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ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:賀川浩『90歳の昔話ではない。古今東西サッカークロニクル』

90歳の昔話ではない。 古今東西サッカークロニクル

90歳の昔話ではない。 古今東西サッカークロニクル

■ 現役最年長サッカーライターから見た日本・世界のサッカー
先日の新潟戦遠征に向けて購入した本です。本書は、現役最年長サッカーライターの賀川浩氏が、自らの体験や取材を経て経験してきたフットボールクロニクルについて、日本サッカー、選手、そして、ワールドカップの3つのカテゴリーから語っています。国内外のサッカーについて、日々勉強中の身としては、本書を通じて、様々な視点でサッカーの歴史を学ぶことができたと思います。本書を読んでいて興味深く感じたのは以下の3点です。

◯ 戦前から戦後の日本サッカーについて
日本サッカーの歴史を学ぶ際に、どうしてもデッドマール・クラマー氏の登場前後の戦後を軸に見ることが少なくないと思いますが、本書の「フットボールクロニクル」や「フットボーラークロニクル」の章では、戦前・戦後の日本サッカーの出来事や重要人物についても多くの記述を割いています。戦前の賀川氏は、実兄(元代表で殿堂入りしている賀川太郎氏)と同様に選手として活躍をしており、当時の代表選手や関係者とも接していたことがあり、1930年の極東大会から、歴史的勝利となった1936年のベルリン五輪なども記憶しており、記者をはじめた50年代には、1959年のアジアユース大会に派遣された初めてのユース代表チームのマネジャーとしても参加しています。
日本サッカーの創成期や戦後の復興期について、自らの記憶や体験を通じて語ることのできることは、賀川氏ぐらいではないかと。環境的に恵まれていなかった時代に、どのような方たちが環境作りに苦心し、研鑽を重ねてアジア・世界に挑んだのかを窺い知れる内容でした。このような記述だけでも、本書の資料的価値の高さは感じることができます。

◯ 歴代協会会長・レジェンドたちの「選手」時代について
本書を読んでいて、流石と思わされたのは、現在は解説者や指導者として活躍する方々や日本サッカー協会JFA)の歴代会長の選手時代のエピソードを豊富に記載していたこと。現在は評論家で知られるセルジオ越後氏や2度の代表監督を務めた岡田武史氏をはじめ、釜本・杉山のメキシコ五輪銅メダルの立役者、クライフやベッケンバウアーといった世界的なプレイヤー、さらには戦時中や戦前の名選手まで、具体的なエピソードを交えて細かく書かれています。
特に、お互いの選手時代から、クラマー氏の指名で東京・メキシコ五輪で日本代表を率いた若き監督とコーチ、W杯の自国開催に向けたJFAの会長として、日本サッカー界に携わってきた、長沼健岡野俊一郎両氏に関しては、非常に愛着を込めて書かれていたと思います。また、プレイヤーに関して、釜本邦茂氏の進化について、高校時代から知る著者の視点から、当時の出来事を踏まえて読み解いています。クラマー氏や杉山氏についても触れておりますが、このような人物視点から、東京五輪からメキシコ五輪に至る、日本の世界に挑戦するまでの準備や過程を知ることができると思います。
◯ ワールドカップの風景について
また、賀川さんが連載で書かれていた『ワールドカップの旅』をまとめた「ワールドカップクロニクル」も当時の雰囲気の伝わる読み応えのある内容でした。当時、同氏が働いていた会社を説得して、取材に初めて足を運んだのがトータルフットボールでクライフ擁するオランダが旋風を巻き起こした1974年の西ドイツ大会を起点に、2014年のブラジル大会に至るまで、試合や選手の印象に残った出来事や大会を迎えた国の雰囲気、そして旅の中の人々との出会いを、様々な視点で語っています。自ら撮影したマラドーナ5人抜きの写真や失敗談を披露する等、当時の空気感が文面から伝わってくる内容です。改めて、自分でもワールドカップを観戦してみたいという気持ちが強くなりました。

以上です。先のブラジル大会を終えて、賀川氏は、同大会の日本代表が、選手もサポもマスコミも含めて「若い」と指摘していました。そして、文中では「日本サッカーがもう少し大人になるためにも、改めて自らの歴史を振り返りたい」と述べて締めております。私も同じ意見です。最先端、現在を注視することはもちろん大切だと思いますが、多くのステイクホルダーが、過去の失敗や敗戦を含めた歴史を振り返る機会も並行して設けていないと思います。新たな歴史を作るために、振り返りながら前を向いていきたいですね。
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