ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

『スティーブ・ジョブズ』

■ 「君は優秀だが、クズだ」
少し前ですが、映画『スティーブ・ジョブズ』を見てきました。物語は、アップルコンピューター創設者のジョブズ氏が友人と会社を立ち上げ、大きな成功と挫折の経験を経て、再びアップルに戻るまでの過程を描いています。

<ドラマチックな物事をより劇的に描く>
作品の描き方としては、ジョブズのむき出しの情熱を前面に押し出しており、どちらかといえばドキュメンタリーというよりはドラマチックに表現されていたという印象がしました。若い世代にはその物怖じしない姿勢や野心、上の年代にはモノづくりに対する情熱というのが受けそうですね。

<ゆったりとしたリズム、変身と変心・・>
また、大きな技術革新を生み出す現場を描いているはずなのに、作品としてのスピード感はあんまり感じることなく、スローモーションを使った演出も多いせいか、作品としてはゆったりとしたリズムでした。この点は、ジョブズ氏の人に流されないとマイペースさも反映しているとも考えられるでしょうか。見せ方と言えば、場面ごとでジョブズ氏が大きく身なりや様相が変わってくるのですが、気持ちの意味で「変心」を「変身」で訴えかけていたように感じました。本当、全体的に見せ方の上手さを感じました。

<とことん追い求める姿勢に共感する(クズだけど)>
人づきあいが下手な主人公が、気の許せる友人と会社を立ち上げて、大きな成功と別れの過程を描くという点では数年前に公開された『ソーシャルネットワーク』を思い起こされました。ただし、『ソーシャルネットワーク』はドキュメンタリー風にドラマを描いている点では、本作とはアプローチとしては真逆かもしれませんね。一方、モノづくりのむき出しの情熱という意味では『風立ちぬ』の二郎の顔も浮かんできたり。今回のジョブズもそうなのですが、子供とは言えない年齢の人間がそれでも一途な情熱や夢を追う姿に、最近、とても共感を受けやすいですね。自分の年のせいか、何かこう響いてきます。

<情熱の余韻を残す終わり方>
本作では、復帰後のジョブズ氏の代表作とも言えるiMaciPodは輪郭や開発過程で登場していますが大きく取り上げられていません。見方によっては不完全燃焼にも感じるかもしれません。しかし、私個人では会社に戻った彼が再び見せた情熱を感じることで、逆に見終えて燃えることができました。あまり、そういう人はいないと思いますが「仕事頑張ろう」という気持ちになりました。