ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

夏のアニメ映画3WAY(2):『スカイ・クロラ』


(最近は単館ロードショーが続いたからな、このギャップが凄い(笑)


■ 押井監督は何を伝えたかったのか?(ネタバレ系は白字で書いてます)
日舞台挨拶の回で見てきた。監督の「こけたら辞める」が笑えるようで笑えない。。
本作は就職活動が終わる前後から、原作以外の知識をガッツリと叩き込んで望んだり。
見終わって、ちょっと「予習しすぎてしまったな」と後悔してしまったくらいだった。


まず、率直な感想は、これほど喉に支えることのない押井作品*1は稀に感じた。
イノセンス』や『立喰師』で炸裂した押井ロジックの大方を封印、あくまで語りとして
キルドレ達が戦う世界の構造の説明くらいで、飲み込めない部分はほとんどなかった。


次に、物語としては、2時間という尺の中で起承転結がしっかりとした印象を受けた。
さらに「結」を描いた後に、物語は再び「起」に戻るという流れは『うる星2』を想起させた。
それは「映画とは構図が変わらない」という監督の映画観をそのまま表していたりする。


また「エンタテイメントとして」*2の飛行機の戦闘は非常に完成度が高い。
美しいアイルランドの風景や大空を自在に舞う「散香」*3の姿は見入ってしまう。
『ポニョ』で宮崎監督の徹底的に作画の拘りに対して、CGをマテリアルとして使う*4
CG以外でも『イノセンス』で感じたような、まるでカメラが回っているような視点配置。
こうした作り方を見ると、やはり「押井監督作品だ」という印象がにじみ出てくるかと。


そして、物語におけるロジック構築をさほど要さず、筋を一本と通してきた作品
だからこそ、改めて私は監督が言うところの「若い人に伝えたいことがある」という
メッセージ性を読み取ることに集中していたが、それをパッとは理解はできなかった。
物語はユーイチが再生され、再び水素の前に現れるというシーンで終了している。
最後の出撃前にユーイチが言った『この世界で生き続けろ』が核心となるのか?


それは人生をリセットしたいと考えたり、何かを変えてやろうと事件を起こす
若者達に社会の「変わらない構図」を提示したかったのか、私は感じてしまった。
映画の中で、これほどまでに「圧倒的現実」を伝えられたのは、ある意味では残酷だ。
しかし、だからこそ「生き続けることに価値がある」ということを主張してくれたのか。


あくまで、自分はそう思っただけで、他の人には全然違うことを感じたのかもしれない。
そのように捉えると、本作で非常に意欲的に監督が述べいていた「伝えたかったこと」が
まっすぐ見えづらかったというのは、本作においてマイナスになってるかもしれない。


最後に、1回目ということ*5で面で捉えるのが精一杯だったというのが正直な話。
キャラとか背景といった部分はもっとよく見ていかねばならない、後ろの席だったし。
見やすさはたしかにあるけども、例によって、一緒に見に行く人は選んでしまうなぁ。

*1:これはあくまで劇場作品においてであり、さすがに『うる星やつら』や『機動警察パトレイバー』のテレビシリーズは除外する

*2:シンポジウムで敢えて、こうした前置きで語ったのは作品の本質が戦闘シーンではないからである一方、映画はエンタテイメントなければいけないという考えからだと私は察する

*3:劇中で主人公達が乗るプッシャー・タイプの戦闘機。ちなみに、ティーチャーの乗るスカイリィはアメリカ人の評判が良かったらしく、どうやら男根を想起させるかららしい

*4:氷川竜介氏によれば東映動画で「アニメーター」のキャリアをスタートした宮崎氏と「映像の仕事」として竜の子プロに入社した押井氏の出自の違いが見え隠れすると述べている

*5:自分も『イノセンス』から劇場で足を運ぶようになって、複数回見ることを基本としていることが多く、また舞台挨拶においても暗に何度も見て欲しいというプレッシャーが(笑)