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ボンクラライフ

観戦記:明治安田生命J1リーグ・川崎フロンターレ-セレッソ大阪

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8月19日、等々力陸上競技場セレッソ大阪戦を観戦。


試合は5得点を奪った川崎が勝利。当日の観戦等を通じて感じたことについて、以下のとおり書いていこうと思います。

 

 

(1)セレッソ大阪さんの「継続」と「進化」

丁度、首位と2位の直接対決となった試合。リーグ最多得点の川崎、リーグ最少失点のC大阪さんと構図もまた面白い。筆者は、現地観戦時のイメージを掴むため、直前の柏戦を含めた数試合に目を通すとともに、出場状況等の整理を行うことでチームの戦い方等について理解を深めることとした。‪

C大阪さんは、ロディーナ監督体制の2年目を迎えた。同監督の東京ヴェルディの指揮時も現地を含めて見てきたが、目指す方向性は同じという印象だ。スペイン人監督というと「ポゼッション志向」「攻撃サッカー」みたいな印象を抱きがちであるが、ロディーナ監督はボールを保持を組織守備に活かしたチーム作りを行っていた印象だ。

一方、C大阪さんは、ユン・ジョンファン監督(現千葉)時代に築き上げた堅固な守備戦術でタイトル獲得。同監督就任時、躍進を支えた山村和也・山口蛍・杉本健勇の移籍はあったものの、堅固な実践した守備陣のタレントは残っていた。ロディーナ監督の就任時に大熊編成部長は「堅守とゲームの組む立て」をポイントに挙げていたように、タイトルをクラブにもたらした堅守については継続性を選択したことになる。

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実際、ロディーナ監督とイバンコーチの手でポジショナルプレーの要素を落とし込んだことで、ブロックを組んで跳ね返すだけではなく、自分たちでコントロールしながら守れるチームを作り上げる方向に成功している。具体的な数値を見てみると、チーム別の平均ボール支配率を見ると「51.5%」(8/20時点)を記録しており、同じく保持型を志向するクラブと遜色のない数値である。

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表1 セレッソ大阪  出場選手とプレー時間

高いボール保持率を背景に組織的な守備戦術を実践するC大阪さんであるが、裏返しとしてメンバーの固定化にも繋がっている。もちろん、メンバー固定化は川崎を含めて上位に位置するチーム全般に言えるところであるが、リーグ戦に関してはFWを除く9人の出場時間が突出している。

実際に試合を見てみると、選手間の連携に磨きがかかっていることがわかる。現時点のチームの完成度の高さはリーグ屈指と言える。おそらく今回のようなレギュレーションで無ければ、より優位にリーグ戦を戦えたかもしれない。

(2)「奪い、奪われ、繋ぎ、繋がれ」

試合前の事前整理を踏まえて、試合のカギを握るのは「先制点」「ボールを保持する時間」の2点だと思っていた。とにかくボールの奪い合う両チームの選手たちによるマッチアップがとにかく面白かった。奪い取っても奪い返そうとする、そうした圧力を剥がそうとする駆け引きがピッチ上の至る所で展開された。チャントの無いスタジアムにボールを挟んだバチバチとした球音がハイレベルな攻防を物語っていた。

個のボール奪取力に加えてポジショナルプレーの原則である「位置的優位性」を活かした連携で突破するC大阪さん、大島僚太を筆頭に相手を剥がす「ターン」を駆使する川崎の持ち味がさく裂したことを含めて、現地観戦だからできる見方で楽しめたと思う。

(3)今季の川崎を特徴づける2つの「短さ」

両クラブのサポも「先制点を奪いたい(奪われたくない)」という思いはあったはずであったと思うが、筆者の願いも空しく、前半7分に好調が続いていたブルーノ・メンデス選手に先制点を許してしまった。となると、前節の柏さんと同様の展開に持ち込まれる可能性があった。さらに、試合序盤の得点と言うことでボールを保持しながら追加点を狙う姿勢を見せる等、完全に相手ペースに持ち込まれてしまった。

明らかに相手ペースの展開の中で川崎は脇坂選手のFKで悪い流れを断ち切り、さらに家長選手のPKによる2点で逆転に成功。正直言って出木杉君だ。

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表2-1  川崎フロンターレの得点・失点時間の内訳

逆にC大阪さんとすれば、自分たちが試合を優位に進めていた手応えはあったはず。脈絡もなく得点だけ奪われていた感覚だと思う。私見であるが、こうした「脈絡なく得点を奪える」点が今季の川崎が見せる特徴の1つだと考えている。セットプレー、単騎突破からフィニッシュまで持ち込むカウンター等、得点パターンにバリエーションが生まれたことで試合展開における劣勢を跳ね返すことができる。

表2-1に得失点の時間帯別の内訳をまとめているが、先制を許した試合でもビハインドを追う時間は長くないことがわかる。試合序盤に失点するケースが続いてしまったのは要課題といえるが、修正して追い付き、逆転する力があるのは確かだ。

さらに、攻撃に幅を持たせたことで、川崎は畳みかける攻撃で短時間に複数得点を奪えるようになったのも大きな特徴とも言える。この日の試合においても、三笘選手のゴールから2分後にダミアン選手のゴールが生まれた。反撃の狼煙をあげるための火種を取り上げるようなダメ押し点となった。

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表2-2 川崎が5分以内に複数得点を奪った試合

表2-2に整理しているが、再開後のリーグ戦10試合で3得点以上奪った試合は7試合があるが、5試合において得点から5分以内に追加点を奪っている。攻撃の手綱を緩めることなく、常に次のゴールを狙い続けている。川崎が大量得点を積み上げているのは、ブレない攻撃的な姿勢も影響しているだろう。

(4)今年の川崎は「しょうがない」を諦めない

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リーグ3連覇を目指した昨季は、ゴール前にブロックを固められて点を奪えなかった試合、戦術的優位性を失ってボールを支配された試合など悔しい思いをした。王者として徹底的にマークされ、思い通りに進まない時期を過ごす中で「しょうがない」と思っている自分がいた。「仕方ない、3連覇なんてなかなかできるモノじゃない」と言い聞かせるように。

これに対し、今季の川崎は、堅い守備を突き破る攻撃、相手からボールを奪い取る守備を追求することで「しょうがない」を諦めなかったチームだ。大一番で見せた強さは、こうした強い気持ちを証明する試合となったのではないだろうか。メインスタンドのはしの方で観戦しながら、こんなことを考えていた。

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リーグ10連勝は凄い記録だ。しかし、我々が目指すのは、その先にある次のタイトルである。現在の勝ち点差が逆転可能であることは、追いかけて、抜いて、最終的に優勝を掴んだことを知る我々が一番よく知ることだろう。だからこそ、過酷な連戦の中でも「しょうがない」と諦めることなく、貪欲に勝利を追い求めていく姿勢を持ち続けていきたいと思う。

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