ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:飯尾篤史『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』

黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点

黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点

 

 〇 プロサッカー選手の歴史を「点」で見る

フリーランスで活躍する立場ながらも、数多くの選手・クラブに寄り添った記事を多く世に出してきた飯尾篤史さんの最新刊。 

 南アフリカW杯以降の憲剛さんの葛藤を取り上げた前著『残心』の記憶も新しく、発売を非常に楽しみにしておりました。

選手を題材にした書籍は、自伝的な内容に象徴されるようにキャリアという一本の「線」を手繰り寄せるようにして書かれることが多いと思いますが、本書では、選手としてのキャリアを重ね、過去の自分を振り返るからこそ見えてくるキャリアの「分岐点」にフォーカスを当てています。

当初、自分は「黄金の1年」のタイトルから、各選手が迎えた輝いた年を取り上げる内容ではないかと思ったのですが、目次を見た瞬間に大きな違和感を覚えました。時系列別の構成で最初に登場した「2002年の佐藤寿人」をはじめ、取り上げた選手の記憶が全くなかった年も多くピックアップされていたからです。そして、本書を読み進めていく中で、プロサッカー選手が現在のスタイルに至るまでの葛藤を振り返り、当時の心境等を回想することが肝であるということを理解しました。

Jリーグのクラブを応援するサポならば誰もが名前を知るような一流選手であっても、順風満帆ではなく、キャリアの中で多くの挫折・葛藤を繰り返し、乗り越えることで現在のキャリアを築いてきたことを改めて痛感させられます。

そして、選手自身が経験した出来事はもちろん、苦難を乗り越えるためのアプローチが異なれば、現在と同じキャリアを描くことは無かったかもしれませんし、選手キャリアの幕が下りていたかもしれません。

(特に印象が残った)小笠原選手がイタリアで感じたものを日本で改めて体現する姿勢を打ち出さなかったらば、テセが自身のプレースタイルを見つめなおさなかったら、あるいは川又選手が新潟でプロ1年目にJ初ゴールを決めていたら等、様々な日本サッカーのifが頭に浮かんできました。

本書を読むまでは「今取り上げるべきタイミングなのか」と考えておりましたが、当時の出来事から距離を置きながらも記憶も残っている「今だからこそ話せる」内容も多かったと思います。その意味でも、選手に寄り添い、深掘りされた飯尾さんらしい内容だったと思います。おススメです!

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