少し前に見てきたので今更ながら感想を。当初は『バケモノの子』と「東映まんがまつり」風にまとめて書こうと思ったのですが、文字数が増えてしまったので1本化。少しお子さんには難しい映画かもですが、親子で見る映画としてはおススメ。安心安定のピクサー設計でございます。
〇 あらすじ
本作の主要キャラは、少女・ライリーの中にある5つの感情(喜び・悲しみ・怒り・ムカつき・ビビり)。5つの感情は、脳内にある司令部から彼女の行動や考えをコントロールし、彼女を良い方向に導こうと日々奮闘している。物語は、父親の仕事の都合で生まれ育ったミネソタを離れ、サンフランシスコに引っ越したライリーの新生活をサポートするはずが、カナシミの行動が契機で司令部は混乱、感情たちをリードしていたヨロコビとカナシミは司令部を放り出され、脳内を大冒険するというもの。
〇 ピクサー映画とは「自分たちの物語」である
跳ね上がりのアニヲタを卒業し、ここ数年、ピクサー作品に腰を据えてみるようになったのですが、素直でシナリオで共感できる作品が多かったことに気付き、損をしていた気分になりました。本作も、個人的には非常にスイングした作品でした。
ピクサー作品は、ディズニー作品に比べて、大人の方に刺さる内容が多いと思います。スイングする理由は何かと考えると、物語の中に「自分」の存在を投影できるからだと思います。作品に感動するというより、自分自身が人生の中で経験したこと、感じたことの共通点を見出し、共感することが多いからだと思います。「自分たちの物語」が映像化されている感覚に陥ることが、多々あります。
丁度、本編が始まる前に「この作品は、あなたの物語です」とピート・ドクター監督(過去に『モンスターズ・インク』等の監督を務めています)からのコメントが流れます(その後、謎のドリカムタイムに突入)。特に自分も引っ越し、転校なんかを経験していたので、ライリーの気持ちも何となくわかりましたので、見終わった後、その言葉の意味を噛みしめました。
〇 ビジュアル化された脳内世界
同作品は、監督のお子さんの実体験を基に製作されたとのこと。本作を進めるに当たって学術的な知識を取り入れて作成されたということで非常にロジックがしっかりとした作品だと思いましたが、それをビジュアル化した脳内世界のデザインが非常に良かったです。
感情のキャラ設定はもちろん、思い出から作られる「思い出ボール」や個性が具現化された「島」の存在は、説明すると複雑難解なモノだと思いますが、噛み砕いて教えてくれました。映画を見ながら「なるほど」と頷きながら見ていた方も多かったのではないかと(当方含む)。
〇 悲しみの重要性
映画『インサイドヘッド』鑑賞。テーマ設定、物語回し、着地点の置き方が非常に良かった。ピクサーらしく深い話だった。学術的に裏打ちされたモノをベースにした人の感情や脳の構造を、わかりやすくも鮮やかに視覚化したデザインも素晴らしかった。 pic.twitter.com/ZgIEhGMVPO
— グラッデン (@yoshi141) 2015, 7月 23
本作の最大の鍵となるのは、キャッチコピーにもあるように「悲しみ」の重要性です。監督自身も本作製作する中で理解を深めたと仰っていますが、大変説得力のある解であったと思います。その答えは、本作を見ていただきたいと思いますが、前述の思い出ボールの立ち位置を含め、段階を踏んだかたちで丁寧な物語回しであったと思います。
以上です。ピクサーの色がしっかりと出ていたので個人的にも満足ですし、イイ曲だと思いますがドリカムタイムはいらぬ失点でしたね。あと、吹替版の起用は相変わらず素晴らしく、物語の鍵を握る重要キャラを任された佐藤二朗さんは最高でした。吹替版もおススメです。