ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

【観戦記】リーグワン:東京サントリーサンゴリアス-東芝ブレイブルーパス東京

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1月8日、味の素スタジアムでNTTジャパンラグビーリーグワン(以下「リーグワン」とする)を観戦。新リーグという真新しい看板はもちろん、冬場のラグビー観戦欲も高まっていた自分にとって待望の開幕となった。

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筆者が足を運んだカードは、トップリーグ時代から「府中ダービー」として好勝負を繰り広げてきた東京サントリーサンゴリアス(以下「東京SG」という)と東芝ブレイブルーパス東京(以下「東京BL」という)の試合だ。

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味スタは両チームの本拠地ではあるものの、この日は東京SGのホストゲームということでゴールドイエローに染まった。

1.エキサイティング・ショーケース

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オープニングゲームとなった試合は、ネガティブに言えば大味、ポジティブに言えば開幕を祝う派手な展開となった。前半早々に決まった東京SGの先制トライを皮切りに両チームの攻撃機会の大半が得点に繋がる状態だった。

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現役のNZ代表選手でもある東京SGのダミアン・マッケンジーも前半からPGの場面で引っ張りだこ状態。チームの合流時期を踏まえてFB起用であったと思うが、パスにキックの質に超一流の片鱗を垣間見ることができた。前半からダミアンによるPGで得点を重ねた東京SGであるが、リード直後に相手にトライを奪われる場面が2度もあるなど、ディフェンス面の脆さも気になる内容だった。

しかし、後半は東京SGのアタッキングラグビーが機能し、BL東京を圧倒する。数年前に比べるとキック、長いパスを織り交ぜたピッチの横幅を広く使ったワイドな攻撃、スピードのある選手を活かした単騎突破を駆使して相手守備を切り裂いていく。ニュージーランド・オーストラリアといった南半球の強豪国の試合を見ているようでもあった。

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一方、苦戦が予想されたBL東京も相手の隙を逃さずに不規則なバウンドからのボール奪取や、インターセプトを駆使してトライを積み上げる奮闘を見せて前半リードで折り返すことに成功。逆転を許して追いかける展開になった後半も終盤にディフェンスをこじ開けて2トライを奪うなど、接点やモールでの強さが光った。

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試合は、ホストチームの東京SGの勝利。両チームともに最後までアグレッシブにアタッキングを展開したことに加えて、パスワークを駆使した突破、スピードを生かしたロングラン、インターセプトからの独走等、様々なかたちからトライが生まれたことで普段ラグビーを見ない層にも響くような試合になったと思う。

2.トップリーグの遺産、新リーグの進化

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筆者はトップリーグの観戦経験もあるので、新リーグになったものの、試合観戦で劇的な変化があったとは感じなかった。

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たしかに、ホストチーム贔屓の試合演出、スタジアムグルメの充実等、各チーム主催という形式でテコ入れできるようになった。

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しかし、試合観戦を通じて、東京SGのホストゲームではあるけど、対戦相手の東京BLの好プレーには会場全体で拍手が起きたり、両チームに対してスクラム時には手拍子が巻き起こるなど、基本的には会場運営が改善されたトップリーグという印象だ。

ただし、個人的には当面はそれくらいで丁度良いと思っている。新リーグの宣伝効果を活かして、多くの人たちに観戦機会を設けて競技の魅力を伝える場として機能してほしいと考えている。「ラグビーの魅力を発信する」普及・定着の観点で言えば、特定チームのファンを囲い込むよりは、大枠のラグビー観戦者を増やしていくことを第一に考えていくべきだと思う。トップリーグで培ってきた中立的な応援文化というレガシーを活かしつつ、リーグワンの枠組みだから提供できる新しい観戦の魅力を通じてファン獲得に向けて手を尽くしてほしい。

3. 日本企業は楕円球で「世界一」の夢を見るか?

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従来のトップリーグから移行するかたちで新たな船出を迎えたリーグワン。

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開幕直前に参加チームの外国籍選手が薬物所持による逮捕が発覚、国立競技場で開催予定だった開幕戦の中止といった想定外の事態に見舞われるなど、嵐の中での出港となったものの、試合前の玉塚理事長の開幕宣言には日本ラグビーの未来を託す新リーグへの想いが伝えられた。

ラグビー観戦者は知るところだが、リーグワンは、W杯ベスト8という歴史的偉業を達成した日本ラグビーの未来を繋ぐためのプラットフォームとして重要な役割を担うものである。南半球・欧州の強豪で構成されるティア1の列強と互角に渡り合い、次回大会以降でも勝利できる力を身に着けるためにはベースとなる国内リーグの更なるレベルアップが必要とされる。

特に、前大会で大きな貢献を果たした南半球の地域間リーグであるスーパーラグビーからサンウルブズが撤退したこと、コロナ禍で日本代表チームの活動が制限されていたことを踏まえ、開催が来年に迫ったW杯フランス大会に向けてもリーグワンに対する期待は大きいだろう。

また、リーグワンのフォーマットは、運営レベルのプロ化、あるいはマーケティングの視点を組み入れるための仕組みづくりにおいても大きな意味を持つ。以前、日本経済新聞が主催したラグビーイベント『ビジネス視点から日本のラグビーを考える』(2017年8月17日)に足を運んだ際に、当時のトップリーグの課題は「運営がプロになりきれてないこと」としており、現行体制からのプロ化は困難であることを述べていたことを覚えている。

現状、多くの企業がまだ会社内にチーム組織を置いているが、新フォーマットの中で実績を積み上げて条件が揃えば、静岡ブルーレブズ(前・ヤマハ発動機ジュビロ)、東京BLのように独立・分社化が進んでいくだろう。たしかに、JリーグBリーグの劇的な変化は起こっていないが、企業の体力に余裕が無い中で国際競争力を見据えた持続可能な国内リーグの成長を目指すうえでは適切なステップアップとも考える。

www.nikkei.com

そして、リーグ開幕に向けた玉塚理事長のインタビュー等を見ると、その先にある、リーグワンが目指す「世界一」のリーグに対する思いも強く感じる。たしかにラグビー界の経済規模を踏まえれば決して不可能ではない。バブル崩壊後、経済のグローバル化の過程において苦戦を強いられてきた日本企業が世界の頂を目指す夢の架け橋、それがリーグワンなのかもしれない。

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