ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

『国宝 鳥獣戯画と高山寺』(京都国立博物館)


■ 行列のできる展示会
本日は遠征先の大阪から京都に足を運びまして、京都国立博物館で開催中の特別展示会『国宝 鳥獣戯画高山寺』を見てきました。国宝『鳥獣人物戯画』の修理作業が完了したことを記念して行われた本展示会は、甲・乙・丙・丁の4巻を全て揃えて公開するとともに、絵巻を納めている高山寺の所蔵品を展示するもので、本当に多くの人でごった返していました。自分は、1日丸ごと時間がありましたので、当初は寺社の散策等も検討していたのですが、結局、長い行列に並んで見てきました。音声ガイドや場内の解説をまとめた自筆のメモを参考にしながら、本展示会で感じたことを簡単に振り返りたいと思います。

鳥獣戯画の魅力とは何か?

修理作業を終えた『鳥獣人物戯画』は、日本史の教科書でも取り上げられる、超メジャー作品ではありますが、不勉強なもので、全容を理解しておりませんでした。解説によれば、全4巻の構成は以下のとおり。

甲:動物たちが遊び戯れる様子を擬人化して描かれた巻(平安)
乙:空想上の動物たちも交えた多くの動物が描かれた巻(平安)
丙:前半には人々、後半には擬人化した動物たちを描いた巻(鎌倉)
丁:仏事・騎射等の技くらべに熱中した人々を描いた巻(鎌倉)

その中でも、展示会でもメインで取扱われていた、平安時代に描かれた甲巻は印象に残りました。平安時代に描かれた甲・乙の絵巻は、日本のマンガ・アニメーション文化の原点とも言われる作品でもありますが、実際に実物を拝見して、その意味がわかった気がします。
今回の展示で公開された甲巻の前半部では、擬人化された猿、兎、蛙といった動物たちが、水遊びで戯れたり、的を当てる弓矢を放つ競争を興じたり、宴の準備をする描写が描かれていました。当たり前ですが、空想の出来事なので、モデルはいません。しかし、恐ろしいくらい、彼らの躍動感と豊かな表情が絵巻の中では描かれているのです。台詞が書いていないのに台詞や音が連想できる感覚はもちろん、絵巻の中で、次々と場面転換をして物語が進んでいく様子は、イラストよりも、漫画を読んでいるときに近い部分があると思います。

◯ 修復作業を経て明らかになった新事実
また、今回の展示会の注目点は、今回の修理作業の過程を経て、幾つかの新たな発見があったことだと思います。表裏であったものが1つの絵巻として繋ぎ合わされていたこと、前半・後半の別の部分で同じ紙料が使われていたこと等、今回の作業で一度分解しないとわからない発見だと思います。

以上です。鳥獣人物戯画は、現在も制作経緯・作者が不明と謎の多い絵巻ではありますが、同時代はもちろん、その後の時代の作品と比較しても、異質の作品であることは明らかであると思います。展示会を経て、知識の理解を含めるとともに、実物を見ることで多くの発見がありました。こうした鑑賞も立派なライブエンタテイメントだと再認識しました。社会人になって、美術館や博物館に足を運ぶ機会が遠のいていましたが、また少しずつ足を運びたいと思います。本当に来てよかったです。