〇 はじめに:「YOUは何しにいわきへ?」
(清水戦の翌日、常磐線特急・いわき号の乗車に何とか成功するも予想外の事態に・・)
9月17日の朝、アイドルイベントを見に福島県いわき市に向かっていた筆者が、お目当てのユニットの参加キャンセルの情報を水戸駅出発後に受信(泣)
(湯本駅は「フラガールと湯けむりに出逢える街」。駅の中に足湯がある)
想定外の事態に電車内で途方に暮れていたのですが、いわきグリーンフィールドで、いわきFCとベガルタ仙台のチャリティーマッチが開催されることを思い出し、急遽、視察旅行に変更しました。
〇 「夢を形にした」いわきFCパーク
(いわきFCの商業施設複合型クラブハウス・いわきFCパーク)
試合前、いわきFCのクラブハウス・いわきFCパークに足を運びました。いわきFCパークは、日本初の商業施設複合型クラブハウスとして本年7月にオープン。
(いわきFCパークの1階のアンダーアーマー直営店。もちろんユニも購入できる)
クラブが利用する施設とともに、アンダーアーマー直営店をはじめ、英会話教室やトレーニング施設、様々なジャンルのレストラン等の飲食店が連なっております。
(3階「RED&BLUE CAFE」では食事等をしながらフィールド見学もできる)
実際に足を運んでみて、その素晴らしい施設に衝撃を受けました。まるで、欧州のサッカークラブが保有しているようなサッカーファンの夢描いた空間が、日本、いわき市に形となっていることに1人のサッカーファンとして嬉しく思いました。
いわきFCの大倉代表取締役兼総監督は、いわきFCパークの目的と位置づけとして、クラブの知名度向上を一番に挙げておりますが、同時に「多くの人に利用してもらい、収益を得ながら地域交流の場を生み出し、新たな観光資源として地域社会を盛り上げていく」ことにも触れていました。
(ラグジュアリー度も高い「RED&BLUE CAFE」。スクリーンでは先日の天皇杯の試合を放送)
たしかに、私が足を運んだクラブオフィシャルカフェ「RED&BLUE CAFE」は多くの人で賑わい、この他のレストランも昼時には軒並み盛況で店外に列が出来ていました。
(インスタ映え度が半端ないパンケーキ(笑)普通に美味しかったです)
訪れた人たちにとっては、サッカークラブの施設というより、あくまでも買い物や食事をする場として位置付けていたと思います。グランドオープンから2か月程度の時期ではありますので、目新しさが引き寄せている部分はあると思いますが、現時点では大倉氏が述べたとおり地域の交流の場として機能しているのではないかと。
〇 WALK TO THE DREAM チャリティーマッチ:いわきFC‐ベガルタ仙台
(試合会場のいわきグリーンフィールド。ラグビーメインの球技専門競技場)
2326人(主催者発表)が足を運んだ「WALK TO THE DREAM チャリティーマッチ」は、興味深い試合でした。
(雨にもかかわらず、チャリティーマッチには2000人以上の来場者を記録した)
いわきFCイレブンを見ていると、フィジカルコンタクトやスプリントを見ていると、仙台の選手と遜色は無かった印象。関東大学サッカーリーグ出身の大卒選手を中心としたチーム編成を考慮する必要はありますが、クラブが志向するフィジカル面の強化がある程度の上積みとなっているのではないかと。JFLはともかく、彼らが福島県リーグの所属であると考えると公式戦での戦績も納得ではあります。
私見ではありますが、今回の試合の開催には2つの意味合いが含まれていると思いました。1つは、10月開催の全国社会人サッカー選手権大会(全社)に向けた強化試合としての位置づけです。大倉氏も試合前の挨拶でも全社枠経由のJFL飛び級昇格に触れておりましたが、流石に「絶対突破」というニュアンスではありませんでした。しかし、従来のJクラブとの積極的な練習試合の参加に加えて、今回のように公式戦に近い形式で対戦したことは、全社に向けた準備の一環として考えてもよいのではないかと。
(テントでは、グッズ販売に加えていわきFCパークのレストラン店舗が出店)
もう1つは、今後の公式戦開催に向けたリハーサルという側面です。協賛企業を募り、チケットの販売、屋台等の会場設営、駅からスタジアムまでのシャトルバスの運行、ライブ等のスタジアムイベントの開催など、カテゴリー昇格後の公式戦開催を見据えた入念な準備を行ってきた印象を受けました。こうした規模を現在の公式戦で実施するには、過剰投資になりかねないので、仙台さんを招いたビッグマッチを設定して実践するというのは、良い試みだと思いました。
また、こうした開催実績の積み上げは、今年は却下された、天皇杯の上位カテゴリーとの試合開催も視野に入れているのかもしれません。いずれにしても、今後も同様の形式で試合開催を続けていくのではないかと思いました。
〇 おわりに:「ロマンとソロバン2.0」いわきFC
(湯本駅周辺に掲げられたクラブを応援するのぼり)
今回、いわきFCパーク(ハード面)と主催試合(ソフト面)の2つの視点から、いわきFCの取組を見ることができました。
「WALK TO THE DREAM」の名のもと「スポーツを通じていわき市を東北一の都市にする」という壮大なビジョンを掲げる中で、基盤となるファシリティー(施設)の整備に尽力したことは、クラブの本気度を象徴するとともに、ビジョンを体現するかたちになったと思います。
(試合運営のノウハウ蓄積し、見据える先は「スタジアム建設・運営」か?)
大倉氏によれば、いわきFCパークの運営は、今後のスタジアム建設・運営に向けた前哨戦であると位置づけているとのこと。いわきFCパークの運営で得た経験から作り上げるとすれば、地域の人々とクラブを繋ぐための、日本初となる複合施設型の「稼ぐ」スタジアムを目指していくのではないでしょうか。
鹿島アントラーズ社長やJリーグのチェアマンを務めた大東和美さんは、クラブには夢を語ること(ロマン)と、夢を実現するための経営(ソロバン)の双方が大切であるという「ロマンとソロバン」という言葉をよく使っておりました。
いわきFCは、それを一歩進めた「ビジョンを達成するために、いかに稼ぐか」という視点を持っていると思います。いわきFCパークという新たな地域交流のスポットを提供し、収益を得るという現在の取組がその第一歩であり、チャリティーマッチは「スタジアム」運営という次なるステージの入り口として考えられるかもしれません。
スポーツビジネスには大きな伸びしろがあると言われておりますが、ビジネスとして発展・成長していくためには「稼ぐ」側面にも注目する必要はあると考えています。そうした意味でも、いわきFCの挑戦は1つのモデルとして注目していきたいと思います。