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ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了・能田達規『マネーフットボール』

 

マネーフットボール 1 (芳文社コミックス)

マネーフットボール 1 (芳文社コミックス)

 

〇 「LOVE or MONEY」

「1週間をユカイに生きる」が合言葉の『週刊漫画TIMES』(芳文社)で連載中のサッカー漫画の単行本。2か月連続の刊行で現在2巻まで発売中です。

本作は2部リーグ(N2)の愛媛イーカッスルに在籍する主人公・梶本(カジ)が、レンタル元の浦和レッドスターへの復帰、そして「2億3000万円」(カジ曰く「サラリーマン平均生涯賃金」とのこと)を稼ぐために奮闘する物語。また、個人の物語と並行して、同時に資金力に乏しい地方クラブである愛媛が「データサッカー革命」を掲げる新人監督・大月雅史のもと、N1昇格に向けて戦い続けるクラブのストーリーも展開されています。

 

〇 著者・能田達規先生が描くピッチ外の視点

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著者の能田達規先生は、『ORANGE』をはじめとする数々のサッカー漫画を描くだけではなく、愛媛FC(マスコットデザイン)やJ’sGOAL(イラスト)等の日本サッカー界に関わりの深い方です(写真は能田先生デザインの愛媛県サッカー協会のマスコット・ひめ太くん)。そんな能田先生が描くサッカー漫画の特徴の1つは、選手・監督以外の登場人物からピッチ外の視点を取り入れることだと思います。

Orange 第13巻 (少年チャンピオン・コミックス)

Orange 第13巻 (少年チャンピオン・コミックス)

 

 能田先生の代表作の1つでもある『ORANGE』は、愛媛を本拠地とする2部クラブ・南予オレンジの奮闘を描く作品だが、主人公のムサシをはじめとする選手以外にも、貧乏クラブを支える女子高生オーナー兼社長の盆野美果、クラブのサポーター団体・オレン人の人々の存在等、ピッチ外の視点を大いに取り入れ、地方クラブの奮闘を描いています。

 また、舞台を少年誌から青年誌に移して連載していた『オーレ!』は、サッカー版『県庁の星』とも言える設定で、自治体から派遣された主人公の職員が、プロサッカークラブの現場に携わることで経営の難しさ、プロサッカー選手が置かれた環境等について理解を深めるという内容です。サッカー専用スタジアムの魅力、プロリーグへの昇格という1つのピークを迎えた後のクラブの苦境、そしてプロリーグ残留をかけたアマチュアチーム上位との入れ替え戦等、現在も頻繁に話題になるようなトピックに早くから注目しており、預言書のような1冊です(笑)

サッカーの憂鬱 ?裏方イレブン?
 

 現在『マネーフットボール』を連載している「週刊漫画TIMES」では『サッカーの憂鬱』というオムニバス形式のシリーズを掲載していました。同シリーズでは、普段は日の目の当たることが少ないグラウンドキーパー、ドクター、サッカー記者といった、サッカーの現場に携わる方々にスポットを当てています。

このように、長年、ピッチ外から見たサッカーの現場を描いてきた能田先生が、満を持して連載をはじめたのが本作となります。

 

〇 サッカー版『マネーボール』という見方

私見ですが、本作のタイトル『マネーフットボール』には、2つの意味が込められていると考えております。1つは、前述のとおり、プロサッカー選手であるカジの成長とともに描かれる、プロサッカークラブを巡る様々なお金の話という意味での「マネーフットボール」です。

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

 

もう1つは、マイケル・ルイスのノンフィクション作品『マネーボール』のサッカー版という位置づけです。近年、映画化された本作は、資金力の乏しいオークランド・アスレチックスのGMであるビリー・ビーンが、独自の統計手法にもとづく強化策でチーム作りを行い、見事や躍進を遂げていった作品です。本作の主人公・カジが所属する愛媛イーカッスルを率いる大月監督は『データサッカー革命』を掲げており、まさに科学の力で資金面での不公平に打ち克とうとしています。

Jリーグでは、今シーズン、トラッキングデータ測定と開示を実施しており、観戦者レベルでも目に触れるデータが増えただけに、非常にタイムリーな話題だと思います。

一方、現実世界では、例えば、過去にヴィッセル神戸が2012年シーズンにデータを徹底的に駆使した補強策を実践したものの、道半ばといったところではあります。とはいえ、少なからず、テクノロジーがサッカーにもたらす影響は小さくないわけですし、来るべき近未来のサッカーのあり方として、見ていくことができるかもしれません。能田先生の作品は、時代を先取りするような預言書的な側面があるだけに、数年後にリアルマネーフットボールが日本サッカーを席巻すること期待しております(笑)

 

とにかく、最近読んだサッカー漫画では、おススメの作品の1つです。できる限り、長く連載を続けていただきたいと思っております。サッカーファンの皆さま、買い支えていきましょう!

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