4月10日、神宮で東京六大学野球を観戦。
大学野球のある春が戻ってきたことに感謝。
〇 スタンドの空気感、グラウンド上の緊張感
日陰は肌寒い季節であるが、野球観戦にはベストに近いコンディション。メディアを騒がせるようなスター候補は不在であるが、母校愛を静かに胸に抱いた各大学OBや熱心な野球観戦者が集うスタンドの雰囲気は個人的に好きだ。また、スコアブックやメモを記入する方々の姿を見ると、野球は「記録のスポーツ」であると改めて実感する。
昨年の秋季リーグを優勝した早稲田大学と東京大学が対戦したオープニングゲームは、初回に2点を先制した早大が追加点を積み上げることに成功。
東大は堅実な守備で失点に繋がるようなミスはなかったが、シンプルに投手が早大打線に力負けしてしまったように見えた。
ただし、東大ナインの集中力は途切れることなく堅実なプレーを続けており、点差を感じさせない締まった雰囲気で試合は進んだ。東大に限らず、厳しい状況下で試合が行われていることに対する重みを選手が感じているからなのか、良い緊張感、熱い気持ちが伝わるプレーが多く見られた。
試合終盤、劣勢が続いていた東大の反撃が始まった。7回に早大の先発・徳山選手からタイムリーと四死球で3点を返した後、8回表にタイムリーと押し出しで2点を追加して1点差に迫る。
早大はリリーフ陣が制球に苦しみ、小宮山監督が自らマウンドに向かうなど、冷静さを取り戻そうという動きを見せた。
1点差に迫り、なおも一死満塁のチャンスを作った東大であるが、早大リリーフ陣が踏ん張り、同点とはならず。このまま試合は終了して早大が逃げ切ることに成功。
勝利を挙げた早大はもちろん、東大に対してもスタンドから大きな拍手が送られた。
〇 「偉大なるアマチュア集団」の奮闘もまた六大学野球ならではの魅力
以前、NHKの大越キャスター(東大野球部OB)がオフィシャルガイドブックの特別インタビューにおいて「『東大に負ける』ことこそが、相手にとっての一番の弱点であり、東大の武器である」というコメントを残していた。この日の試合は、大越キャスターの至言を体現するような展開だったと思う。
全国から集ったプロ候補生集団である各大学の野球エリートたちに対し、謙虚な姿勢で対抗する東大ナインの奮闘は、大越キャスターの言葉を借りれば「偉大なるアマチュア集団」の姿そのものであろう。勝敗がある競技だけに、誰しもが勝利を目指していることは間違いないが、そこに至る過程でどう取り組むかが問われるのはプロとは異なる点だ。
しばらく勝利から遠ざかっている東大であるが、扉には手をかけている状況は続いている。その日はそこまで遠くないと感じさせる好ゲームだった。