ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』

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〇 はじめに:乃木坂46の「物語性」

 「歴史絵巻のようだ」

 今年2月、乃木坂46のバースデーライブを見に行った後、素直にそう思いました。3周年記念ライブは「2月の西武ドーム」という会場設定だけでもサバイバル感を駆り立てられましたが、終わってみれば、7時間半を超える長時間公演を見届けていました。

ライブでは、グループの発表した全楽曲をデビューシングル『ぐるぐるガーデン』から発売順に披露(アルバム収録の新曲は終盤に挟む込む形で披露)。1つ1つの楽曲を聞き、彼女たちの姿を目にする度、楽曲の中にグループとしての歴史や物語が宿されていることを実感しました。全曲を披露する意味は、誕生日を迎えたグループが紡いできた物語が欠如させないためのものではないか、とも感じました。

だから、乃木坂46のドキュメンタリー映画が作られることを聞いた時は「本当に必要なものなのか?」と疑問を抱きました。彼女たちがアイドルグループの一員として過ごす刹那の瞬間を、映画という形でパッケージングすること自体には否定的ではない、過去に公開されたAKB48のドキュメンタリー映画も素晴らしい内容でした。

しかし、乃木坂には楽曲を発表することで現在進行形の物語を紡いでいる、敢えてドキュメンタリーを作らなくても良いのではないかと考えていました。それが、映画を見る前の私の考えでした。

〇 居場所としてのアイドル

 映画『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』は、2012年にデビューした乃木坂46の結成から現在に至るまでを描いたドキュメンタリー作品です。グループの主要メンバーである生駒里奈西野七瀬白石麻衣、橋本奈々美、生田絵梨花の5人を中心に、何物でもなかった少女たちがアイドルグループとしてデビューし、現在まで駆け抜けていく過程を数々の映像資料と、彼女たちのインタビューを中心に構成されています。

映画の構成は大きく2つに分かれていると思います。彼女たちがオーディション前からデビューまでの彼女たちを掘り下げるパート、デビュー後に現在に至るまでの出来事を振り返るパートです。

彼女たち5人は、出身や年齢はもちろん、乃木坂46に入る動機・経緯も全く異っています。1つの共通項を挙げるとすれば、自分がアイドルになるイメージを全く持たないままオーディションに合格したことです。しかしながら、結果的に様々な意味で行き場の無かった彼女たちにとって、アイドルが居場所になっていたことが明らかになっていきます。

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学校に行きたくない、東京で生活をしていきたい、上手く表現できない自分を出したい等、全く別の方向に視線も意識も向いている子たちが1つのグループに揃う。「AKB48の公式ライバルグループ」という確固たるテーマ性を掲げて結成されたことは、彼女たちには重要ではなかったと思います。アイドルであることが夢や希望の出発点というより、ある種の居場所として機能していたことに気付かされました。

〇 母親の視点

また、本編のナレーションは、彼女たちの母親の視点で語られます。正直、親子の関係を持ち込むことは見る前までは野暮であると感じていましたが、居場所としてのアイドルを考えていく上では大切な対比・視点であると思いました。

異なる居場所に身を置く娘たちのことを心配すると同時に、自分の手から離れていく彼女たちの存在を寂しく思うことが語られています。それが、娘の精神的な独立や成長であったり、子離れできない心境であったり、あるいは今後も見守っていく視線であったり。。

〇 「居場所」という視点から考える各メンバーの存在

もちろん、本編では5名以外にも数多くのメンバーが登場します。彼女たちのエピソードの多くもまた居場所という視点から語られると思いました。

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乃木坂のために通い慣れた学校に別れを告げた桜井さん、休業後にグループに加入した真夏さん、乃木坂に留まることを選択して女優としての道を切り開きつつある若月さん、同じく乃木坂に残ることを選択してグループで頑張る決意をした松村さん、さらに乃木坂以外に居場所を見つけつつある伊藤さんや斎藤さんの2人、そして最後に登場したあるメンバーの選択。

乃木坂という居場所に身を置くことで、どのような選択をしたのか、飛び出して何を見出そうとしているのか。中核となる5名の見方とは異なるアプローチで、居場所としての乃木坂の存在を問いかけているように思えました。

〇 終わりに:「DOCUMENTARY OF 乃木坂46」とは写真アルバムである

本作を通じて、彼女たちが紡いできた物語のはじまり、今まで語られなかった陰の側面が語られてきた。それと同時に、過去に多くを語られてこなかった個々のメンバーにフォーカスしてきたアプローチは新鮮でもあり、新しい発見を与えてくれたと思う。本作を通じて個々のメンバーはもちろん、グループを見る目も良い意味で変わってきたと思う。

彼女たちが世に出てきた1つ1つの楽曲やMVがファンにとって記録と記憶に残る写真のような存在であるならば、本作は写真を集めて1つのモノにするアルバムのような存在ではないだろうか。ファンが共有してきた物語を補完する意味でも一定の役割を果たしていたと思います。

最後に、西武ドームのDVDは出来るだけは速めにリリースしてください(切実)

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