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ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

映画が描いたメディアの現場

映画

https://www.instagram.com/p/BLQa93xlSzT/

(現在公開中の『SCOOP!』。ポスターも写真週刊誌風である)

最近はダラダラと『firmarks』に感想を書いておりまして、本ブログでは久々に映画に関する記事を書きます。自分は、邦画・洋画問わず「見たい」映画を見ているのですが、媒体も時代も異なるメディアを題材にした作品が興味深く、面白かったので感想をまとめて紹介できればと思います。 

 

1.『スポットライト 世紀のスクープ』が描いた新聞記者の本質

スポットライト 世紀のスクープ』は、ボストンの地元新聞・ボストングローブのコラム記事『スポットライト』チームの記者たちが、地元のカトリック教会の神父たちによる性的虐待の疑惑を追及していく事実にもとづく物語。

表題『スポットライト』は、本作の記者たちの担当ページの名称でもありますが、マイケル・キートン演じるリーダーが述べていたとおり、本作で追及された事件と記事の関係性こそ、暗闇の中に投じた1つの光=スポットライトのような存在であったことから、まさに本作が取り扱ったテーマそのものを表していると思います。

一方、事件を追う記者たちの姿を通じて、新聞記者という仕事にもスポットライト=注目が集まったと思います。自分が印象的だったのは、徐々に明らかになる事件のスキャンダラスな側面に対して、彼らの仕事ぶりは一層と辛抱強さを求められる地道な作業を必要以上にアクセントを付けず映し続けたことです。

取材時において、カバンから取り出したノートとペンでメモを取る場面、記者たちが街中を行き来するシーンは作中で何度も見られますが、自分の足で稼いで、直接話を聞いて、記事として文章に書き起こす、といった新聞記者の職業の本質を強く感じされられました。

本作の公開に当たり、日本の某大手新聞がコメントを出しておりましたが、昨今の誤報等の問題を鑑みると、偉そうなことを言えるのか、と疑問を呈するところがあります。

難しい局面にも辛抱強く取組んでいくこと、仕事のスピード感の中でも丁寧さ・慎重さを見失わないこと、そして最後の締切を守ること、業務内容は全く違いますが、個人的には、1人の社会人として彼らの仕事ぶりに共感する場面も多々ありました。今年のベスト映画の1つでもあり、仕事で悩んだときに見返したい映画になりました。

 

2.『ニュースの真相』に象徴されるメディア環境の変化

『ニュースの真相』(原題は『TRUTH』)は、ブッシュ前大統領の軍歴詐称疑惑を巡るニュース報道の顛末を描いた実話に基づく作品。ケイト・ブランシェット様、ロバート・レッドフォードの2人が主演の割には公開する劇場数が非常に少なかったのですが、メディアを取り扱った作品としては良作だったかと。 

同作品も『スポットライト』と同様、取材チームが足で稼ぎ、メモを取り、報道が世間に届けられるまでの取材者(製作者)の苦労を軸に描いております。一方、本作の舞台がテレビ報道であり、そうした現場だからこそ起こり得る「時間との戦い」の存在を随所に感じさせつつ、細かいカット等を駆使してテンポ良く、スピード感のある描き方をしていたことが印象に残りました。

本作の見所は、その先にあったニュース報道の「崩壊」を描いた点です。もしかしたら、20世紀までのメディアであれば、物語はニュース番組が放送された時点で終わっていたかもしれません。ただし、本作の舞台は2004年ということで、現在ほどではないにしろ、個人の発信力が強まってきたインターネットという新たな情報メディアの存在が登場します。

ネット発信の指摘がニュース報道を揺るがし、火消しが追いつかないレベルに「炎上」していく姿は強烈なインパクトを感じました。さらに、ケイト・ブランシェット演じる敏腕プロデューサー(本作の原作者にもあたる)が精神的に追い詰められていく様が連動するように映し出されることで撤退戦の過酷さを印象付けられました。

作品の前半部はテレビ放送とともに歴史と信頼を重ねてきた報道の裏側に焦点を当て、後半部は現代におけるメディア環境の変化を描いていたと整理することができると思います。

00年代以降のメディアの最も大きな変化は、情報を発信する力が個人にも付与されたことで、テレビや新聞といった既存メディアからの一方通行ではなくなった=双方向が実現したことだと痛感されられます。ロバート・レッドフォード演じるテレビ局の看板ニュースアンカーは、そうした時代の岐路に立たされてしまったのではないかと感じました。

終盤に語られた「報道とは信頼の証拠」という言葉が非常に重く感じました。報道に限らず、SNSを通じて情報発信することが非常に手軽になった現在だからこそ考えておきたいテーマだと思います。

3.『SCOOP!』から考える週刊誌メディアの現在位置


現在公開中の大根仁監督の最新作『SCOOP!』は、芸能スキャンダル専門のフリーランスのカメラマンと女性新人記者のコンビがスクープネタを求めて夜の東京を駆け抜ける物語。 

本作は、福山雅治さんを主役に据えた「スター映画」や「アウトロー映画」として見ることができれば、二階堂ふみさんによる「ヒロイン映画」として考えることができるし、そんな2人の凸凹コンビの活躍を描いた「バディムービー」とも言えると思います。

一方、写真週刊誌というメディアを取り扱った「ジャンル映画」の側面を醸し出すことで、物語が二階堂さん演じる新人が記者として独り立ちしていく「お仕事映画」へと昇華していく流れは、予告編から想像しえない展開でした。

パパラッチ・雑誌記者のリアリティさを追及した作品にも見えるのですが、実話をベースにしたドキュメンタリーテイストの上記2作品とも異なり、登場人物や物語にはファンタジー要素を強めに押し出しながら、バックグラウンドやディティールの中に現実を差し込んでいくアプローチだったと思います。

架空の雑誌の中に実名のグラビアアイドルが出てきたかと思えば、実際にあった事件を取り上げながら架空の編集会議は進められる。過去の大根監督もそうであったように、本作も虚実混同のバランス配分は非常に良かったと思います。

一方、パンフレットに寄せられた2雑誌(FLASH、FRIDAY)の編集長のコメントに代表されるように、雑誌編集部の描き方はリアリティの成分を強めに出したのではないかと。それだけに、セリフの随所で語られる雑誌メディアの立ち位置については、軽快なセリフとは裏腹に重みを感じました。

作中の編集会議において、昔の事件現場の武勇伝に花が咲いた場面が象徴的なシーンだったと思います。

例えば、映画にもなった評論家・川本三郎氏の回想録『マイ・バック・ページ』の時代のように、雑誌メディアが反体制・反権力体制を打ち出し、新聞メディアにはない切り口からジャーナリズムを展開する時代は過ぎ去り、衝撃的な犯罪事件の最前線に立った時代も終わり、芸能、グラビア、あるいはグルメといった娯楽性を押し出して何とか持ちこたえている。

現実世界においても、文春の破壊力は目を引くものでありますが、実際には、他の活字メディアと同様、緩やかな撤退戦を強いられる雑誌メディアの現状が伝わるよう描写でもありました。

その意味でも、滝藤賢一さんと吉田羊さんが演じる2人の副編集長は、そうした週刊誌の昔も今も知る編集者の役回りとして、スタンスが大きく異なっていたのは面白かったりもしました。メッセージ性のある配役でもありましたし、主演2人とは異なった存在感が良かったです。

専門誌のようなディープさ、ソリッドさに徹するのではなく、まさに本作でいうところの<総合娯楽雑誌>のような多様性を充実度のある仕上がりで楽しく見ることができました。人によって好みは分かれるかもしれませんが、オススメの作品です。

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