若手選手のようなハツラツとしたプレーに等々力の観衆は一喜一憂した。清水・大久保選手の好セーブの前にネットを揺らすことはできなかったが、振りぬかれたシュートの瞬間、スタジアムの心は重なっていたと私は感じていた。更なる輝きを次の試合でも見たいところだ。

メンバー入りしたものの、出場機会は限られると思っていた憲剛さんであるが、後半2点を追加したことで投入できる状況を作ることができた。久々にピッチ上で見る背番号14番は、テンポよくボールを捌いたと思えば、ペナルティエリア近くで勢いよくシュートを放っていた。「憲剛さん、ゴール狙っているな」と感じた川崎サポは少なくないだろう。そうした隠しきれないゴールへの強い意欲が、ゴールに繋がったとも言える。

一昨年の2018年のゴールも相手のビルドアップをかっさらって決めたかたちが多かったので、近年の得意なかたちでもあるが、ブランクを感じさせない高い集中力と技術で見せるあたりは見事としか言いようがない。

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優勝するために必要なラストピースであることを強く印象づける復帰戦となった。憲剛さんとともに、僕らは走っていく。

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素敵な思い出があなたとまた増えたわ

僕たちだけの エンドレス エンドレス サマ〜

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観戦記:明治安田生命J1リーグ・川崎フロンターレ-セレッソ大阪

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8月19日、等々力陸上競技場セレッソ大阪戦を観戦。


試合は5得点を奪った川崎が勝利。当日の観戦等を通じて感じたことについて、以下のとおり書いていこうと思います。

 

 

(1)セレッソ大阪さんの「継続」と「進化」

丁度、首位と2位の直接対決となった試合。リーグ最多得点の川崎、リーグ最少失点のC大阪さんと構図もまた面白い。筆者は、現地観戦時のイメージを掴むため、直前の柏戦を含めた数試合に目を通すとともに、出場状況等の整理を行うことでチームの戦い方等について理解を深めることとした。‪

C大阪さんは、ロディーナ監督体制の2年目を迎えた。同監督の東京ヴェルディの指揮時も現地を含めて見てきたが、目指す方向性は同じという印象だ。スペイン人監督というと「ポゼッション志向」「攻撃サッカー」みたいな印象を抱きがちであるが、ロディーナ監督はボールを保持を組織守備に活かしたチーム作りを行っていた印象だ。

一方、C大阪さんは、ユン・ジョンファン監督(現千葉)時代に築き上げた堅固な守備戦術でタイトル獲得。同監督就任時、躍進を支えた山村和也・山口蛍・杉本健勇の移籍はあったものの、堅固な実践した守備陣のタレントは残っていた。ロディーナ監督の就任時に大熊編成部長は「堅守とゲームの組む立て」をポイントに挙げていたように、タイトルをクラブにもたらした堅守については継続性を選択したことになる。

www.football-lab.jp

実際、ロディーナ監督とイバンコーチの手でポジショナルプレーの要素を落とし込んだことで、ブロックを組んで跳ね返すだけではなく、自分たちでコントロールしながら守れるチームを作り上げる方向に成功している。具体的な数値を見てみると、チーム別の平均ボール支配率を見ると「51.5%」(8/20時点)を記録しており、同じく保持型を志向するクラブと遜色のない数値である。

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表1 セレッソ大阪  出場選手とプレー時間

高いボール保持率を背景に組織的な守備戦術を実践するC大阪さんであるが、裏返しとしてメンバーの固定化にも繋がっている。もちろん、メンバー固定化は川崎を含めて上位に位置するチーム全般に言えるところであるが、リーグ戦に関してはFWを除く9人の出場時間が突出している。

実際に試合を見てみると、選手間の連携に磨きがかかっていることがわかる。現時点のチームの完成度の高さはリーグ屈指と言える。おそらく今回のようなレギュレーションで無ければ、より優位にリーグ戦を戦えたかもしれない。

(2)「奪い、奪われ、繋ぎ、繋がれ」

試合前の事前整理を踏まえて、試合のカギを握るのは「先制点」「ボールを保持する時間」の2点だと思っていた。とにかくボールの奪い合う両チームの選手たちによるマッチアップがとにかく面白かった。奪い取っても奪い返そうとする、そうした圧力を剥がそうとする駆け引きがピッチ上の至る所で展開された。チャントの無いスタジアムにボールを挟んだバチバチとした球音がハイレベルな攻防を物語っていた。

個のボール奪取力に加えてポジショナルプレーの原則である「位置的優位性」を活かした連携で突破するC大阪さん、大島僚太を筆頭に相手を剥がす「ターン」を駆使する川崎の持ち味がさく裂したことを含めて、現地観戦だからできる見方で楽しめたと思う。

(3)今季の川崎を特徴づける2つの「短さ」

両クラブのサポも「先制点を奪いたい(奪われたくない)」という思いはあったはずであったと思うが、筆者の願いも空しく、前半7分に好調が続いていたブルーノ・メンデス選手に先制点を許してしまった。となると、前節の柏さんと同様の展開に持ち込まれる可能性があった。さらに、試合序盤の得点と言うことでボールを保持しながら追加点を狙う姿勢を見せる等、完全に相手ペースに持ち込まれてしまった。

明らかに相手ペースの展開の中で川崎は脇坂選手のFKで悪い流れを断ち切り、さらに家長選手のPKによる2点で逆転に成功。正直言って出木杉君だ。

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表2-1  川崎フロンターレの得点・失点時間の内訳

逆にC大阪さんとすれば、自分たちが試合を優位に進めていた手応えはあったはず。脈絡もなく得点だけ奪われていた感覚だと思う。私見であるが、こうした「脈絡なく得点を奪える」点が今季の川崎が見せる特徴の1つだと考えている。セットプレー、単騎突破からフィニッシュまで持ち込むカウンター等、得点パターンにバリエーションが生まれたことで試合展開における劣勢を跳ね返すことができる。

表2-1に得失点の時間帯別の内訳をまとめているが、先制を許した試合でもビハインドを追う時間は長くないことがわかる。試合序盤に失点するケースが続いてしまったのは要課題といえるが、修正して追い付き、逆転する力があるのは確かだ。

さらに、攻撃に幅を持たせたことで、川崎は畳みかける攻撃で短時間に複数得点を奪えるようになったのも大きな特徴とも言える。この日の試合においても、三笘選手のゴールから2分後にダミアン選手のゴールが生まれた。反撃の狼煙をあげるための火種を取り上げるようなダメ押し点となった。

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表2-2 川崎が5分以内に複数得点を奪った試合

表2-2に整理しているが、再開後のリーグ戦10試合で3得点以上奪った試合は7試合があるが、5試合において得点から5分以内に追加点を奪っている。攻撃の手綱を緩めることなく、常に次のゴールを狙い続けている。川崎が大量得点を積み上げているのは、ブレない攻撃的な姿勢も影響しているだろう。

(4)今年の川崎は「しょうがない」を諦めない

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リーグ3連覇を目指した昨季は、ゴール前にブロックを固められて点を奪えなかった試合、戦術的優位性を失ってボールを支配された試合など悔しい思いをした。王者として徹底的にマークされ、思い通りに進まない時期を過ごす中で「しょうがない」と思っている自分がいた。「仕方ない、3連覇なんてなかなかできるモノじゃない」と言い聞かせるように。

これに対し、今季の川崎は、堅い守備を突き破る攻撃、相手からボールを奪い取る守備を追求することで「しょうがない」を諦めなかったチームだ。大一番で見せた強さは、こうした強い気持ちを証明する試合となったのではないだろうか。メインスタンドのはしの方で観戦しながら、こんなことを考えていた。

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リーグ10連勝は凄い記録だ。しかし、我々が目指すのは、その先にある次のタイトルである。現在の勝ち点差が逆転可能であることは、追いかけて、抜いて、最終的に優勝を掴んだことを知る我々が一番よく知ることだろう。だからこそ、過酷な連戦の中でも「しょうがない」と諦めることなく、貪欲に勝利を追い求めていく姿勢を持ち続けていきたいと思う。

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観戦記:明治安田生命J1リーグ・川崎フロンターレ-大分トリニータ

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8月8日、等々力陸上競技場で大分戦を観戦。

試合は、薫殿とダミアンさんのゴールで2得点を奪った川崎が勝利。観戦等を通じた感想として、以下の3点について書きました。

1.昨季からの進化を垣間見た川崎の守備

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リーグ戦は、2試合連続で無失点勝利。特に後半は、追加点は奪えなかったものの、高い集中力・球際の強さで攻撃の芽を摘むイレブンの奮闘ぶりが光る。スタジアムならではの緊張感がピッチから伝わってくる感覚があり、見応え抜群の内容だった。

自陣から丁寧に繋ぐ大分さんがボールを保持する時間は長かったものの、要所を抑え、終盤はボールを握り返してコントロールすることができた。正確な表現ではないかもしれないが、守備で相手を圧倒できたと思う。

個人的に印象に残ったのは、昨季の同カード対戦からの変化である。昨季の等々力での対戦時、川崎は前線から圧力をかけて相手を圧倒しようとしたと試みたが、大分さんのポゼッションの前にボールを奪うことができず、飲水タイムのタイミングでアプローチを変えた経緯がある。

昨季の鬼木フロンターレで表出した課題の1つは、保持型のチームが増えたことに伴い、自分たちのサッカーの前提となる「ボールを保持した状態での攻撃」「球際の強さで相手からボールを奪う守備」が成立しないケースが増えてきたことだ。

私見であるが、今季の新しい配置・戦術は「昨季出来なかったことを出来るようにする」ためのモノだと考えている。最前線の枚数が増えたことから、大分さんのGKと3バックの自陣ビルドアップを執拗に追い続けることができた。

ボールを運びたい大分さん、奪いたい川崎の攻防が何度も展開され、ダミアンが奪った2点目のゴールのようなケースも生まれた。今後、神戸・清水・マリノスの保持型とのチームを控えていることから、攻撃に繋げる前線からの守備にも磨きをかけてほしいところである。

2.地獄日程を戦い抜くために目指す「全員サッカー」

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7月は3連戦を2回こなしたが、8月は連戦に切れ目がない。ACL組を除く各チームが、リーグ戦7試合+カップ戦2試合=9試合を戦うことになる。さらに先月と異なり、今月から長距離移動を含むアウェイ対戦を実施。移動+過密日程を考慮した運用を進めていく必要がある。その意味では、再開後の序盤戦で再スタートダッシュに成功した川崎も、歯車が狂えば一気に成績が低迷する可能性は低くはない。

筆者が、プレータイムシェアのデータを集め始めたのは、連戦を乗り越えるための選手運用に注目したからだ。本ブログでは何度も取り上げているが、実際にデータを整理してみると、川崎の監督・コーチ陣が連戦を見据えたローテーションを組み、怪我等による離脱を防ぎながら、選手起用を実施していることがわかる。

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8月の序盤3試合を終えて、(カップ戦を含めていたこともあるが)連続出場が続いていたGK・DF陣のローテーションを実践したのは大きな成果と言える。ルヴァン杯・鹿島戦ではソンリョン・谷口・登里の3選手、この日の大分戦では連続スタメンを続けてきた山根・家長選手を休ませた。

先を見据えつつも、目の前の試合をしっかり戦うことも大切なことから難しい判断だと思うが、総力戦で乗り切ることができた。起用に応えたジオゴ選手の奮闘を称えるとともに、次の出場も期待させる内容を見せてくれたと思う。

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もう少し数字で語りたいと思う。3連戦単位で区切ってみると、直近3試合は21人が出場している。FPは登録選手25人中19人が出場。出場選手数が増えた結果、200分以上プレーした選手は2人(ジェジエウ・碧)に抑えられている。中2~3日の連戦がまだまだ続き、12月のシーズン終盤まで過密日程の状態は継続されることから、川崎の選手運用はさらにローテーション化は進んでいくだろう。

しかし、繰り返し述べるが、重要なのは選手を変えることが目的ではなく、チームの状態を維持して結果を残し続けることである。まだ試合に絡めていない若手選手、復活を期するベテラン選手の奮起を含めて選手全員が戦力として活躍する「全員サッカー」を実現してほしいと願っている。

3.観戦を「新しい生活様式」の歯車にする

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観戦がある日常が戻ってきたが、依然として制限も多く、家庭・職場を含めて感染対策と向き合い続けている。筆者は、現場仕事に携わっている関係で在宅勤務の機会は限られており、細心の注意を払って日々の出勤・業務をこなしている。正直、気持ちが張った状態で普段以上に疲れを感じる時もあるが、週末に試合があると思うと大きな励みになる。

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スタジアムに足を運ぶと、運営に携わる多くの人たちが感染対策を含めて尽力してくださっている。そうした姿を見ると、自分も気持ちを引き締まるし、出来る限りの協力をしていきたいという思いが強くなる。

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試合を見終わった後、また行きたいという思いを胸に日常生活に戻る。そのために、体調管理、自身で出来る感染対策を徹底していかねばと思う。観戦をもう一度日常の中に組み込むことで今を生きていく。川崎フロンターレの選手・クラブに力を沢山もらっていることに感謝しかない。

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力を合わせて、みんなで優勝しよう。

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観戦記:明治安田生命J1リーグ・川崎フロンターレ-湘南ベルマーレ

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7月26日、等々力陸上競技場湘南ベルマーレさんとの試合観戦。

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この日は夏の雰囲気も感じる空模様。(雷雨の予感も含めて)

試合は、3-1で川崎が逆転勝利。試合等を通じて感じたことは以下の点です。

〇「フォームチェンジ」の実装が呼び込んだ6連勝

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川崎は、湘南戦の勝利で6連勝を達成。しかし、観戦者レベルでも、今回の3連戦は難しい試合だった。表1のとおり、再開後の6試合における得点時間を見てみると、前回の3連戦(鹿島~柏戦)は前半で先制点&追加点を奪い、試合を優位に進めて勝ち切ることができた。序盤の膠着状態を打開し、速攻で一気に攻め落としたFC東京戦は最たるものだろう。

一方、今回の3連戦のうち、前半に得点を奪ったのは横浜FC戦の1点に留まった。いずれの試合もボールを保持して主導権を握ったものの、耐えきった相手に攻勢の機会を与えてしまう。この日も、湘南・タリク選手の見事なゴールで先制点を許し、対戦相手が考えるプラン通りの展開に持ち込まれてしまった。

まさに、負けパターンに遭遇してきた川崎であるが、3試合とも選手交代を機に流れを変えて勝利を引き寄せることができた。選手交代が大きな効果を挙げた理由は選手層がもたらすクオリティもそうだが、選手交代によってピッチ上の表現方法における変化が大きいと考える。

今季の川崎は新たなフォーメーションを軸として従来とは違ったアタッキングスタイルを見せてきたが、配置する選手を変えることで変化を与えることができるようになってきた。ヲタクっぽい喩えであるが、平成ライダーシリーズの基本コンセプトの1つと言える「フォームチェンジ」(多段変身)に構図が近いだろう。対戦相手に適したフォームに変えることで試合を優位に進める。過密日程と相手の対策を上回るうえでも有効な手段であると考えている。

横浜FC戦から戦線復帰した小林悠・三笘薫両選手の存在は大きい。狭いスペースを縫うように突破するドリブルを見せる三笘選手、密集したボックス内で受けてからフィニッシュまで持ち込める悠様のプレーは、スピード&パワーが光る長谷川・ダミアンとは対応が大きく異なる。プラン通りに抑え込んでいた各チームも、川崎の変化にペースを狂わされてしまったという印象だ。

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この日の湘南戦は、カードの切り方と組合せが違ったことで、これによって新たな収穫と課題が見えてきた。収穫としては、先発も予想された三笘選手が切り札として結果を残したことである。交代直後でボールを奪われるなど、流石に相手の警戒度もグッと上がり苦しんでいたが、逆転ゴールの場面のように、1人でゴールまで持ち込める個人戦術としての役割を果たした。特に劣勢時は、こうした個で打開する力が求められることを含めて、起用・観戦する側も彼に対する期待はより高まったかたちになる。

課題は、組合せ次第では機能不全・バランスの悪さも出ることが想定される。例えば、今季初の途中出場となったダミアンであるが、周囲の選手たちが彼の持ち味を活かすためのシンプルなプレーができていたとは言い難い。また、湘南さんが見せた三笘対策のように、交代選手まで織り込んだプランが出てきた場合、停滞を抜け出せないケースも想定される。今後も、交代選手の組合せパターンを含めたコンビネーションの応用・発展が引き続き必要となってくるだろう。

〇 8月を突破するために鍵を握る選手たち

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湘南戦までの3連戦におけるタイムシェアの状況を表2で整理してみた。筆者のプレータイムシェアに関する考え方は前回のブログに取りまとめているので、詳しくは下記のリンクを参照いただきたい。

y141.hatenablog.com

中盤のトライアングルを形成する脇坂・大島・田中の3選手は、今回もプレー時間を考慮した起用だったと考えられる。もちろん、今節で先発起用された下田・守田両選手の存在は欠かせない。5選手+憲剛さんで今後の連戦を乗り切って欲しいところであるが、個人的には下田選手に期待したい。加入時から適性を見せていた下田選手であるが、今季取組んでいるワイドに展開する攻撃やセットプレーからの得点など、プレースタイルとの相性も非常に良いと考えている。湘南戦で見せた献身性を含めて「仕事人」の働きに注目して行ければと思う。

また、先述の三笘・小林両選手の復帰で前線のタイムシェアは進んだ。仙台戦の長谷川選手の負傷交代は痛かったが、湘南戦では旗手・三笘両選手でカバーした。負傷状況は明らかになっていないが、いずれにしてもハイレベルな競争が予想できるところだ。こうした中で気になったのは、湘南戦に途中出場した宮代選手である。前の2連戦ではダミアン選手に変わって短時間の出場となったが、この試合ではRWGに入った。

y141.hatenablog.com

2月に開催されたルヴァン杯清水エスパルス戦と同じ位置で起用されていることからも、8月に開催されるグループステージ2試合を意識した起用ということも想定される。3連戦の合間に入る2試合は、1勝すれば突破が確定する。遠距離アウェイも続く中で選手のやり繰りも難しくなることから、彼の活躍が望まれるところだ。

そして、DF陣のプレータイムシェアが大きな課題としてあげられる。ジェジエウ選手の早期復帰は非常に頼もしかったが、谷口・登里・山根の3選手は再開後はほとんど休みなくプレーを続けている。両サイドバックは戦術兵器であり、川崎の攻守を最後尾から支える谷口キャプテン無くしてクオリティ維持は難しいだろう。

そうした意味では、SB・CB双方でプレーできる車屋先生の起用が重要になる。ジェジエウに変わってCBでプレーした3試合は、後方からのフィード、高い位置での潰し等で良いプレーを見せていた。今季のような戦い方で求められるCBのスキルと相性が良いのではないか。悪天候好きを公言する先生としては長い梅雨はもってこいかもしれないが(汗)熱い夏場においても素晴らしいプレーで盛り上げてほしい。

Jリーグの未来を守り抜くために

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有観客試合になって2試合目のホームゲーム。前回の柏戦では新しい観戦スタイルに緊張していたが、この日は少しリラックスして観戦することができた。観客動員をはじめ、多くの事象に制限がかけられているものの、周囲の反応等を含めて、観戦環境があるということが大きな一歩だと思う。

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しかし、我々の立たせている状況は厳しい。試合に喩えれば、前半途中で「Jリーグ1-0コロナ」という状態にすぎない。隙を突いて先制点(有観客)取ったものの、この試合の主導権はコロナが握っている状態だ。下手に攻撃に出れば、一気に攻め込んで同点・逆転を狙ってくるだろう。言うなれば、アトランタ五輪におけるブラジル戦に近い状態だ。

たしかに、ビジター会場で試合を見たい、手拍子や声を出して応援したい、お酒を飲んで楽しく見たいという気持ちは理解できる。自分自身も長くサポーターをしているし、それが普通の光景だったからこそ、あるべき日常に近づけたいという気持ちが早まるのも無理はない。しかし、それは今じゃない。ゴール前にガッチリとブロック(感染対策)を固めて攻撃を凌ぐ時間帯なのではないか。上から目線のように聞こえてしまうが、今スタジアムに足を運ぶ観戦者たちは、プロスポーツの空間を守る立場であるという意識を持ってもらいたいと思う。僕らの世界を、僕らの時代を、守り抜こう。

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