ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:阿部潤 『忘却のサチコ』

 

忘却のサチコ 1 (ビッグコミックス)

忘却のサチコ 1 (ビッグコミックス)

 

■ 「忘れる」ために食う

「通」というほどではないが、食マンは結構読むジャンルである。先日、最近のお気に入りだった『スピリッツ』連載の『忘却のサチコ』の単行本が発売したので購入。本作は、結婚式の会場で新郎(俊吾さん)に逃げられるという衝撃的な経験をした主人公・幸子が、新郎の存在と記憶を“忘却”させる美食を求めるというストーリー。美食を求めて奮闘する幸子の姿をコメディーテイストで描いており、アプローチも含めて面白い作品です。 

女性視点では違った評価になるかもしれないが、サチコさんは愛らしいヒロインである。不器用ヒロインモードの綾瀬はるかを彷彿とさせるサチコさんは、真面目な性格で仕事をキッチリこなすバリバリのキャリアウーマンなのに、様々な意味での不器用さを兼ね揃えているギャップが素晴らしい(笑)

また、作中では「美食」と称されているが、どちらかと言えば「サバの味噌煮」や「カツ丼」といった身近なモノや「トルコライス」や「わんこそば」といったご当地グルメと言ったところに目的とのギャップはないので愛着が持てる(ただし、サチコさんの求道心はバカまじめすぎて笑える)。そして、美食を口にした時に昇天したサチコさん女子度ゼロの表情(半目+涎付)が最高(個人の感想です)。

 ■ 料理・グルメ漫画のトレンドは知識より感覚?

食を題材としたマンガは、結構絶えずに話題をさらっていて、あまり向いてないと思われてきたドラマ化なんかも結構続いています。また、漫画原作ではないものの、朝の連続テレビ小説ごちそうさん』も食を題材にしており、数年前に池脇千鶴さん主演の『ほんまもん』もありましたが、より「食べる」側に立った作品だったという印象です。

全ての作品に目を通しているわけではありませんが、私見ながら、料理・グルメ漫画は「食べる」+「感覚」型がトレンドになりつつあるのかも。(かつての)『美味しんぼ』に代表される知識系のアプローチよりも、どちらかと言えば、「食べる人」視点の感性を押し出すスタイルが今後も重宝されるかもしれませんね。『孤独のグルメ』がドラマで秘かなブームになったのも影響していると思うのですが、食べる=癒し・楽しみというのが共感を呼びやすいと思いますし、追体験する意味で『孤独のグルメ』で取り上げたお店に足を運ぶという現象も起こっているようですしね。