ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:ダニエル・ビニージャ『モンチ・メソッド ゼロから目的を見つける能力』

モンチ・メソッド ゼロから目的を見つける能力

モンチ・メソッド ゼロから目的を見つける能力

 

〇 スポーツダイレクターの仕事から見た欧州サッカー

本書では、セビージャのスポーツダイレクター職(SD)を長年務め、今季からローマのSDに就任した「モンチ」ことラモン・ロドリゲス・ベルデホ氏の仕事歴を取扱っています。

本書において特筆すべきことは、タイトルにもある通り、資金力が潤沢であるとは言えないセビージャというクラブが選手を「安く買って高く売る」サイクルと、EL3連覇を含めた「欧州制覇」を両立させるためのメソッドをゼロから作り上げたことです。

クラブの躍進を支えるメソッドの背景には(本書に登場する証言者が述べるように)モンチ氏の選手を見出すセンス=勘に加えて、独自のルート開拓やビッグデータ等のテクノロジーの存在があることは印象的です。

若手監督もそうであるように主観的な経験値・センスと客観的なデータを提供するテクノロジーの融合がサッカー界全体の大きな課題になるのではないかと。

月刊フットボリスタ 2017年10月号

月刊フットボリスタ 2017年10月号

 

『月刊フットボリスタ』の移籍特集でも取り上げられていましたが、今夏のネイマール移籍に代表されるように投資グループや国家レベルで莫大な資金を投下するようになり、資本主義の理論が一層強く動くようになりました。

スペイン国内に君臨する2強の存在は大きかったと思いますが、移籍金バブルが続く移籍市場の中でサバイブする術を確立させた先見性が今日のセビージャの地位に押し上げたのだと感じました。

また、投資対象=選手を活かすためのケアに気を配り続ける記載は興味深い内容でした。鹿島アントラーズの鈴木満さんも著書『血を繋げる』において選手獲得後の対応が強化部門の役割であると述べておりましたが、グローバル人材を迎え入れる欧州のクラブだと一層重要な視点ではないかと。

血を繋げる。 勝利の本質を知る、アントラーズの真髄

血を繋げる。 勝利の本質を知る、アントラーズの真髄

 

その意味では、清武もまさにモンチ氏が獲得した選手。本書の著者が日本語版の加筆も含めて2度触れていたが、彼は獲得後に就任したサンパリオ監督との相性や選手層ではなく家族の問題で適応のプロセスが無駄になったということが書かれていました。

日本でも当時も今もあまり深く触れられてない話ではあるが、本書に触れてセビージャの清武を長く見れなかったのを少し残念に感じました。

 

欧州の最前線で活躍する人物を通じて、クラブの強化に携わるスポーツダイレクターに関する知見を深めるとともに、資本の論理が強く働く欧州サッカーの風景を垣間見ることができました。クラブの経営等に関心のある方にはオススメの1冊です。

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