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【観戦記】明治安田生命J1リーグ:川崎フロンターレ-FC東京『思想と骨格』

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2月18日、等々力陸上競技場明治安田生命J1リーグの開幕戦を観戦。

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何年サポーターを続けていても、開幕戦は胸躍るもの。まさにHeart Beat。

1.煽りVTRと下田さんが伝える「文脈」

開幕直前、オープニングマッチを盛り上げる「煽り映像」をJリーグ公式が公開した。

「煽り映像」(煽りV)とは、フジテレビの社員(後に退社して映像会社を設立)として格闘技興行の制作に携わっていた佐藤大輔氏が『PRIDE』中継の試合前に流したOP映像、選手紹介VTRが由来となっている。

佐藤氏が手がけた煽り映像は、映像・音楽にこだわった映像作品としての魅力も強かったが、リング上で行われる試合の中に彩り、幻想、そして試合に至るまでの物語≒文脈を観戦者に提供した点が大きかったと思う。

立木文彦さんの漢気ナレ、空撮映像、クセの強いキャッチフレーズ…。Jリーグの煽りVは、そんな本家の香りがするつくりで鳥肌立った(高田延彦の形相で)。若干、試合に対する文脈の要素は薄いかもしれないが、川崎・FC東京の試合を見てきた双方のサポーターからすれば、編集された数々の試合映像だけを見るだけでも、様々な感情が湧き上がったのではないだろうか。数々の歓喜、悲哀とともに。

― サッカー伝道師としての実況者

文脈を語るという意味では、この試合の実況を担当した下田恒幸さんの存在を忘れてはならない。ブンデスリーガプレミアリーグ、さらに他競技の実況・ナレも手がける超ポリバレント実況者である下田さんであるが、熱量に帯びた実況には積み上げた知識・メモリーの存在を常に感じる。

帰宅後に鑑賞したDAZN中継。30年目のJリーグ開幕戦、多摩川クラシコを歴史に触れた下田さんの試合前の前口上も大変素晴らしい内容だった。是非見ていただきたい。開幕に対する恍惚と不安も、こうした言葉を聞くと身が引き締まる思いだ。リスペクト。

2.思想と骨格

個人的な考え方だが「勝ち点は裏切らないが、春先の試合内容は何度も裏切る」と考える。極端な例かもしれないが、体験として伝えておきたい。

2006年:開幕戦:今季は得点力で爆発だ!!⇒第3節で完封負け

2012年:開幕戦:今季はウノゼロで勝ち切れる(キリッ)⇒得点力不足

2015年:開幕戦:今季は得点力で爆発だ!!⇒第3節で完封負け

2016年:開幕戦:今季はウノゼロで勝ち切れる(キリッ)⇒第2節で「4-4」

こうした過去の経験を踏まえ、筆者は極力、序盤戦は試合内容でチームを大きく語らないように心がけている(つもりだ)。このため、現時点で観戦者として意識することは、チームの骨格を探り、思想を読み解くことにだと思う。

FC東京・アルベル監督がピッチ上で体現した思想

news.yahoo.co.jp

FC東京さんは、アルベル新監督の思想が色濃く出たサッカーを表現できたと思う。特に後半はボールをしっかり握り、攻撃の中に崩しのエッセンスを垣間見ることができた。精度の部分、川崎の守備陣の奮闘で得点は奪えなかったものの、クラブを愛するサポーターたちに”Esperar”(希望)を与えることができたと思う。

もちろん、アルベル監督が触れているとおり、思想は読み取れたものの、準備してきたものがそこまで表現できたとは言えない。思想を戦術上の仕組みの中に反映させたとき、どこまで機能するかが当面の課題であり、そこで表現されるサッカーがJ1でどこまで優位性を作れるかが新監督の評価に繋がるのではないだろうか。そして、FC東京の新たな思想に触れたことは川崎にとって非常に良い刺激になったと思う。

―「勝利の執着」を体現することで見せた鬼木フロンターレの骨格

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川崎は、勝利という揺るぎない結果は残したものの、試合内容は厳しいものであった。が、前述のとおり、現時点の試合内容は不確かな部分が多い。麻生グラウンドで選手の資質を見極め、ピッチ上をラボとして試合の中で試し続けている姿勢は見て取れる。

www.nikkansports.com

昨季の基準において「強度」を最優先としていたが、今季の沖縄キャンプ中のインタビューでは「速度」(ある意味では「精度」とも言える)の部分を加えたいと考えている。そうしたものを付け加えるため、スクランブルな編成も後押ししたが、プラスアルファではなく、ピッチ上で再度パズルを組み直す作業に入ったことを強く感じる2試合だった。しばらくは、ラボで行われる様々なExperimentを見てきたいと考えている。

一方、鬼木監督の勝利への執着は物凄いことを我々は知っている。目の前の試合に勝利するために最善を尽くし、あの手のこの手の手を尽くす。前述のようなトライを続けても、眼前の試合に勝つという目的は絶対ブレない。理想とするサッカーを実現するのではなく、あらゆる相手に勝利し続けるための挑戦なのである。

たしかにピッチ上で表現できたことは限られていた。しかし、後半の猛攻を耐え、1点をしぶとく守り切った川崎イレブンの姿は、鬼木監督が伝えてきた勝利の執着を体現したものだと思う。鬼木フロンターレの骨格は今季も健在だと感じる90分であった。

1月15日に行われた新体制発表会で鬼木監督は「全ての試合に全力を注いで、タイトルをこだわり続けたい。」*1と述べられた。特に、鬼木フロンターレには「リーグ三連覇」「アジア制覇」という巨大な双璧が待ち構えている。壁を打ち破るための強大な力こそ、今の川崎が求めるものである。そうしたものを目指す挑戦を後押しできればと思う。

君だけのステップ見せつけて  誰も追いつけない圧倒的なスタイル

Negicco『圧倒的なスタイル』より)

そんな風景を秋には見れることを信じて。。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。今季もタメになる記事は書かないと思いますが(汗)分析者ではなく観戦者の視点で見て、聞いて、考えたことを綴っていきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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