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ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了・高橋安幸『根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男』

野球
根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男

根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男

 

〇 西武黄金時代、ダイエーホークスの礎を作った男

本書は「球界の寝業師」として知られる故・根本陸夫氏の足跡を20人のインタビュー取材から読み解いております。それなりに文献を読んできた私も、初めて目にするような驚きのエピソードも多数出てくるので証言集として普通に面白いのですが、プロ野球の歴史を1人の人物から紐解く文献としても非常に読み応えのある内容だと思います。 

おそらく、80-90年代のプロ野球に造詣のあるファンであれば「根本陸夫」の名前を知る方も多いと思います。さらに、同氏について、3球団で務めた根本「監督」の印象より、球団管理部長に代表される「裏方」としての印象が強いと思います。

しかし、特に印象に残った点ではありますが、彼が監督として「育成のための采配」に徹し、勝敗とは別のベクトルに重心を置いて指揮を取っていたことが触れられています。他球団の実力ある選手を主軸に置くことで血の入れ替えを行い、猛烈な練習量でチームを鍛え、有望株の若手選手たちを積極起用して1人前に育てる。指揮官としての手腕は、複数の選手から迷采配ぶりを指摘されるほどですが、現場レベルでも強いチームの土台作りを進めることを第一にしていたのだと考えると、また異なる評価が出来ると思いました。

また、証言者として登場した元選手の多くが彼のことを「オヤジさん」と呼んでいるのは気になりました。根本氏の発言や仕事ぶりを通じて、先を読む力、人心掌握術を垣間見ることができるのですが、彼の厳しさと気配りの両面を併せ持った接し方が、特に高校からプロの世界に足を踏み入れた工藤・大久保のような選手たちにとって親のような存在であったことがよくわかります。

 根本氏が亡くなって17年が経過するが、例えば、中日の森繁和新監督やソフトバンク工藤公康監督のような現役監督に代表されるように、現在進行形で「根本一家」は日本の野球界の様々な現場で活躍しています。

さらに言えば、西武ライオンズダイエーホークス(現・ソフトバンクホークス)の2球団こそが、根本氏が残した大きな遺産であると思われる。もちろん本書では触れられないような闇の部分は、少なからずあると思いますが、今日の日本のプロ野球に対する影響度は計りし得ないものであると考えられます。

もちろん、本書の証言者も触れておりましたが、現在は球団組織も新人獲得ルールも厳格になりましたので、根本氏のような役職も働き方も出来ないと思います。しかし、強い球団を作るために力を入れた編成、情報収集力、裏方を含めた人材育成に対する考え方は普遍だと思います。GMという言葉が浸透する前の時代に最もその名に相応しい仕事をしていた根本氏のような存在が、多くの球団では求められているのかもしれません。

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