ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了…:村上龍『愛と幻想のファシズム』(上)(下)


愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫) 愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)


■ 物語は
80年代後半、主人公・鈴原冬二はカナダでハンティングの旅をしてた。
そんな時に彼は自らを『ゼロ』と名乗る相田という男に出会うことになる。
日本に戻った二人は、弱肉強食の狩猟社会を目指す政治結社「狩猟社」を作るが…。


■ 10年たった今になって読むと…
刊行は87年ということで、まだソビエトも存在していたような世界。
バブルの中を進んでいた頃だが、この作品での90年の日本は大恐慌になっている。
90年代のバブル崩壊をも予想したような、まさに著者の言う「政治経済小説」だ。


また、作風と言えば、著者らしい“セックス&バイオレンス”の雰囲気は醸し出される。
そこを異常ではなく、ごく日常的に描かれている点も彼らしく、私も嫌とは思わなかった。


作中で主人公が目指していたのは、弱者を徹底的に切り捨てる狩猟社会だ。
何となく、ある意味で「勝ち負け」がハッキリしだした現代の社会も近いのか。