ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了・アサイ『木根さんの1人でキネマ』

 

木根さんの1人でキネマ 1 (ジェッツコミックス)

木根さんの1人でキネマ 1 (ジェッツコミックス)

 

 〇 映画を観るって事はね「鑑賞」でなく「体験」なのよ‼(by木根さん)

ヤングアニマルWebコミックヤングアニマルDensi』で連載中の作品。年末に偶然読んだエピソードが様々な意味で刺さったので単行本で購読。映画好きとしてはニヤニヤさせられる内容で非常に面白かったです。

物語は、1人で観る映画鑑賞が趣味の主人公・木根さん(30ン歳独身・OL)が、映画愛をほどはしらせながらも、価値を共有できる友達がいない悲哀に明け暮れる日々を描いております。近年、独身の行動パターンとして認知・定着した「おひとり様」女性を描いた作品でもあり、映画を取扱ったジャンル漫画としても楽しめる内容でした。

特に、本書にも収録されている木根さんの『スター・ウォーズ』話が最高で、完全に同じ道筋を辿っていた人間なので、読みながら頷いてばかりいました(大量に買ったエピソード1のおまけ付きの某清涼飲料水とか)。

〇 「木根さん」から考える文化の普及とファン育成

本書を読んでいて気になったのは、主人公・木根さん(おそらく著者の方も)と映画との付き合い方です。というのも、設定年齢も近いこともあって自分も似通った経緯で映画館に足を運ぶようになったからです。

本書の各エピソードでも、度々触れられますが、木根さんは映画好きの家族やマスターに恵まれたわけでもありません。そんな木根さんを映画好きに覚醒させたのは、テレビの存在です。

今回発売された1巻で取り扱われた作品を並べてみると『ターミネーター』、『スター・ウォーズ』、『インディ・ジョーンズ』および『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と80年代の名作が多く並んでおります。木根さんは、こうした作品をテレビの映画番組を入口にしていたことを説明しております。

おそらく、当方に限らず、現在の30~40代で上記の作品を見たことのある方は同じような鑑賞環境で観た方も多くいると思いますし、こうしたテレビの映画鑑賞を景気にして、木根さんのように映画好きへと覚醒した人は少なくないと思われます(当方を含む)。

実際の状況は把握しておりませんが、宣伝のアプローチやら、吹替がアレだとか、様々な事象を踏まえてテンプレが如く「(若者の)映画離れ」という結論に結び付けて語られることがあります。個人的には、その手の議論の中身は「どうでもええわ」と考えています。そんな議論よりも重要なことは、入口の部分だと思っているからです。映画を観るという体験に繋げる大切な役割を果たしたのが、ゴールデンタイムに放送していた映画番組であり、幾度となく放送された上記の80年代の名作・大作たちだと私は考えます。そうした環境と作品の大切さを本書は改めて教えてくれたのではないかと。

 

木根さんのアレコレを見ながら「映画ファンって面倒くさいな~」と思いつつも「うん、そうだよね」とか「わかる」と同意する自分がいるので、結論としては自分もダークサイドもとい木根サイドの人間なのだと感じました(笑)そんな内容なので、映画ファンもとい“映画を観るマシーン”の方々にはおススメの作品です。 

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