(リーグ戦では、3試合連続で勝利できていない多摩川クラシコ)
前節で連覇を決めたフロンターレですが、多摩川クラシコは別腹(キッパリ)
(3万7000人の観衆が集まったスタジアムの雰囲気で自然とテンションが上がる)
特に、5月の対戦では攻守に圧倒されて完敗を喫しただけに、自然と気持ちが入ってくる試合になりました。緊張感や高揚感は試合観戦に欠かせない極上のスパイスですね。
試合は、知念選手と長谷川選手のゴールでフロンターレが勝利。観戦を通じて印象に残ったことは以下の通りです。
〇 長谷川トーキョーの「COLOR」
半年ぶりの対戦となったFC東京さん。今回の現地観戦を通じて、長谷川健太監督の目指すサッカーが浸透していることを強く感じました。
ラストピース J2降格から三冠達成を果たしたガンバ大阪の軌跡
- 作者: 下薗昌記
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- メディア: 単行本
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以前、ガンバ大阪のJ2降格から三冠獲得までの軌跡を追った下薗昌記氏の快作『ラストピース』を拝読した時に印象に残っていたのが、ガンバ再建を託されて長谷川監督が就任当初から、
① 正しいポジショニング
② 攻守の素早い切替
③ 球際の強さと粘り
を「やるべきこと」=約束事としてチームに植え付けた点です。
長谷川監督が徹底した約束事は、対戦当時の風間フロンターレに足りないと感じていた部分であり、現在の鬼木監督が非常に重要視している部分でもあります。
本年5月に開催された今季最初の多摩川クラシコでは、永井選手の鬼気迫るスプリントが大きなインパクトを残しましたが、長谷川監督がピッチ上で表現しようとしたものは、ガンバ時代と同様、運動量を駆使した攻守の切替、球際の強さを生命線とするサッカーだったと思います。
-局面ごとに整理された守備
(バランスを崩さず、コンパクトな陣形で対応するFC東京さんのミドルゾーンでの守備)
今回の対戦では、上記の原理原則の浸透に加えて、守備面での整備が進んでいたと思います。FC東京さんは、①川崎のビルドアップを阻害するための前線からのプレッシング、②中盤でコンパクトな陣形を形成して中盤で潰すミドルプレス、③自陣内で素早いブロックを形成する組織的守備、といったように各局面での守備を明確に使い分けて、利用されていました。
対川崎ということで、自陣深くにブロックを形成して待ち構える守備を展開するチームも少なくはありませんが、FC東京さんは自分たちで「ボールを奪う」守備を実践しておりますので、守備から試合の主導権を握ることができます。
実際、序盤のフロンターレは、FC東京さんの守備に苦しめられ、決定機を何度も作られてしまいました。仮に先制点を奪われていれば、攻撃を封鎖する守備を徹底され、非常に厳しい試合になったと思います。
-両クラブの「似て非なる」要素
監督が重要視する部分に共通することから、ピッチ上の攻防も攻守の切替、球際の強さがモノを言う展開となりましたが、両チームの勝敗を分けたのは攻撃面の現況であったと思います。
小林悠・大島僚太といった大黒柱を欠いたフロンターレではありますが、チームの頭脳である憲剛さんは今いるメンバーを操作し、普段着に近いサッカーにアジャストしていきました。
(プロ初先発ながら臆することなくプレーした田中碧選手)
プロ初先発の田中選手をサポートしながら、知念・守田といった若手の特徴を引き出し、決定機を上手く演出することができたと思います。
\“半端ない” #多摩川クラシコ 🔥/
— DAZN ダゾーン (@DAZN_JPN) 2018年11月24日
川崎Fが追加点!!#中村憲剛 のスルーパスを起点に 最後は #長谷川竜也 が頭で押し込む!!
🏆明治安田J1第33節
🆚#FC東京 × #川崎フロンターレ#時代を変えろ#スポーツの新しい本拠地#frontale@frontale_staff pic.twitter.com/XO6IElFg6B
直接的なゴール・アシストはありませんでしたが、川崎のバンディエラの見事な演出力が光った攻撃が見せられたと思います。
一方、FC東京さんは、整備された守備面と比較すると、攻撃では手詰まりを感じる内容だったと思います。ボール奪取からの縦に速い攻撃は怖かったですが、ディエゴ選手を抑え込むことで凌ぐことができました。
長谷川監督のチームは、攻守の切替を支える運動量が生命線となる一方、守備に向けられるエネルギーが非常に多いことから、戦術がソリッドになるほど攻撃面がディエゴ選手の個の力に依存する傾向が強まったのではないかと。
例えば、長谷川ガンバからフロンターレに移籍した阿部選手のように、ハードワークしながらも一発を狙えるアタッカーがいれば大きいと思いますが、東選手・大森選手はタイプが異なります。結果として、ディエゴ選手の出来・不出来がチーム全体に及ぼす影響は少なくなかったと思います。
その意味では、長谷川トーキョーの「ラストピース」を挙げるとすれば、ディエゴ選手とコンビを組んで攻撃面に厚みを加えられる前線の柱になるかもしれません。今の完成度から考えれば、この部分が上手くハマれば、来季も優勝を争う手ごわい相手として立ちはだかる存在であることは間違いありません。
(今季最後のアウェイを勝利で飾ったフロンターレ。最終戦でも勝利を!)
以上です。守備で連覇を手繰り寄せた川崎らしい我慢と粘りのサッカーができたと思います。また、悠様と大島君を欠いた中で先発起用の碧・長谷川・知念が期待に応えたのも嬉しい。みんなで掴んだタイトル、クラシコ勝利を手に等々力に戻る。最後まで歩みを止めることなく有終の美を飾りましょう。