ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

『THE iDOLM@STER』ベスト盤発売に思うこと

THE IDOLM@STER BEST ALBUM 〜MASTER OF MASTER〜


◇ 第2部(=SP)へ向けて:今こそアイマスに「物語」が求められる
私見だが、このベスト盤発売をもって「THE iDOLM@STER」は第1部を完結する。
アーケードから始まり、程なくしてピークを迎え、数ある類似企画同様に家庭用
移植という新規要素を加えるという既定路線の展開かと思えば、双方向発信型の
ネット環境下における動画サイトを中心に盛り上がりを見せ、既存ユーザー外の
支持を拡大。高クオリティのモーション、アイドルソング特有のワンフレーズ性が
奇跡的な科学融合を遂げ、3年が経過した今日もアイマスは生きながらえている。


■ 第3期がもつ重要性
自分はこれまでのアイマスの軌跡を4つの時期に分割している。

第1期:05年7月−06年7月(アケ稼働開始−1周年ライブ)
第2期:06年9月−07年4月(TGS2006-オールスターライブ2007)
第3期:07年7月−07年11月(MAシリーズスタート- GREAT PARTY)
第4期:08年1月−08年7月(L4U発売−3周年記念ライブ)


その中で、私は、特に第3シーズンが3つの意味で大きな転換点となったと考えている。
一つはファンの裾野を増やしたこと。それまで、私も経験があるがアイマスに能動的に
参加するためには資金面のハードルが非常に高かったのも、ネックとなっていたりする。


しかし、第3期は比較的手の届くCD企画が展開されたことで、それまで動画サイトで
アイマスに触れることしかできなかったユーザーにも能動的に参加する契機を与えた。
企画側も社長訓示の発言からも察することができるが、期待した流れだと私は考える。


二点目は、アイドル個人の部分に焦点を当てて展開することができたというところ。
もちろんドラマCDなどでも物語は展開されていたが、やはり、サイドストーリーであり
もしくは外伝で成立している意味合いが強いと言える。この本丸で改めて個人の物語が
強化されたことは大きいと考える。アイマスという面の視点から、個人という点の部分
にまで視点を落とすことに繋がったのではないかと考えているからだ。


三点目は、ユーザーとメーカーのパートナー体制がより明確になったことである。
当時、企画の目玉がアイドルのカバー曲募集とCDへの質問募集というユーザー参加型
の体制を打ち出したことだ。第3期の集大成イベントとなった「GREAT PARTY」での
坂上P「変態宣言」をはじめとした発言により、相互扶助の関係性が確認された。


そうした意味で「MASTER ARTIST」は『夢の架け橋』だったのかもしれない。
相互扶助による継続性がL4Uに繋がり、7月のあの3周年記念ライブへと結実した。
3年間の集約だったライブはオールスターにならなかったのは残念ではあるけども、
最大の集客、最高レベルでのパフォーマンスを発揮、一応の成功を収められたと思う。


■ SPシリーズを敢えて「再出発」として考えてみる
そうした流れから、第2部が始まろうとしている。


SPでの環境の変化は、我々にあるレベルでのリセットを促すことになると言える。
箱庭化が著しい昨今のアイドルというジャンルにおいて、仮にゲーム上の企画とはいえ、
アイマスが持つメジャー意識というのは、どこかで忘れ去られた姿勢とも考えている。


正直、PSP進出の話を聞いた時(美希電撃移籍の情報を聞く前)はリスクが高いと
思っていたし、素人目にもマーケティングを含めて、苦戦するのではないかと思ってた。
ただ、一連の流れを追って、苦戦であることには変わらないが、メーカー側の決意もまた
感じることができた。箱庭を捨てさる勇気もまた高みを目指すために必要なのだと。


一定コミュニティに定着してきたアイマスというブランドが「対世間」で勝負できるか、
キャスティングボードを握るのは、ゲームが与える「大きな物語」であり楽曲だと思う。
使うキャラもソフトも違うかもしれない。それでも、目指すべき道は繋がってくる。
目指すべき道を提示するものが「大きな物語」で、リセットされたからこそ求めるべきだ。


さらに、過去のシリーズと異なる環境だからこそ、その物語も変化が生じてくると思う。
ネタ消費の傾向も多いアイマスなだけに敢えて深みを生むために重要性を強調したい。
前述の通り、こうして永らえてきたのが3期で個人の物語を展開したことが大きかったと
私は仮定する以上、SPの長い目で見た成功の可否を握るのは物語だと信じている。


そして、アイマスがユーザーとメーカーが切磋琢磨して作ってきたイズムを継承し、
触れることのなかった非ユーザーに接近し、「大きな物語」に集中させ、展開できるか。
そして、ユーザー間の見えない連携を生み、大きなムーブメントに繋がっていけるかだ。


アイマスはゲームだ。実際のアイドルみたいに電撃結婚があったり、トラブルがある
わけではないから、アイドルファンから見れば「安全で痛い」という批判もあるだろう。
でも、気持を言えば、ユーザーもまたユーザー側からも努力をしているし、メーカー側
にも意欲をもって取り組んでいる。信頼関係があると思う。メーカーの誠意がなければ、
信頼は無くなるし、ユーザーに甘える体制になってしまえば、それは裏切りでしかない。


その構造は虚実を越えて同じであると思う。何よりも私は「アイドルとは何か」というのを
今一度、考えるメソッドとして取り組んでいこうと捉えているから、私をアイマスを続ける。
そして、SPに思いをはせているのだ。第2部、新たな物語の始まりを期待している。


文:Y.Ishii@アイマスで論文書かせてくれ