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【遠征記・前編】天皇杯:川崎フロンターレ-高知ユナイテッドSC『本気』

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8月2日、高知県立春野総合運動公園陸上競技場天皇杯(4回戦)を観戦。

1. 脳内稟議 in 水戸

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まず、話の時間を7月まで遡ることとしたい。筆者が勤務する会社は、お盆休みがない代わりに夏期における連続休暇取得が推奨されている。筆者は、事前集計で不人気かつ4回戦=8月2日を起点とする数日間を一旦確保していた。

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7月12日、ケーズデンキスタジアム水戸天皇杯・水戸戦を観戦。水戸さんの猛攻を何とか凌ぎ、昨年(第102回大会)敗退した3回戦を突破することができた。

古いタイプのサポーターなので、足を運びたくても運べない方が多い平日アウェイは、観戦・応援とはいえ、喜びよりもミッションクリアに対する安堵感のほうが先行する。

ホッとしたところで次戦の情報を調べると、高知ユナイテッドSCさん(以下「高知U」という)が勝利。さらに、3回戦に続き、高知県春野総合公園陸上競技場で開催される旨の情報が飛び交っていた。

試合開催まで1ヶ月を切った日程で、飛行機の絡む遠征は、流石に脳内稟議の議案に躊躇した。とはいえ、休暇が調整済という奇跡的な流れを逃す手は無く、翌朝のエクストリーム出社を控えていたにも関わらず、深夜の水戸のホテルで宿で往復飛行機とホテルの予約した。

2. 初来高、初訪問のスタジアム

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水戸戦以降、仕事でトラブルも無く進められたので予定どおり連続休暇を取得。若手ではなくなったからこそ責任と管理能力も伴うが、ある種の達成感もまた良い感覚だと思う。

当日は昼過ぎの便で高知へ向かう。同じ便に登場する川崎サポの数も結構いたので驚くと同時に、短期間で遠征を決断したであろう方々には妙な連帯感を覚えてしまう。

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高知龍馬空港に到着後、明日以降の観光に備えて空港カウンターで「龍馬パスポート」申請ハガキが付属しているパンフレットを入手。(詳細は後編に書きたいと思うが、このタイミングに取得したことが功を奏した)

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空港からバスで高知市内に移動(空港から高知駅までは35分程度)。筆者は宿泊地最寄りのバス停で途中下車し、チェックイン。着替えと荷物整理を行い、競技場への無料送迎バスの発着場所となるJR高知駅南にある「こうち旅ひろば」に徒歩移動。

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こうち旅ひろばは、観光バスの発着ターミナルと観光案内所が集積された高知市内の観光拠点と言える。

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バス発車までの時間を利用し、観光窓口で空港と宿泊地で押印してもらったスタンプで埋めた申請ハガキを提出し、『龍馬パスポート』(青)を交付してもらう。

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送迎バスは観光バスを8台をチャーターし、15時半から混雑時間を見越した台数を割り振り、8回に分けて運行。

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栃木SCさんの宇都宮駅グリーンスタジアム栃木で展開していた方法に近いが、平時から観光バスを貯めることができる場所なので駅前にバスを待機させることができる点もこうした柔軟な運行を実現できたものと考えられる。

バス発着所では高知県サッカー協会の関係者の方々がアテンド。乗車に合わせて帰りの復路バスの時間帯と集合場所を記した予約票も受領する。実際にスタジアムに帰る際、紙案内が大いに役立った。こうした点も含めて、オペレーションとして行き届いた対応だったと観戦を終えて実感する。

高知駅から競技場まではバスで30分程度。運行決定まで自力で向かう手段を模索していた筆者であるが、窓から見える風景を見て難度の高さを理解した。本当、今回の送迎バスの運行には感謝しかない。

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高知県立春野総合運動公園は、かつての西武の春季キャンプ地として名前を覚えていた地名であるが、各種スポーツ大会を開催可能な広大なスペースを有している。

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駐車場から徒歩5分程度で試合会場の陸上競技場に到着。夏休み時期ということもあり、学生・親子連れを中心に多くの人が来場。キッチンカーも10店舗近く出店しており、場外は大いに賑わっていた。

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筆者は観戦記念を兼ねて高知Uグッズを購入。タオマフ、シャツ等と合わせて、川崎サポの担当者さんのダイマを受けて【高知ユナイテッドSC応援ケチャップ】を購入。試食させてもらったが、濃厚な味わいが印象的。遠征後の食卓に投入するのが今から楽しみだ。

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また、高知といえば、よさこいの鳴子。数年前から応援に利用していることを知っていたのでオフィシャル鳴子を購入。(この後、筆者は鳴子の音の威力をスタンドで体感することになる)

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買い物を済ませ、春野総合運動公園陸上競技場に入場。初訪問のスタジアムはテンションが自然と上がる。同競技場は、2層構造のゴル裏のみが芝生席という魔改造の名残を感じさせる構造。帰りのバスで漏れ伝え聞いた地元の人の話によると、2002年の国体(よさこい高知国体)開催の際に改修されたと聞いて納得した。

3.高知の本気、川崎の意地

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離脱者を除いた現時点のベスト布陣で臨んだ川崎であるが、勝敗はどちらに転んでもおかしくない激戦となった。接戦となった理由としては、以下の2点が考えられる。

(1)両チームのアプローチと相性

川崎は、ボールを保持しながら前進⇒人数をかけて崩して得点を奪いにいく狙いが見て取れた。一方、高知Uさんは5バック+マンマーク気味の対人ディフェンスの守備と、ボール奪取後の素早いロングカウンター主体の攻撃を徹底。

また、高知Uさんは、最終ラインの位置を低く設定することで相手の攻撃を待ち構えつつ、数的有利の状態を作れていた。試合序盤はプレースピードの速度差で相手を翻弄した川崎であるが、高知Uイレブンの目が慣れてきた中盤以降は集中した組織的な守備の前に沈黙。空間を攻略する保持型の攻撃と、空間埋める5バック守備の相性の悪さが時間の経過とともに顕在化していったものと考えることができる。

(2)高知Uの「自信」と「一体感」

上記理由だけならば、選手個々の質的優位性を駆使して攻略するということが考えられるが、ピッチ上に立つ高知Uイレブンの集中力と走力は落ちることがなかった。J1クラブに2度勝利した実績に加えて、この日も川崎の攻撃を凌いで反転攻勢のチャンスを作れている状況が自信に繋がっていたのは大きいだろう。各選手ともに臆することなく、攻守にアグレッシブなプレーを継続できていた。

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一番大きかったのは、7,000人以上の観客が駆け付けたスタジアムの雰囲気だろう。『県サッカー史に残る大観衆』(試合翌日の高知新聞の記事より)は高知Uの選手がボールを持つと歓声をあげ、決定機を逸すれば選手と同じように悔しがる。そして、至る所から選手を応援する鳴子の音が響き渡る。観客が試合に没入することで醸成されるスタジアムの「一体感」がそこにはあった。

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正直、スコアレスの状態と、熱量を帯びた会場の雰囲気に筆者も飲まれそうになった。だからこそ、何とか奪った先制点に歓喜し、その1点を守りきるために最後まで拍手と声を止めなかった。

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観客席を含めて、一発勝負ならではの本気と本気が最後までぶつかり続けた90分+αだったと思う。

3.夢の続き

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試合終了後、川崎と高知Uの選手たちが対戦側のゴル裏に挨拶に向かった。高知Uイレブンには惜しみない拍手と、健闘を労う熱いメッセージ・コールが飛び交っていた。今日の勝敗が紙一重だったことを誰もが痛感しているからだと筆者は考える。

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また、高知Uさんの試合を初めて観戦した地元の方々にとっても、感情が揺れ動く試合になったのではないだろうか。そうであるならば、今回の対戦は「本気でJリーグ」を目指すクラブにとっても大きな財産になったと思う。

しかし、試合の勝敗=高知Uさんの未来を決めるわけでは無い。もちろん、試合に勝利した場合、新たなスポンサーが付く可能性はあったかもしれないが、それがJリーグを目指すクラブの抱える根本解決に至るわけではない。今回のような熱狂を再現できるような環境を1つ1つ整備していかなければならないだろう。

 

Jリーグ創設から30年が経過し、リーグ全体の拡張と相まって参入するための条件は厳格化され、全国に50クラブ以上の先行者がいる状況である。そういう意味では、早い者勝ちの側面であったり、後発が不利を被るケースは少なからずあると思う。ホームタウン・エリアの地域格差の部分もスポンサード等の部分では大きく影響する。

では、今後、地域のサッカークラブが「Jリーグを目指す」夢を諦めるべきなのか?といえば、答えは明確に「NO」だ。ただし、その条件をクリアするためには地域を挙げた協力と連携が必要だろう。行政・経済界の理解はもちろん、県内全域に存在と魅力を発信して協力者を集めていくことが今後はマストになってくるだろう。

今回、初めて高知に足を運んだ印象としては地域愛に対する土壌がしっかりあることだ。夢の続きを見れる日、そして再戦できる日を待ち望んでいる。

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