7月14日、味の素スタジアムにおいて第34回多摩川クラシコを観戦。
(味スタに集った川崎サポと魂)
首位・FC東京を追いかける我々としては負けららない一戦。
試合は激闘の末、川崎が3得点を奪って勝利を手にした。試合観戦等を通して感じたことは、以下のとおり。
WORD: ファジーカスの言葉
(限定公開された映画は盛況に終わった)
先日、映画『OVERTIME-新生・川崎ブレイブサンダース、知られざる物語-』を鑑賞した。
本作は、Bリーグ・川崎ブレイブサンダースの激闘の足跡を辿るドキュメンタリー映画である。昨季のサンダースは優勝候補と言われた中地区2位、さらにPO初戦敗退という非常に厳しい結果に終わった。
輝かしい成績を讃える内容ではなく、苦しいシーズンに焦点を当てた内容だったからこそ焦り・不安を含めた偽らざる感情が伝わってきた。個人的に印象に残ったのは、日本代表のニック・ファジーカスが、チーム状態が上がらない中、選手間ミーティングで「自分たちの強みがわからなくなっている」と述べていたことだ。強いチームは勝ち方を知っており、自分たちはそれを見失っていることを説いたのだ。
ニックの発言は、自分を含めた多くの川崎ブースターが感じていたことだと思う。初年度に見せた勝負どころを抑え、勝ち切る川崎の強さが見えなくなっていたからだ。そして、鑑賞を終えた私は「今のフロンターレにも同じことを言えるのではないか?」とも考えていた。試行錯誤を続けてきた今季だが、タイトルを取るため覚悟を決めて強い姿を取り戻さねば3連覇は難しいと思った。
味スタでの一戦は、連覇を掴んだ鬼木フロンターレのアイデンティティを取り戻した試合になったと思う。ボールを強く握り、相手からボールを取り上げ、ゴールに向けて果敢に進む川崎イレブンの姿には、並々ならぬ熱い思いが感じられた。
また、FC東京さんの「ファストブレイク」を封じることを見据えた戦い方でもあった。圧力に屈しないポゼッション、走り負けないハードワーク、そして強力な前線の個の力に対抗できる対人守備の3つをピッチ上で表現するために鬼木監督が起用した11人はミッションを完遂した。
7/14(日)
— 川崎フロンターレ (@frontale_staff) 2019年7月14日
明治安田生命J1リーグ 第19節
川崎フロンターレ vs FC東京
19:03キックオフ 味の素スタジアム
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FC東京さんに負けず劣らず、この日の川崎は憲剛さんと阿部選手を中心に前線から積極的なプレスを展開。鬼木監督の狙いも、プレスをハメられる2人を起用することで敵陣に押し込むことであり、そこを抜けた中盤でも下田・碧のボランチコンビが連動して相手の突破を防ぐ。碧のボール奪取能力が大いに活かされ、プレスの網目はギュッと細かいものとなった。
ボールを奪われても、すぐに立ち上がって取り返そうとするハードワークがチーム戦術に噛み合わせることで、良いパフォーマンスを発揮することができたと思う。最近の試合では実践できなかった、攻守でボールを握り続ける自分たちのサッカーを色濃く表現できたことは、今後の戦い方に繋げていきたい。
HEART: 中村憲剛の闘志
(試合後、歓声に応える憲剛さん)
ピッチ上の指揮官・憲剛さんが獅子奮迅の活躍が光った。メインスタンドから見た憲剛さんはプロキャリアを歩み始めた若者のようなギラギラした目をして、90分間足を止めずに全力で走り続けていた。
かつて、憲剛さんが気持ちの入ったプレーをすると、何故か試合では空回りするケースが多かったのだが、この試合は彼の闘志がチームのエナジーに直結した。
自分は、そんな憲剛さんの姿を見て胸が熱くなった。怪我したり、試合に出れなくなると年齢的にも引退とか色々と考えてしまった。そんな不安を払拭するかのような輝きが眩しかった。まだまだ戦えることを自らの実力で証明した試合だった。
MEMORY:クラシコの記憶が両チームを熱くする
先制点、さらに後半に追加点を奪ってもFC東京さんの反撃が怖かった。前後の脈絡無く個の力で決めることができるディエゴ・オリベイラ選手・永井選手の存在があったのもそうだが、過去の対戦での記憶が残っているからだ。
味スタに限っても、嘉人さんのメモリアルゴールで先制した後、武藤選手に決められて逆転負けした記憶(2015年)もあれば、2失点後に後半3得点を奪って逆転した記憶(2009年)もある。多摩川クラシコと銘打ったことで、実際に試合で発生した現象を強烈に記憶しており、そうした蓄積が「何が起こるかわからない」という気持ちを強くする。東京サポさんも同じような気持ちで応援していたと思う。
多摩川クラシコに限らずJリーグには色々なローカルダービーがあります。その1つ1つは我々の大きな財産です。「この対決はこんな面白いんだよ」と前のめりになれる送り手がいるのであれば、どんどんチャレンジして、どんどん魅力を伝えて欲しいなと、僭越ながら思います。
— 下田恒幸 (@tsuneyukishimo) 2019年7月14日
たしかに、ローカルダービーとしての歴史は浅いかもしれない。しかし、下田さんが仰ってくださったように、激闘の記憶は着実にサポーターの間に刻まれており、歴史が浅いからこそ、見聞きしたのではなく、自らのその目で見てきた証人たちも多い。激闘の記憶を思いをぶつけ、熱い空間を作っていくことで価値は高められる。試合前の雰囲気、ピッチ上の激しい攻防は今季のJリーグを代表する試合と言える内容だったと思う。こうした名勝負製造機として今後も戦っていければと思う。
(恒例の歓喜の輪。喜びは広がる)
以上です。今季のベストゲームでクラシコを制することができた。しかし、この勝利で我々は生き残ったにすぎない。昨年の広島戦と同じだ。今ある勝ち点差を詰めて抜かなければ頂点は見えないのだから、これまでの引き分けを勝ちに変えていかなければならない。
次なる思いは1つ。一戦必勝!