(開演直後からノリが良かった両国。この辺は「わかってる」ファンの多さを実感)
昨日は、両国国技館でWWEの日本公演を8年ぶりに観戦。ここ数年はプロレス現場から離れていた筆者でありますが、今年はテレビ等も含めて視聴機会が増えていることもあり、プロレスを見る目も取り戻している段階なので、非常に良いタイミングとなりました。
(観客を大いに沸かせるWWEタッグ王者のニュー・デイ)
公演は、非常に充実していて見応えのある内容でした。WWEと言うとレッスルマニアに代表される派手な演出とアングルの盛り上がりに注目が集まりますが、本公演のように純粋な1興行として見るとメリハリの効いた試合構成と、それを下支えするユニバースたちのレスリングの質の高さを改めて実感しました。
レスラーの技術の良し悪しは、グラウンドやドロップキック等の基礎的な動きの中で感じ取ることができますが、一見、暴走気味なファイトを行っているようなレスラーでさえもヘッドロックやロープワークで確かな技術が見受けられましたので、安心して見られたところがあります。
(レジェンドの血筋を引いたユニバース同士の対戦となった女子王座戦)
また、今回の来日メンバーに名を連ねる若きユニバースは、レジェンドのご子息・娘が非常に多かったのですが、特に個人的にツボだったのがWWE女子王座選手権でした。プロレス界の名門・ハート一族の3世代目にあたるナタリアと16度の世界王者を獲得したリック・フレアーの娘・シャーロットの対戦は、短い時間ながらもクラシカルなスタイルを下地とした質の高いレスリングを見ることができました。父親にはないダイナミックな動きから繰り出される技の数々とブリッジの美しさを含め、シャーロットのポテンシャルの高さからも近年のDIVAの充実度を伺いしれたところです。
(日本凱旋となったAJスタイルズ組。大歓声を受ける。)
そして、今回の公演で強く印象に残ったのは、中邑真輔やAJスタイルズをはじめとする元新日本プロレス勢に対する注目度の高さでした。大げさに聞こえるかもしれませんが、中邑やBULLET CLUBのシャツを着る人が多く見ていて、両国駅を出た時点で彼らの存在感の大きさが伝わってきましたが、実際の試合はもっと凄かったです。
(大アウェイ状態で試合をすることになったジョン・シナ)
ヒール側に近い立ち位置のはずのAJスタイルズ率いる元BULLET勢の登場した6人タッグでは、対戦相手のフェイス側にいるジョン・シナ組よりも歓声を受ける逆転現象が発生、賛否あるところだと思いますが、異様な空間でした。おそらく、シナ自身も最近では感じえなかっただろう超アウェイの試合だったと思いますが、この辺でもキッチリと役割をこなすのは流石トップ・オブ・トップといったところ。
(新日でも見ることができない紙テープが舞う両国国技館)
さらに、現地では絶対無理な中邑とケビン・オーエンのシングルマッチに至っては新日本プロレスの試合を見ているような雰囲気でした。中邑自身が技名の変更以外に全くと言っていいほど変わりのない戦い方だったことも大きかったと思いますが、オーエン自身もレスリングキャリアが豊富な大変素晴らしいレスラーと言うこともあって非常に見応えのある攻防でした。
(オーエンに劇勝の中邑。観客との「イヤァオ」。)
以上です。日本公演とはいえWWEの興行自体は本場のノリに合わせて一体感のある雰囲気を作っていく印象が強かったのですが、そういう意味では今年の公演は本当に異様な空間でした。BULLET CLUBと中邑が躍動して会場を大いに湧かせたことで、まるで新日本プロレスがWWEを侵略しにきたような感覚に陥りました。本来は(良い意味で)異なる価値観にあるはずの日本とアメリカのマット界の接触は『2016年の日米レスリングサミット』だったのかもしれません。そういう意味でも、非常に印象に残る大会でした。