ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

観戦記:明治安田生命J1リーグ・ジュビロ磐田 - 川崎フロンターレ

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2月25日、エコパスタジアム明治安田生命J1リーグ開幕戦を観戦。


試合は、憲剛さんの全得点に絡む活躍で川崎が公式戦連敗をストップ。試合を通じて感じたことは以下の点です。

◯ 優位性を生かし、勝ち切る

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ゼロックス杯・ACLで3連敗を喫した川崎。非常に厳しい現実を突きつけられたチームでしたが、その経験値が大きな優位性を生むことができたと思います。
もちろん、磐田さんも名波監督が継続性を打ち出してはいますが、初の公式戦ということで、プレースピード、選手間のイメージの共有といった部分において試合勘の差は非常に大きいと考えていました。だからこそ、磐田さんがテンポを掴む前に先制点を奪いたいという思いも強く、憲剛さんの一撃は大きなものになったと思います。
また、後半の磐田さんの攻勢に対して身体を張り、何とか耐えることが出来たのも、実際の公式戦をこなし、苦しい経験をしてきたからだと思います。ゼロックス杯やACLでは、昨年のように粘り強く戦うことが出来なかっただけに、苦しみながらの完封勝利は自信に繋がればと思います。

◯ 2年目の鬼木フロンターレ
この試合のポイントとなったのは、鬼木監督の選手起用とプランニングであったと思います。
鬼木監督は、試合後会見で「相手との兼ね合い」という言葉を何度か使ったように、磐田さんの特徴を踏まえた選手起用で開幕戦に臨んだことを明かしています。
1トップの位置で体を張りながらボールを収めることが出来る知念選手は、相手にとって嫌な存在になったと思います。2点目の起点となった突破のような強さの部分もある選手だけに、他のFW陣にない武器を活かし、飛躍を遂げられる可能性を大いに感じる活躍だったと思います。
また、今季初出場となったエドゥアルド選手も試合序盤は苦戦する部分もありましたが、アダイウトン選手の鋭い突破を見事なカバーで防ぐなど、良いプレーを見せられたと思います。彼もまた、谷口・奈良両選手と異なる武器を持つだけに、その特徴を持ってCBのポジション争いを再燃させてほしいところです。
私見ではありますが、選手層の「厚み」とは何かといえば、名のある選手をベンチに置くほど抱えたり、ローテーションすることではなく、対戦相手や試合中のシチュエーションに応じて組み替えることで、(バスケ風にいえば)様々なケミストリーを与えられることではないかと思います。深読みかもしれませんが、2年目の鬼木フロンターレが目指す、進化の扉はこの部分にあるのかもしれないと考えています。

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以上です。試合運びを含め、90分を通して良い試合だったとは言い切れなかったと思いますが、攻守の切替、球際に強く、最後まで走り切ったイレブンの姿勢は次に繋がるものだと思います。バツを重ねた分、ココからはマルを重ねていければと思います。

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読了:沢木敬介『ハングリーな組織だけが成功を生む』

ハングリーな組織だけが成功を生む

ハングリーな組織だけが成功を生む

 

著者の沢木氏は、ジャパンラグビートップリーグサントリーサンゴリアス監督。同チームOBでもある同氏は、現役引退後に当時の清宮監督(現・ヤマハ発動機ジュビロ監督』の勧めでコーチキャリアをスタートし、サンゴリアスならびに日本代表で指揮を執ったエディー・ジョーンズ(現・イングランド代表HC)をサポート、2015年のラグビーW杯では日本代表の躍進にも貢献。2016年に復帰したサントリーで監督に就任し、本年1月はジャパンラグビートップリーグと日本選手権の連覇を達成しています。

本書では、監督1年目の足跡とともに、指揮官としてのベースとなる部分をどのように学んできたかを振り返っています。本書を読んで印象に残ったのは以下の点です。

〇 定義と個にフォーカスした指導

まず、本書のセールスポイントとも言える、チームビルディングの部分は興味深かったです。サントリーの「やってみなはれ」の企業精神をチームに落とし込み、ハングリーさ、挑戦する姿勢をチームの新たなカルチャー『SUNTRY PRIDE』を定義づけたように、プロセスの積み上げ方が非常に巧みである印象を受けました。

この点は、沢木監督自身が自身の掲げる明確なビジョンがあるのはもちろん、コーチとしての経験を積む中で、考え方・スキルを言語化することの重要性を深く理解したからだということが本書からは読み取れます。

一方、組織におけるビジョンの共有に対して、指導に対しては徹底的に個を見る姿勢を打ち出している点も興味深い内容でした。個々の目標設定やモチベーション等を把握する重要性を理解しているとはいえ、メンバー別のカルテ作成、個別面接の開催頻度等の仕組みづくりは監督経験の短さを全く感じない徹底ぶりであったと思います。

〇 ハードワークと世界基準

また、本書からは、沢木監督がサントリーの社員であり、長く在籍しているチームの経験を活かしながらも、サンゴリアス・日本代表で共に仕事をしてきたエディー・ジョーンズの影響を非常に強く受けていることを印象付ける内容でもありました。

特に、ラグビーの日本化=「ジャパンウェイ」を掲げ、W杯で3勝を挙げる大躍進を果たしたエディーHCの日本代表でトレーニング部門に携わり、コーチ業としてのハードワークを続けてきた経験を取り上げ、エディー氏のプレッシャーと成果が求められた中での学びの大切さを説いています。

例えば、サッカーをはじめ、他のスポーツ競技に目を向けていること、国内リーグ終了後にエディー氏が指揮するイングランド代表に帯同して指導内容を視察したことなどは、指導者としてのハングリーさ、向学心の高さを感じさせます。

現在、サンゴリアスがスローガンの中に世界基準=インターナショナルスタンダードを掲げていることに少し違和感を覚えていたのですが、指揮官自身が最前線に目を向け、学び続けている姿勢の表れであると感じたことで理解が深まりました。

昨年開催された「秩父宮みなとラグビーまつり2017」では、(両チームともに)代表選手を欠く中、スーパーラグビーに所属するワラタズ相手に接戦を繰り広げましたが、今後も選手を送り出すだけに留まらず、来季以降も実践の舞台も増えてくるかもしれないですね。

 

2017-18シーズンのトップリーグを振り返ると、サンゴリアスが大勝した試合というのは少なかったと思います。苦しい展開、ビハインドを跳ね返して勝利した試合も多かったですし、日本選手権の決勝となったパナソニック戦も僅かなリードを守る展開となった厳しい試合でした。

苦境を乗り越え、目標に向かってハングリーなチャレンジをし続ける闘う集団の強さを垣間見てきました。そうしたチームのベースを作り上げ、連覇を達成したサンゴリアスの指揮官の言葉に触れたことは、連覇を目指す川崎フロンターレの新シーズンが始まる前に大きな刺激を受けました。沢木監督の今後の活躍にも期待しております。

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観戦記:ACL・川崎フロンターレ-上海上港

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2月13日、等々力陸上競技場ACLグループステージ初戦を観戦。

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試合は、エウケソン選手が前半に決めたゴールが決勝点となり上海上港が勝利。試合を通じて感じたことは以下の点です。

〇 我慢は続く。だからこそ「ONE」にこだわりたい

大会は異なりますが、公式戦で連敗を喫した川崎。ゼロックス杯の敗戦を踏まえ、球際の強さ、攻守の切替といった守備の意識付は進んでいたと思います。上海上港の精度に助けられ部分はありますが、鋭いカウンターに対して粘り強く対応できていたと思います。

一方、ピッチ上に描こうとする攻撃のイメージは、ハマらない状況が続いていたと思います。正直、コンディション・判断速度がまだ上がらず、相手の守備を崩しきれない状況は、時期的に例年と変化はないと思いますが、相手にリードを許し、人垣をガッチリ並べられてしまうと難度はさらに上がると思います。一発勝負・短期決戦のカップ戦の場合、こうした傾向はより強く働くと思います。

だからこそ、この時期の戦い方としては、リード・イーブンの状況に持ち込むことにより、ラグビーで言うところ「アンストラクチャー」(=相手の守備がセットできてない)の状態から崩す・速攻で仕留めるようにしなければならないと感じました。

そのためには、粘り強く戦うことが求められると思いますし、1つのパス・シュートの質にこだわる必要があると思います。

ゴールを奪うために仕掛けた縦パスが引っかかることは(状況によりますが)悪いことだとは思いませんが、相手の圧に屈して引き起こしたパスミス等は避けていきたいですし、少ない決定機を決めていかねばと強く感じました。

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以上です。連敗はしたものの、焦らず、得点を奪うために必要なことを突き詰めてもらいたいところ。厳しい戦いは続きますが、良い結果を出せるよう、今は我慢強く応援していきたいと思います。

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観戦記:FUJI XEROX SUPER CUP 2018

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2月10日、さいたまスタジアム2〇〇2でFUJI XEROX SUPER CUP 2018(フジゼロックススーパーカップ)を観戦。

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明治安田生命Jリーグの開幕前夜祭と位置づけも定着してきた本大会。スタグルとマスコットを目当てに足を運んでいた筆者でしたが、本年は(素敵なマスコットに癒され、タッパーやカレーパンを抱えながらも)出場クラブの応援のために参加。

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ルヴァン杯天皇杯の2冠王者・セレッソ大阪との試合を通じて感じたことは以下の通りです。

〇 仕上がりの差を見せつけられ、完敗

序盤の両チームの動きを見て「厳しい試合になる」と感じずにはいられない展開でした。各選手のコンディションのバラつきから準備段階の印象は否めない川崎と、2月上旬とは思えない高いプレー強度を見せつけるセレッソさんの差は大きく、自分たちの時間帯に持ち込むまで、相手の攻撃をいかに凌げるか、という意識が傾いていました。

昨季同様、セレッソさんの攻撃はシンプルな組み立てと前線の選手の個の力を駆使した局面の崩しを軸に組立て、守備は球際の強さで圧力をかけながら素早いブロック形成で人垣を作っていくアプローチをピッチ上で見せてきました。

元々、ユン監督が志向するサッカーは、人とボールの流動性に重きを置いた川崎のスタイルと相性の良さに加え、攻守における仕上がりとコンタクトプレーで圧倒されてしまい、主導権を握られてしまったことが非常に痛かったと思いました。

〇 求められる「阿部レージ」

仕上がりの差は受け止めつつも、鬼木監督も述べておりましたが、昨年の粘り強い戦い方を実現した守備の部分の綻びが目立ったことは危機感を抱きました。

前述のとおり、球際の強さでは相手に圧倒されてしまったのに加えて、ボール保持者にプレスをかける素早い攻守の切替、相手の突破を許した場合は相手の勢いを殺すためのカバーリング(監督の言葉を借りれば「吸収」)の意識にも個別差があり、失点を重ねてしまいました。

こうした状況下では、阿部選手の攻守の意識は非常に参考になります。攻守に顔を出すハードワークする部分を体現しており、昨季の序盤戦と同様、阿部基準=阿部レージを目指して仕上げてもらいたいところです。

〇 今そこにある競争原理

一方、交代が5人まで認められる本大会において、途中出場の選手たちが躍動したことは収穫だったと思います。憲剛さんに代わり投入された嘉人さんは悠様との2トップを組みながらも中盤まで落ちてボールを受けるなど攻撃の活性化に尽力し、試合終了前にはゴール前の駆け引きから復帰後初のゴールを決めました。

移動距離もある今季の戦いにおいて大ベテランである憲剛さんをフル稼働させるのは厳しいだけに、今回のような起用は今後も見られるのではないでしょうか。嘉人さんのゴールをアシストした長谷川選手もキレのある動きで終盤は決定機を作る場面を見せるなど、昨年以上のポジション争いが窺える中で、たしかな存在感を見せてくれました。

また、右SBでプロ初出場となった守田選手は大きなインパクトを残したと思います。キャンプの練習試合ではボランチ、あるいはCBの出場が中心でしたが、攻守に良いプレーをみることができました。エウソンを含めて、右SBのポジション争いも激化すると思われます。

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以上です。昨年を超えるチームになる未来、理想とのキャップを抱えた中途半端なチームになる未来、その両方が見えた試合だと思います。

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1つの試合から様々な可能性が見えたということは、内容の濃い試合だったからではないかと。鬼木監督には開幕に向けて仕上げの作業をお願いできればと。

球体の上にある日常が再開することに喜び、敗戦に悔しくも感じ、それを含めて観戦の魅力であると再確認した1日となりました。来週からのACLに向けて、頭と心のネジを締めなおして頑張って応援できればと思います。

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読了:飯尾篤史『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』

黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点

黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点

 

 〇 プロサッカー選手の歴史を「点」で見る

フリーランスで活躍する立場ながらも、数多くの選手・クラブに寄り添った記事を多く世に出してきた飯尾篤史さんの最新刊。 

 南アフリカW杯以降の憲剛さんの葛藤を取り上げた前著『残心』の記憶も新しく、発売を非常に楽しみにしておりました。

選手を題材にした書籍は、自伝的な内容に象徴されるようにキャリアという一本の「線」を手繰り寄せるようにして書かれることが多いと思いますが、本書では、選手としてのキャリアを重ね、過去の自分を振り返るからこそ見えてくるキャリアの「分岐点」にフォーカスを当てています。

当初、自分は「黄金の1年」のタイトルから、各選手が迎えた輝いた年を取り上げる内容ではないかと思ったのですが、目次を見た瞬間に大きな違和感を覚えました。時系列別の構成で最初に登場した「2002年の佐藤寿人」をはじめ、取り上げた選手の記憶が全くなかった年も多くピックアップされていたからです。そして、本書を読み進めていく中で、プロサッカー選手が現在のスタイルに至るまでの葛藤を振り返り、当時の心境等を回想することが肝であるということを理解しました。

Jリーグのクラブを応援するサポならば誰もが名前を知るような一流選手であっても、順風満帆ではなく、キャリアの中で多くの挫折・葛藤を繰り返し、乗り越えることで現在のキャリアを築いてきたことを改めて痛感させられます。

そして、選手自身が経験した出来事はもちろん、苦難を乗り越えるためのアプローチが異なれば、現在と同じキャリアを描くことは無かったかもしれませんし、選手キャリアの幕が下りていたかもしれません。

(特に印象が残った)小笠原選手がイタリアで感じたものを日本で改めて体現する姿勢を打ち出さなかったらば、テセが自身のプレースタイルを見つめなおさなかったら、あるいは川又選手が新潟でプロ1年目にJ初ゴールを決めていたら等、様々な日本サッカーのifが頭に浮かんできました。

本書を読むまでは「今取り上げるべきタイミングなのか」と考えておりましたが、当時の出来事から距離を置きながらも記憶も残っている「今だからこそ話せる」内容も多かったと思います。その意味でも、選手に寄り添い、深掘りされた飯尾さんらしい内容だったと思います。おススメです!

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読了:柳澤健『2011年の棚橋弘至と中邑真輔』

2011年の棚橋弘至と中邑真輔

2011年の棚橋弘至と中邑真輔

 

新日本プロレス、再生の物語

『1973年のアントニオ猪木』等で知られる柳澤健氏の最新刊。自分自身がプロレス会場にも足を運んでいた時期の出来事だけに、候補に2人の名前を挙げた時に「是非読みたい」と思っていた題材でもあります。

総合格闘技ブームと「純プロレス」の時代

21世紀を迎えた日本のマット界では、総合格闘技が盛り上がりを見せました。UWF佐山聡を出発点とする格闘技興業が、K-1・PRIDEの拡大により、大晦日番組の一角として名を連ねるまでに成長。世界各国から日本に集まった格闘家たちが最強の称号をかけて戦いを繰り広げる格闘ロマンは、多くの人を魅了しました。

空前の総合格闘技ブームに対して、プロレス界は異なる魅力を強く打ち出すことに活路を見出しました。印象的だったのは、全日本プロレスに活躍の場を移した武藤敬司。武藤は「プロレスLOVE」を合言葉に強烈な輝きを放ち、老舗団体を舞台にプロレスならではの魅力を発信していきました。

また、三沢光晴が率いるプロレスリング・ノアは、GHCヘビー級王者に君臨した絶対王者小橋建太が数々の激闘を繰り広げ、2年連続で東京ドーム大会を開催するなど、「純プロレス」という言葉とともに、揺れ動くプロレス界の砦としての役割を担ってきました。

この他、華麗なる技の攻防と独特の世界観を構築するドラゴンゲート、エンタテイメント要素を多く取り込んだ「ハッスル」の誕生など、プロレスらしさを追求し、格闘技との差別化を模索した時期であったと考えています。

〇 迷走する新日本プロレス

一方、当時の新日本プロレスは、本書でも取り上げられたように、猪木の度重なる介入により、リング内外に大きな混乱が起こりました。所属選手の格闘技興業への出撃、アルティメットクラッシュ開催、「プロレスとは最強の格闘技である」という過去の商売文句が呪縛と化し、格闘技色の強いプロレスを改めて志向したことで迷走し、前述の武藤をはじめ、所属選手・スタッフが離脱していきました。

苦境の中で、会社が新たなスターとして期待されたのは、棚橋弘至中邑真輔の2人。しかし、試合の勝敗以上にファンの支持が非常に重要なプロレスの世界において「会社に推されているが、ファンの支持が伸びない」印象は抜け出せませんでした。

同時期に猛威を振るっていた高山・鈴木みのるをはじめとする外敵陣営に加えて、ファンと同様に団体に高い忠誠を尽くす永田・天山の第三世代の存在を上回ることができませんでした。この時期のマッチメイクを担当していた上井文彦永田裕志あたりのコメントは興味深かったです。

〇 愛を叫び続けた棚橋、己のスタイルを確立した中邑

本書を進めていく中で、やる気が空回り気味に感じていた棚橋が徐々に変化した背景には、多くの人たちに伝わるように「魅せる」部分をリングの中で上手く表現できるようになったからだと感じました。

批判されていた自身の立場を活かして、ヒールチャンプ・ナルシストというキャラを打ち出すことで観客のボルテージを上げる工夫をしたり、多くの人に伝わるような技を使ったり、正確な表現ではないかもしれませんが、徹底的な顧客目線で取組むことで、顧客満足度を高め、団体と自身の評価に繋げていったのではないかと思います。

苦労の方が多かったと思いますが、試行錯誤をしながら、新しいレスラー像を作り上げた棚橋は、第三世代、三銃士、そして猪木という存在を乗り越えて、団体の顔=エースに成長したというのは大きな偉業だと思います。

一方、アントニオ猪木に振り回され、総合格闘技参戦など、若い時から会社を背負う立場を担わされた中邑真輔は、棚橋を中心に変わりゆく新日マットの中でストロングスタイルの呪縛から抜け出せず苦悩しているようにも見えました。

しかし、メキシコマットの経験を経て彼が辿り着いた「キング・オブ・ストロングスタイル」は、呪縛を解き放ち、全く見たことがないプロレスの姿を提示してくれたと思います。本書が提示した2011年の新日本プロレスにおける中邑の進化は、団体のエースとしてIWGP王者として防衛を続けた棚橋とともに、新日の新たな象徴であり、団体の未来に光をもたらしたのではないかと思います。

〇 2018年の新日本プロレス棚橋弘至

現在、新日本プロレスの最前線には、棚橋・中邑の顔はありません。棚橋との度重なるIWGP王座戦を戦い抜き、若くして業界の顔にまで成長した「レインメーカーオカダ・カズチカロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンを率いる内藤哲也、外国人レスラーのトップに上り詰めたケニー・オメガが牽引しています。

中邑はWWEに活躍の場を移し、築き上げた「キング・オブ・ストロングスタイル」を変えることなくスーパースターの道のりを歩んでいます。簡単ではないかもしれませんが、団体の頂点を目指してほしいところです。

そして、棚橋はIWGPヘビー級戦線から一歩退いたものの、今も休むことなく変わることなくメディア等を通じて世間とプロレスの接点を作るべく奮闘しています。

あまりにも劇的なリング上の変化は、それだけ新日本プロレスが活性化している証拠であり、素晴らしいことだと思います。一方、本書を読み終えて、棚橋がその輪の中から少し外れているのが寂しくも感じました。40代に達し、鍛錬を重ねるレスラーであっても無理がきかないかもしれません。しかしながら、苦境から這い上がり、新たな道を作り上げた棚橋なら、何かを見せてくれるのではないかと期待している自分がいます。

プロレス史に語り継ぎたい再生の物語。そして、その先にある2人の物語を改めて追いかけたくなる熱い本でした。プロレス熱が久々に上がりました。

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観戦記:トップリーグ・第55回 日本ラグビーフットボール選手権大会

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1月13日、秩父宮ラグビー場ラグビー日本選手権を観戦。

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トップリーグ総合順位決定トーナメントを兼ねた本大会。この日は3位決定戦と決勝の2試合が開催されました。

〇 3位決定戦:トヨタ自動車ヴェルブリッツヤマハ発動機ジュビロ

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3位決定戦は、ヤマハ発動機と今季躍進したトヨタ自動車の対戦

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試合は、序盤にシンピンによる一時退出とPGで先制を許したヤマハが前半だけで3トライを奪い逆転。キックとウイングの素早い突破を活かして鮮やかな攻撃は素晴らしかったです。ヤマハは後半早々にトライを奪い、試合を優位に進めていきました。

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 また、ヤマハの武器である強力なスクラムが光る内容。追い上げたいトヨタに対して、スクラムで圧倒し、コラプシングに追い込む。この強さはリーグ随一ですね。

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また、この試合で現役引退する大田尾竜彦選手はフル出場で勝利に貢献。試合後は仲間に担ぎあげられ、胴上げ。この試合に至るまで、パナソニックサントリー相手に連敗して厳しいチーム状況だったと思いますが、最後にナイスゲームを見せられたのではないでしょうか。

〇 決勝:パナソニックワイルドナイツサントリーサンゴリア

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第2試合・決勝は、連覇を狙うサントリーと今季無敗で王座奪還を狙うパナソニックの対戦となりました。

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試合前から接戦になることは想定しましたが、前半早々にサントリーがトライ+ゴールで先制し、パナソニックも2分後にトライを奪う激しい展開。

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しかし、パナソニックは序盤にベリック・バーンズ(SO)が負傷交代、サントリー側の球出しを防いできたデービット・ポーゴック(FL)も脳震盪の疑いで一時退出する等、アクシデントが多発し、非常に厳しい状況に立たされました。

それでも、後半のパナソニックは一方的に攻め続け、逆転となるトライを狙い続ける展開に持ち込みました。サントリーも集中したディフェンスで跳ね返す。

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選手を入れ替えながらではありますが、ハードワークに裏付けされたプレー強度が落ちなかったのが印象的でした。結果的に後半の得点は、パナソニックのPG1本だけだったものの、終盤の勝敗を左右する攻防は非常に見応えのあるモノでした。

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「頑張れ」「負けるな」という声が漏れ聞こえてくるほど、超満員の観客のテンションも非常に高く、秩父宮ラグビー場の雰囲気も非常に良かったです。

 

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結果的にサントリーがリードを死守。苦しい展開を乗り切った連覇。

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昨季の自分たちを超えるのは難しさとは、こういうことなのかもしれないですね。

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一方、パナソニックについても、福岡・山沢といった若手選手たちの存在感が光りました。今季はあと一歩及びませんでしたが、来期以降の成長も強く感じるシーズンでした。

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来るべくW杯に向けて、ラグビー熱を広げていきたいところ。次なる熱戦は参入から3季目を迎えるスーパーラグビー。雄叫びを挙げろ。

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