ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:沢木敬介『ハングリーな組織だけが成功を生む』

ハングリーな組織だけが成功を生む

ハングリーな組織だけが成功を生む

 

著者の沢木氏は、ジャパンラグビートップリーグサントリーサンゴリアス監督。同チームOBでもある同氏は、現役引退後に当時の清宮監督(現・ヤマハ発動機ジュビロ監督』の勧めでコーチキャリアをスタートし、サンゴリアスならびに日本代表で指揮を執ったエディー・ジョーンズ(現・イングランド代表HC)をサポート、2015年のラグビーW杯では日本代表の躍進にも貢献。2016年に復帰したサントリーで監督に就任し、本年1月はジャパンラグビートップリーグと日本選手権の連覇を達成しています。

本書では、監督1年目の足跡とともに、指揮官としてのベースとなる部分をどのように学んできたかを振り返っています。本書を読んで印象に残ったのは以下の点です。

〇 定義と個にフォーカスした指導

まず、本書のセールスポイントとも言える、チームビルディングの部分は興味深かったです。サントリーの「やってみなはれ」の企業精神をチームに落とし込み、ハングリーさ、挑戦する姿勢をチームの新たなカルチャー『SUNTRY PRIDE』を定義づけたように、プロセスの積み上げ方が非常に巧みである印象を受けました。

この点は、沢木監督自身が自身の掲げる明確なビジョンがあるのはもちろん、コーチとしての経験を積む中で、考え方・スキルを言語化することの重要性を深く理解したからだということが本書からは読み取れます。

一方、組織におけるビジョンの共有に対して、指導に対しては徹底的に個を見る姿勢を打ち出している点も興味深い内容でした。個々の目標設定やモチベーション等を把握する重要性を理解しているとはいえ、メンバー別のカルテ作成、個別面接の開催頻度等の仕組みづくりは監督経験の短さを全く感じない徹底ぶりであったと思います。

〇 ハードワークと世界基準

また、本書からは、沢木監督がサントリーの社員であり、長く在籍しているチームの経験を活かしながらも、サンゴリアス・日本代表で共に仕事をしてきたエディー・ジョーンズの影響を非常に強く受けていることを印象付ける内容でもありました。

特に、ラグビーの日本化=「ジャパンウェイ」を掲げ、W杯で3勝を挙げる大躍進を果たしたエディーHCの日本代表でトレーニング部門に携わり、コーチ業としてのハードワークを続けてきた経験を取り上げ、エディー氏のプレッシャーと成果が求められた中での学びの大切さを説いています。

例えば、サッカーをはじめ、他のスポーツ競技に目を向けていること、国内リーグ終了後にエディー氏が指揮するイングランド代表に帯同して指導内容を視察したことなどは、指導者としてのハングリーさ、向学心の高さを感じさせます。

現在、サンゴリアスがスローガンの中に世界基準=インターナショナルスタンダードを掲げていることに少し違和感を覚えていたのですが、指揮官自身が最前線に目を向け、学び続けている姿勢の表れであると感じたことで理解が深まりました。

昨年開催された「秩父宮みなとラグビーまつり2017」では、(両チームともに)代表選手を欠く中、スーパーラグビーに所属するワラタズ相手に接戦を繰り広げましたが、今後も選手を送り出すだけに留まらず、来季以降も実践の舞台も増えてくるかもしれないですね。

 

2017-18シーズンのトップリーグを振り返ると、サンゴリアスが大勝した試合というのは少なかったと思います。苦しい展開、ビハインドを跳ね返して勝利した試合も多かったですし、日本選手権の決勝となったパナソニック戦も僅かなリードを守る展開となった厳しい試合でした。

苦境を乗り越え、目標に向かってハングリーなチャレンジをし続ける闘う集団の強さを垣間見てきました。そうしたチームのベースを作り上げ、連覇を達成したサンゴリアスの指揮官の言葉に触れたことは、連覇を目指す川崎フロンターレの新シーズンが始まる前に大きな刺激を受けました。沢木監督の今後の活躍にも期待しております。

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