ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

観戦記:明治安田生命J1リーグ・川崎フロンターレ-柏レイソル

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7月11日、等々力陸上競技場で柏さんとの試合を観戦。

〇 「観戦者」に戻るということ

観戦者に戻ることとなった試合当日、観戦に対する恍惚と不安が自分にはあった。忘れ物は無いか?家を出るには早すぎるか?等、出発前はとにかく落ち着かなかった。

大げさかもしれないが、観戦から遠ざかり、会社と自宅を行き来する日々を過ごすうちに「観戦者にならなかった世界線」を生きているような感覚に陥っていたからだ。

自分の日常に溶け込んでいた「観戦」が消失したことで、当初は物足りなさを感じていたが、新たな生活様式等と同様、徐々に慣れていく自分もいた。週末は自宅で過ごし、家族揃って食卓を囲むというのも悪くはないと思うようになってきた。生涯を通じたライフワークにしていこうと考えていた趣味だけに、こうした心境の変化を含めて再開までに様々なことを考えていた。

しかし、リモートマッチとなった鹿島戦のテレビ観戦を終えて、自分なりの結論を出した。たしかに、観戦が無くても日々の生活は困らない。だけど、少なくとも現在の自分には、好きなチームを応援できる生活の方が楽しい。リモーター兼サポーターとして再び生きる道を選んだ。良い緊張感を持って、140日ぶりとなるスタジアムへ向かった。

〇 似て非なる風景は、新しい日常

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ユニホームを着用して自宅から自転車で等々力に向かう。到着後、会館とどろきの前にあるピコリーノに挨拶をし、フロンパークを抜けてスタジアムに入る。ココまでの流れは概ね普段どおりだ。

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しかしながら、目に見える風景は似て非なる。三密を避ける呼びかけ、間隔が開いた座席、飛沫対策を前提とした応援スタイル等、スタジアムは「非日常空間」であると同時に「日常の延長線」にあるコネクトした存在であることを実感する。そうした環境下においても我らが「常笑」軍団がスタイルを貫いてくれていることが嬉しかった。

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また、個人の観戦において最も不安に感じていたのは「新しい応援スタイル」を徹底できるのか?ということである。身体に染みついた無意識の反応を自制できるか?は今週末にスタジアムに駆け付けている多くの人が頭によぎったことだと思う。

いざ試合を始まってみると、意外と上手くできていた。よく考えてみると、選手の良いプレーに対して掛け声・手拍子とは違った、ナチュラルに拍手が送るという行動自体が全く新しいものではなかったからだ。

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たしかに、風間監督時代からテクニックを披露する場面に拍手は送られてきたが、現在の鬼木フロンターレ体制ではボール奪取等の守備の場面にも拍手が送られる風景も見られていた。

たしかに、サッカーの応援を代表するチャント、手拍子、歌唱が出来ないかもしれないが、これまでの等々力で見られてきたこと、自分が実践してきたことを継続していけば良いのだ!と思った時に少し気持ちが楽になった。なお、最初の得点シーンで無意識に立ちあがりそうになったところ高速スクワッドの要領で着席していたので油断は禁物である(汗)

〇 打開する「個」、勝ち切るための「組織」

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さて、観戦に至る前置きが長くなってしまったが、試合に関する雑感を述べていきたいと思う。柏さんは、自陣内の低い位置から構える守備を展開。川崎が仕掛ける速攻を防ぎ、大きな得点源にになっていた両ウイングにも人数を配置し突破を防ぐ処置を施すなど「相手の長所を消す」ネルシーニョ監督らしいアプローチと思う。ボール奪ったら素早くオルンガ選手を中心とする前線の3選手に送り込む柏さん、人垣を崩すアプローチでゴールに迫る川崎とジリジリとした展開が続いた。

均衡を破ったのは好調が続く家長選手の2ゴールだ。特に2ゴール目となるシュートは先制から数分後、ノボリ選手のボール奪取を起点に漂泊者らしい中央でのポジション取りが功を奏して、一気にシュートまで持ち込む「個」の力が光った。ネルシーニョ監督が持ち込みたかった展開に持ち込ませなかったのは大きかったと思う。

ダミアン選手のゴールでリードを広げたものの、呉屋選手のゴールで1点返された後は耐える時間もあったが、要所でボールを狩ることで危機を凌ぐことができた。再開後、3試合を通じてチーム全体で跳ね返すことができた。昨季までは、こうした部分を阿部選手のような勝ち方を知る選手の機転や技量に助けられてきたが、今年は皆でやっていかないといけない。そういう意味では、良い集中力で失点を最小限に抑えることができたのは自信にも繋がると思う。

〇 3連戦とタイムシェア

ココからは、リモートマッチ2試合を含めた、私見を述べていきたいと思う。今季のリーグ戦は中2~3日の3連戦をベースとする過密日程が組まれていることを前提にして考えなければいけないと思う。もちろん、本年に限らず、例年こうした期間があることは多くのサポーターは理解していると思うが「カップ戦を挟まないリーグ戦」で「何度も繰り返される」という状況は初めてだ。

川崎は、明確にタイトルを狙うことを掲げた以上、特殊な環境下であっても例年と同じ勝ち点を積み上げなければならない。となると、目の前の試合に勝利することを前提にしながらも、3連戦をトータルとして終えられるのかを考えなければならない。さらに言ってしまえば、直近の3連戦を死力を尽くした結果、次の3連戦でボロボロになってしまったは意味がない。短期・中期・長期の3つのスパンを意識したマネジメントが要求されることから、監督・スタッフおよび強化部の腕の見せ所といったところであろう。

-中盤のプレータイムシェアを考察する

連勝で迎えた川崎。鬼木監督は「勝っているチームは動かさない」を実践するタイプであると思うが、若干の入替を行ってきた。ただし、選手交代に対する流れを含め、ある程度のプレータイムを意識したマネジメントであることは理解できる(試合後の監督会見でも触れられていた)。2選手を入れ替えた中盤について、3連戦のプレータイム(アディショナルタイムを除く)を整理すると以下のとおりとなる。

(選手:鹿島+FC東京+柏=合計)

守田:16分+21分+90分=127分
大島:83分+69分+29分=181分
脇坂:62分+60分+61分=183分
下田:07分+30分+90分=127分
田中:90分90分+00分=180分 

旗手:28分+21分+29分=78分

再開後、2試合連続の途中出場を経て初先発となった守田・下田両選手はフル出場。鹿島・FC東京戦でフル出場した田中碧は今節は出場していない。唯一3試合連続先発出場となった脇坂選手はいずれも60分前後で交代。合計プレータイムが長い大島選手も、FC東京戦→柏戦と時間を減らすることで極端な負担を避けられている。

もちろん、3試合ともリードした状態でプラン通り交代カードを切れていることは影響しているが、連戦に伴う疲労蓄積・怪我による離脱を避けるためことは意識していると考えることができる。特に大島選手の稼働率を年間を通じてキープすることが重要であることは多くの人々が理解しているだけに、交代枠を最大限生かして取組んで欲しいところである。

-プレータイムシェアで躍進したサンロッカーズ渋谷

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また、プレータイムをシェアすることは、大幅な選手変更を行わずしてチームとしてのプレー強度を維持するためにも寄与する。偶然であるが、筆者はプレータイムシェアの優れた事例に遭遇していた。この日対戦した柏さんと同じ、日立製作所のチームを前身とするサンロッカーズ渋谷さんである。

bleaguebydata.hatenablog.jp

昨季(2019-2020)のサンロッカーズ渋谷は、新体制の色合いが強かったため、開幕前は未知数であったが、蓋を開けてみれば、アルバルク東京千葉ジェッツといった強豪ひしめく東地区で確かな存在感(チャンピオンシップの進出も確実)を見せて、天皇杯全日本総合バスケットボール選手権大会)では川崎ブレイブサンダースを破って2度目の優勝を果たした。

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渋谷さんの躍進を支えのは、「全員バスケ」というシンプルなテーマを維持するために徹底したプレータイムシェアによるチームマネジメントである。プレー強度を維持するために選手の出場時間を徹底管理することで試合終盤のディフェンス・走力を維持することで強度を保ち、強豪相手に粘り勝ちする試合が何度もあった。筆者も観戦した天皇杯・決勝は最たるものであろう。

もちろん、試合中に何度も交代が可能なバスケットと片道切符のサッカーにおける競技面に違いはあることは承知であるが、交代枠拡大を活かし、連戦に伴うプレー強度の維持を図りながら、粘り強く戦うためのアプローチとしては有効な手段であると思う。

フロンターレの目指すサッカーは、スプリント数は求められ、プレス強度を担保する走力も求められる。高温多湿の夏場、あるいは感染による唐突な離脱も想定できることからも「全員サッカー」をいかに実現していくか?今後もチームの動きを見ていきたいと思う。

サポーターにとっては「ホームカミングデー」となった試合。似て非なる風景は、我々の新しい日常となる。1試合を噛みしめながら、明日や未来への糧にしていきたい。ありがとうJリーグ、ありがとうフロンターレ。さあ、リスタートだ。

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