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ボンクラライフ

観戦休題:サッカー版「プレータイムシェア」に関する考察

今回は、観戦可能になる試合まで少し時間があるので、先日の柏戦の観戦記の中で取り上げた「プレータイムシェア」に関する考察を深掘りしたいと思う。

〇 定義:サッカー版「プレータイムシェア」とは何か?

まず、考察を始める前に、本記事における「プレータイムシェア」の定義を整理したいと思う。元々「タイムシェア」は、バスケットボールにおける出場時間をシェアする選手起用法のことである。もちろん、サッカーはバスケのように試合中の選手交代が自由できないことから、そのまま当てはめることができない。

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一方、再開後のJリーグは、中2~3日の3連戦が繰り返される超過密日程が再編成されたことを踏まえ、選手交代枠の拡大、気候条件を伴わない給水時間を設定。各チームは、選手運用・起用に関しても平時と異なる対応が求められることとなった。

本記事では、今季の特殊な環境下を乗り切るアプローチという視点から、連戦期間中のプレータイムをシェアするマネジメントを「プレータイムシェア」と定義して、以下の考察を取りまとめていきたいと思う。

〇 事例:川崎フロンターレは3連戦をどう戦ったのか?

それでは、筆者がウォッチしている川崎フロンターレの事例にあげて、連戦におけるプレータイムシェアについて考えていきたいと思う。

f:id:y141:20200718120031p:plain上記表では、鹿島戦から柏戦までの3試合の出場選手とプレー時間(アディショナルタイムは除く)を整理した。川崎は鹿島戦・FC東京戦を同じメンバーで臨んだ後、柏戦は3選手の入替を実施し、合計で16選手が出場している。

数字を見てピンとくると思う方もいると思うが、16人というのは「11人+5人」という1試合出場できる最大人数である。表の中央部にまとめているとおり、起用された全選手が途中出場を含む2試合以上に出場している。後述するプレー時間にも関係しているが、起用位置・意図が明確であることに加えて、試合中に配置を変更できる選手が多くいることも影響しているだろう。

-「セクシータイム」は時間制限アリ?

さて、本題となる「プレー時間」の話に移りたいと思う。表の右側には各試合のプレー時間と合計時間をまとめている。柏戦の観戦記にも触れているが、中断前2試合を含む4試合連続でスタメン出場した脇坂・大島・田中のトライアングル3選手のプレー時間は180分前後で推移していることがわかる。

脇坂選手は唯一全試合先発出場したものの、いずれの試合も60分台で交代。田中選手は2試合フル出場後、3試合目は出場機会はなく終えるというように連戦起用と疲労度を見据えた起用が見受けられる。もちろん、柏戦を見ればわかるように、チームと各選手のことを理解している下田・守田両選手の存在が大きい。選手が「いる」だけでなく試合で存在感を「見せる」選手を含めた厚みがあるからこそできる起用手段だと思う。

また、3試合で2ゴール2アシストと圧倒的な存在感を見せた家長選手の起用も注目してみたい。彼もまた3試合連続先発出場しているものの、フル出場はなく合計時間が194分に留まっている。この点は選手交代枠を活かした積極的な対応と思うが、昨季も苦慮したコンディション面を考えての起用であることが考えられる。

家長選手を3試合を見て感じたのは、ウイング起用ということもあって、スプリント回数・走行距離が目に見えて増えている*1家長選手は現在の戦術の質を担保する隠れたドライバーとしての役割を担う唯一無二のプレイヤーであるが、年齢的には大ベテランの領域に入る選手でもある。連戦の中でこうしたコンディションを維持し続けた状態で出場してもらうためには、こうした起用は続くのではないだろうか。

〇 考察: 特殊なシーズンを戦う中で考えられること

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今後を見据えると、距離のあるアウェイ移動も少しずつ増えてくることから、選手起用はより柔軟さが求められる。あくまで私見だが、直近の柏戦を踏まえると、川崎・鬼木監督は2試合は出来るだけ引っ張り、疲労度を考慮して「チョイ変え」をする流れをするといったかたちで、3連戦を「2+1」試合と考えているのではないか。

プレータイムシェアは、コンディション維持はもちろん、疲労蓄積に伴う怪我等による離脱を避ける効果もあると勝手に考えている。上記表でもわかるとおり、川崎に関してはディフェンス陣の負担が非常に大きいが、代替が効かないポジションでもある。

理想としては、タイムシェアの枠組みを最終ラインにも適用することで離脱者を出さずに乗り切れることが理想的だが、ジェジエウ選手のように早期対応で長期離脱を防ぐ水際の対策が現実的なところだろう。また、ミクロな部分で考えると、公式戦においてビハインドを追う展開が生じていないため、こうした場合でのプレー時間配分というのもウォッチしていく時に注目すべき点になると思う。

-スタッフ・強化部の手腕が問われる

川崎に限らず、怪我等でラージグループに綻びが生まれた時、どう乗り切るかはスタッフおよび強化部の大きな課題となる。個人的な考えだが、今季は大きな中断期間が無いため、途中加入の選手をチームに組み込む難しさはあるため、優勝・昇格を狙うチームは自ずと現有戦力の底上げが求められる。この点もまた戦術浸透等を含めた監督の指導力が問われる部分だと思う。

逆にシンプルに考えると、選手層に厚みがあるクラブは、選手交代を含めて戦力の逐次投入が可能であることから、例年以上にレギュレーション上の優位に立てる可能性も考えられる。例えば、ガンバさんが見せた渡邊・パトリックの同時投入のような力業、浦和さんのように高いレベルの選手をどんどんピッチに送り出して逃げ切るようなシチュエーションは対戦相手の大きな脅威となるだろう。

一方、優れたデザインが出来ているチームもコア選手が離脱した時のカバーができない場合、連戦で一気に下降線に追い込まれるケースも想定される。この場合は移籍期間を利用するか、思い切って選手育成に踏み切るかの二択になるが、優勝・昇格争いを狙うチームのみが前者を選択し、選手に問われるのは即戦力である。そうした位置づけを想定すると、今季のシーズン中の移籍市場は限定的だが、インパクトは大きいものが出てきそうな印象を受ける。

以上、プレータイムシェアから様々なことを考えてみた。もちろん、先発・途中出場といった形式や移動距離等の状況によって同じ時間でも疲労度などは明らかに違うことから定量的な分析ではなく、直近3試合の運用にもとづく考察であることからサンプリング数が少ないことも承知しているが、各チームがどのような選手起用・運用をしていくのか?という視点に立つと、チームマネジメント全般に考えを巡らせることが出来ることを示せたのではないかと思う。

「俺たちのJリーグはまだ始まったばかりだ!」と打ち切り漫画風の締め方で本考察を終えたいと思う。最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました。

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*1:3試合で合計33回のスプリントを記録。スプリント回数が平均的なフロンターレ、プレータイムが限られていることを含むと相対的に多く走っていると考えられるだろう。