〇 メンタルとはスキルである
著者の荒木さんは、エディ・ジョーンズHCに請われて2012年から2015年までラグビー日本代表のメンタルコーチを務めていた方です。
また、五郎丸選手の代名詞となったキック時の「ルーティン」作りに携わったことでも知られております。本書は、自身とラグビー日本代表でのエピソードを交えながら、スキルとしてのメンタルについて語っております。
「メンタル」という言葉自体は広く浸透してきたと思いますが、どうしても「気持ち」と解釈されることが少なくないせいか、生まれつきの資質や育ってきた環境で作られると考えられると思います。これに対して、本書の前提となる考え方は「メンタルは鍛えることができる」、その意味で「メンタルはスキルである」ということです。
本書の中でも説明されておりますが、エディ・ジョーンズHCは、チーム作りと個々のパフォーマンスの向上のため、マインドセット(考え方の基本的な枠組み)を変化させることを彼女に求めていたとのこと。過去W杯では1勝のみ、勝利の文化が無い日本代表チームが世界の強国に立ち向かうためのメンタルを鍛えるため、コーチ・選手たちと協力して取組んできたことが紹介されております。プレイ内容を考えるとラグビー選手は、特にメンタルが強いものと考えがちですが、ジャパンの選手たちが見えないところで悩んで、苦しんでW杯のピッチに立ったということがわかります。
また、本書の中で何回か取り上げられるように、こうしたメンタルの鍛錬は日々の生活を暮らす自分たちにも生かせる部分もあると思いました。自分の中でのマインドセットを改善する意識を持ったり、後半で取り上げた目標設定や受け止め方の変化等は使えるなと感じたものもありました。荒木さんも話してるとおり、簡単に鍛えられるものではありませんが、取組んでいきたいと素直に思いました。
アスリートとメンタルの関係性は重要であることは、一応の運動部経験やスポーツファンとしても感じていることですが、そのメカニズムや強化のアプローチの一面を知ることが出来たのは良い勉強になりました。