本記事は「川崎ブレイブサンダース Advent Calendar 2020 - Adventar」に第11日目に寄稿するものです。昨日(12月12日)は、ゆーさんの「アウェイ観戦に行こう!|ゆー|note」でした。遠征欲が高まる素敵な記事でした。こちらも是非ご覧ください。
○ はじめに
「こんなはずじゃなかった」という言葉を何度も使い続けているうちに2020年は終わろうとしている。「想定内(外)」が流行語大賞を受賞したのは2005年であることに驚いたが、想定外の事態が1年間を通じて続くとは考えもしなかった。ちなみに、北海道日本ハムファイターズのヒルマン元監督の「シンジラレナ~イ」は2006年の流行語大賞にノミネートされている(どうでもいい情報)
そうした想定外の事象と想定内の仕事の多忙さも相まって、筆者は今季のアリーナ観戦に足を運べていない。が、今年を終える前に書き残しておきたい試合がある。それが1月に観戦した「天皇杯 全日本総合バスケットボール選手権大会」(以下「天皇杯」という)の2試合のことである。
川崎ブレイブサンダースとしての初タイトルを目指した2日間の激闘は、筆者の観戦者生活においても深く胸に刻まれるものであった。今はまだあの熱狂を生み出すためには遠い状況ではあるが、再び戻ることを信じて本記事の筆を進めていきたいと思う。
1月11日:準決勝・宇都宮ブレックス戦
アリーナ席の入場を待つ待機列で思わず「マジか」と声に出そうになった。9日に行われた準々決勝・アルバルク東京戦の逆転勝利に貢献した藤井祐眞選手がインフルエンザの感染し、この日の準決勝に欠場することが明らかになったのである。
前年12月のリーグ戦で負傷した篠山竜青選手が欠く川崎にとって、藤井選手の存在が鍵になると思われただけに厳しい現実を突きつけられた。しかも、相手は宇都宮ブレックスさんである。やり繰りをして戦うには、厳しい相手であることは言うまでもない。
苦境を前にして「覚悟を決める」という気持ちは選手・観戦者も同じだったと思う。そうした強い気持ちが体現された試合だった。タイトな守備を志向する両チームらしくロースコアで進んだ序盤戦だったが、ジョーダン・ヒース選手がプレッシャーのかからない外からのシュートで得点を重ねてリードを作る(前半18得点)。守備では篠山・藤井両選手に代わってポイントガードで起用された辻選手のハードワークも光った。
前半13点リードを奪うことに成功した川崎であるが、限られた戦力での継続したハードワークが見られていただけに、リードと運動量を維持できるかが1つのポイントであった。3Q、宇都宮さんは攻めの姿勢を見せて巻き返しを図ってきたが、大塚選手のスリーポイント+バスカンの4点プレー、青木選手の果敢なアタックで反撃ムードを抑え込むことに成功する。
誰か、ではなく全員が集中力と気迫を押し出したプレーで勝利をつかんだ。
難しい展開を乗り切れたのは、佐藤HCがシーズン当初から追求し続けてきたチームのスタイルと、逆境を乗り切ろうとする強い気持ちだと思う。間違いなく観戦してきた中でのベストゲームだ。
1月12日:決勝・サンロッカーズ渋谷戦
激勝の余韻に浸る暇もなく、翌日の決勝戦を迎えた。対戦相手のサンロッカーズ渋谷さんは、前日の準決勝(滋賀戦)を観戦した時に「これは強い」と唸らされただけに、厳しい試合が予想された。
2019-2020シーズンの渋谷さんは、新体制の色合いが強かったため、開幕前は未知数であったが、「全員バスケ」というシンプルなテーマを維持するために徹底したプレータイムシェアによるチームマネジメントを駆使して、アルバルク東京・千葉ジェッツといった強豪ひしめく東地区で確かな存在感(未開催となったがチャンピオンシップ進出も確実だった)を見せていた。
プレー強度を維持するためにベンチに入った全選手の出場時間を徹底管理することで試合終盤のディフェンス・走力を維持することで強度を保ち、強豪相手に粘り勝ちする試合展開を作る渋谷さんに対して、限られた戦力を全員の気迫で決勝に進出した「気持ち」の川崎が挑むという構図となった。
試合は、前日の激戦による体力の消耗が激しい川崎が、一時的に9点差リードを奪われるなど苦しい展開に陥ったが、同点に持ち込んで折り返すことに成功。接戦の展開となったが、終盤まで強度と集中を保てるかが鍵となった。
後半も、終盤まで1点を争う熱い展開。ワンポゼッションごとの攻防にハラハラとさせられる。リードを許した川崎も最後まで粘ったが、最後は個のクオリティとプレー強度に勝る渋谷さんが勝利を掴み取り、優勝を果たした。
連日のフル稼働で三井寿を彷彿とさせる限界ギリギリの表情とプレーを見せた辻選手に象徴されるように、苦しいチーム事情で迎えたファイナルラウンドでチームは大きく成長できたと思う。
主にサッカーでシルバーコレクターとして立ち振る舞ってきた筆者であるが、この試合ほど「悔いはない」と思う試合はなかった。試合を見る全ての人の心を揺さぶる素晴らしい試合だったと思う。
3.終わりに
プロレス業界をけん引する最大手団体・新日本プロレスが、どん底の状態に瀕していた時から後楽園ホールのバルコニーに「魂込めて!新日本プロレス」という手書きの横断幕が掲出されていたのを覚えている。掲出に対して是非はあったと思うが、気持ちのあるファイトを見せてほしいというファンの思いを体現だったと筆者は考える。
川崎ブレイブサンダースが戦った2日間の激闘も「魂込めて!」という試合だった。選手はもちろん、ブースターも同じであった。宇都宮さんの力強いブレックスコールに臆することなく、川崎コールも力強くSSAのコートに響き渡った。苦境を迎えた渋谷さんと試合でも、最後まで声やハリセンの音で後押しした。優勝という結果を手にすることはできなかったが、ステージに辿り着くまでの過程がファミリーの絆を強くしたと思う。DAZNで目にするカール・ルイスの名言を添えて本記事を締めたいと思う。
It's all about the journey, not the outcome.
「過程が全て、結果が全てじゃないんだ」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
明日(12月14日)は「うにたん #川崎ファイト」さんの『❨仮❩いろんな場所からの景色』です。こちらも是非ご覧ください。