ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

『百日紅 -Miss HOKUSAI-』

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昨日、TOHOシネマズ日本橋原恵一監督の『百日紅 -Miss HOKUSAI-』を鑑賞。予告編を劇場で拝見してから、公開日を何度も確認するくらい楽しみにしていた映画なのですが、想像以上に自分の大好物の内容でした(笑)見終わった後、心の中でガッツポーズしてしまいました。主なあらすじと、映画を見て感じたことは以下のとおりです。

〇 予告編

〇 「自慢したい江戸がここにある」(「都市」という視点)

本作の舞台は、年号で言うと「文化」(19世紀初頭)の江戸。国の行き先を大きく左右する黒船来航はまだまだ先、天下泰平の世を謳歌する世界屈指の大都市の活気が伝わってくる感覚が何よりも刺激的でした。冒頭、画面いっぱいに両国橋と墨田川を中心とする江戸の町並みが映された時は唸りました。アニメという表現手法だからこそ描ける江戸という「空間」に対する描写は、撮影所等を利用した時代劇・映画撮影では難しいと思われます。空間として描かれるからこそ、本作で取り上げられる街のもつ様々な顔、街に暮らす人々の生活の風景等が並行して描かれることで、江戸時代の歳時記としても見ることもできた。

<筆者が『天保異聞 妖奇士』で期待したもの>

余談となりますが、筆者が「アニメという表現を上手く活用して、江戸という都市の活気や人々の暮らしを見てみたい」という願望は、TBS系で放送された『天保異聞 妖奇士』で感じていたりする。同作品は「天保」時代(『百日紅』の少し先の時代)の江戸を舞台に妖夷と戦う妖奇士の活躍を描いたものだが、独特の世界観と併せて、天保時代の江戸の町並みや風俗描写を丁寧に描いていたのが印象的であった(むしろ、しっかりと描いたことで作品全体の地味さが際立った気もしなくもない)。この水準で日常描写を中心とした作品が見たいと思っていただけに、『百日紅』は夢がかなったかたちとなる。

 〇 アニメーションの相性について

また、本作は、浮世絵を描く葛飾北斎の娘を中心に絵にまつわる様々なエピソード、または怪談のような逸話が登場することから、相性としてもアニメーション向きの物語であると感じました。どうしても実写だと北斎・お栄が実際に筆をとる作業シーン等が気になりますし、妖怪のような下手に実写+CGより絵で演技させた方が良いタイプではないかと。個人的には、本作の見所の一つともいえる、北斎の有名な代表作の絵を表現するシーンのように作画のタッチに変化を加えて、観客を引き込んでいくアプローチなんかは、アニメーション作品としての「強み」を生かされた部分だと思います。とにかく、街の細かな人物描写をはじめ、本作に携われたスタッフの方々の力を処々に感じさせられます。

〇 「色」と「音」について

少し細かな点で気になったのは「色」と「音楽」の2点です。前者はパッと見て派手な色もあれば、上品で落ち着いた色もあるなど、色の多様性を楽しめていました。特に、江戸時代らしく着物の色は気になります。登場人物の立ち位置であったり、場面ごとの心情を色で表現しているような色分けもされていたのではないか、と思ったりもして、個人的に見直したいポイントでもあります。


後者の「音楽」については、江戸時代=和的なサウンドに拘らず、ロックサウンドをはじめ、色と同様にバリエーションに富んでいたのが印象に残りました。もしかしたら、この辺が一番冒険しているかもしれませんね。そして、こうした作中のサウンドを踏まえると、エンディングで流れる椎名林檎の主題歌もスッと入ってきます。

 

以上です。日本橋で見たこともあるのだと思いますが、アニメーション映画とは思えないくらい、観客の年齢層がかなり高めでした。全般として、ライトなアニメファンには地味な作品に感じかもしれませんが、時代劇をはじめ、江戸時代を描く作品というのは上の年齢層に需要が高く、根強い人気がありますので、狙いどころかも知れませんね。是非とも時代劇専門チャンネルの視聴層には積極的に発信してほしいところ(笑)もちろん、当方もおススメ映画です。

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