ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:村上春樹『アフターダーク』


アフターダーク (講談社文庫)


■ 物語は…
深夜の『デニーズ』、マリは席で熱心に本を読んでいた。
そんな彼女に近づいてくる男性、彼はマリの席に座り話しかけてくる。
一方、マリの姉・エリは部屋で深い闇の中で眠りについていたのだが…。


■ ハルキらしさと変化
今年になって『海辺のカフカ』も読み、最近の著作も読ませてもらってる。
それで最新の文庫版となる本作を読んでいたが、少し違和感を感じたりもする。


ハルキ作品には欠かせない(と思う)一人称の主人公がいない、これは大きい。
本作はマリを中心に様々な視点が展開されるが、それはそう珍しいことではない。
ただ、主観的な視点(=主人公視点)がない、強いて言うとマリなのだろうがね。


作品の「薄暗さ」はらしいが、それを実際の深夜という空間に置いている。
そして作中で刻々と刻まれる時計、時間空間がメチャメチャになるのが常なのに。
たしかに現代における深夜という時間は、深い闇のはずなのに活動的な枠になってる。
そうした現代の都会の夜を描いた本作は、ある意味では時代の流れが作った作品かも。


従来のハルキ作品の世界観を期待して読むと、ちょっと残念な思いをするかも。
私も作風はそこまで嫌いではないけど、何とも言えない物足りなさは感じますよ。