ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

2014年度:等々力陸上競技場のホームゲームに関する考察(1)


■ はじめに
本稿では、昨年書いたホームゲームに関する考察*1を今年も継続して書こうと思います。来年、等々力陸上競技場は新メインスタンドの完成ならびに稼働を控えており、過去最大規模の観客数となります。スタジアムを満員にすることは、試合中の一体感の創出、収益源を拡大するうえでも、クラブの大きな力になると思います。もちろん、1人のサポーターであり観戦好きとして「満員のスタジアムで、最高の雰囲気を毎試合作りたい」という思いは持ち続けています。そうした思いを胸に秘めながら、今季のここまでの状況等について振り返りたいと思います。

■ 観客動員数・集客率:「微減」傾向ながら、昨年の水準をキープ
まず、前提条件として、川崎フロンターレの本拠地・等々力陸上競技場は、改修工事に伴い、昨年に引き続き、仮設スタンドを設置して試合を開催しております*2。そのため、本稿においては、昨季の数字を目安にして考えていきたいと思います。
◯観客数:過密日程に伴う集中開催の中で

図表1:川崎フロンターレのホームゲームの観客動員数・集客率
中断期間までの等々力でのホームゲームはACLを含めて12試合、平日開催が半分の6試合となります。また、少し細かくなりますが、ACLとの兼ね合いから、4月下旬から中断前の5月中旬までの3週間は5試合を集中開催しております。
J1リーグ戦については、8試合の平均観客動員数が「15,858人」となり、現時点では昨季の平均数(17試合)と同水準をキープしています。序盤4試合は平日開催もあり、観客数も厳しい数字が続いておりましたが、GW頃からはグッと集客を伸ばしております。また、細かい点かもしれませんが、近年、天候不順の日が多かった4月後半から5月中旬にかけてのホームゲームにおいて、今年は晴天が続いた点も良い方向に働いたのではないかと思います。

図表2:対戦チーム別の観客動員数・集客率(2014年・J1)
また、個々の対戦カード別の数字を見ていくと、昇格組を除く対戦相手では前年比で微減傾向となります。もちろん、対戦時の両チームの状況、開催日等は大きく影響してきますので、単純な比較はできませんが、シーズンのグロスの数字を最終的に見ることを想定しておりますので、参考値として今後も見ていきたいと思います。なお、今後の対戦相手を見ていきますと、浦和やFC東京、そして各地を賑わせておりますセレッソ大阪戦が控えていることも見逃せません。楽ではありませんが、営業努力次第では、グロスでも平均数でも昨年以上の数字は十分狙えると思います。
一方、別段でまとめておりますが、ACLの数字を見ますと、前回参加の2010年並の集客数を記録しています。サポーターとしては、大変刺激的で高い関心を抱く大会でありますが、なかなかリーグ戦ほど伸びてこないのが現状です。もちろん、ACLに対する現在の一般層の認知度や現在のスタジアム規模を考慮すると仕方ないと感じる部分はあります。ただし、WSW戦やFCソウル戦等は当日券に長蛇の列ができるほど、注目度の比較的高い試合には、平日ナイターながらも、手応えは感じます。首都圏から等々力のある武蔵小杉は比較的アクセスが良好ではありますので、平日でも等々力にもっと足を運んでもらえるような取組は、遅割システムの活用以外にも、まだまだ模索できるのではないかと考えます。

〇 集客率:高い数値を今季もキープ
次に、収容人数に対する動員数を表す「集客率」についても考えていこうと思います。今季の5月までの平均値は「76.1%」、過去最高値を記録した昨季「78.9%」に近い数値をキープしています。特に、観客動員数も伸びたGW前後の4試合の平均「90.1%」と毎試合パンパンの状態でした。昨季の考察でも書いたのですが、密度の高いスタジアムは「一体感」の創出に繋がるというメリットがありますが、来場者の座席確保やコンコース移動等、観戦環境としては不便に感じる点も多くあります。肌感覚レベルですが、正直、集客率80%超の等々力はキャパオーバーの状態だと思います。
そうした中で、先のマリノス戦において、横断幕を巡るトラブルが発生しました*3。本件については、ルールやホーム側の対応もそうですが、現在のスタジアム環境もある程度影響していると思います。こうした事態を鑑みて、横断幕掲出ルールの改定等、運営上の再発防止策を講じていただくとともに、観客の観戦マナー向上に向けた働きかけも、これまで以上に積極的に継続して行うべきだと思います。どういうかたちであれ、トラブルが起こることはあってはならないですし、安心安全なスタジアム環境を皆で作っていければと思います。

■ イベント:「継続」と「新風」

図表3:川崎フロンターレのホームゲームでの開催イベント(2014年シーズン)
さて、ホームゲームに関する考察ということですので、今季の等々力で開催されたイベントについても振り返っていきたいと思います。今季のホームゲームで開催された主要イベントは図表3のとおりです。参考までに継続企画については継続年数を記載してみました(動物企画はクラブのカウント集計を参考にしてます)。川崎サポーターの間ではお馴染みとなった、動物とのふれあい企画である「那須どうぶつ王国ランド」および「フロンターレ牧場」は5年目を迎えました。家族向けの企画として毎年好評なイベントですが、フロンパークのスペースを考慮した適度な規模で開催できることと、試合に絡めた話題作りに一役買ってくれていますので、非常にフロンターレのプロモーション戦略に合った企画に仕上がりつつあることを実感しております。
また、行政とのコラボイベントである「ひみつのケンケツSHOW!」や「エコ暮らしこフェア」も回数を重ねることで、初回の頃に比べると非常に充実してきたと思います。これらのイベントについては、市が関係する取組の促進や認知度を高めることも目的でありますので、多くの方々が集まって、盛り上がることは、フロンターレにとっても川崎市にとってもプラスになるかと思います。今後も、こうしたイベントを通じて、行政との一体感を進めていければと思います。
以上の定番企画は、トライ&エラーを繰り返し、継続性をもって取り組んできたことで、イベントの完成度に磨きをかけてきたと感じます。また、今年に関しては、ここまでのハイスパート開催でありながら、イベントを取り揃えられたのも、クラブが積み重ねてきた経験値も大きいのではないかと考えております。
〇 今年の天野乙?:「勝点」

写真1:「勝点」イベント告知ポスター(スタジアム内)
ホームゲームで大きな目玉となったのは、超大型コラボ企画「勝点」*4です。先述の定番企画とは一線を画した、大型集中プロモーション企画は、近年でも南極からの中継を実現した「難局物語」(2012年)、昨季もマンガ・アニメ作品とのコラボ企画「闘Aまんがまつり」、東急電鉄様の全面協力のもと開催した「川崎の車窓から」が開催されております。今回のイベントは落語協会のご協力の元、三遊亭小遊三師匠をはじめ、多くの方々がイベントに集まってくださいました。昨季の2企画と同様、サッカークラブのイベントとして上手くマッチするのだろうかという一抹の不安がありましたが、フロンパークに設営された特設演芸場には多くの人が集まり、芸や大喜利に拍手や笑い声が飛び交っておりました。

写真2:「勝点」イベントに伴い設置された特設演芸場
また、これまでのイベントとは少し異なり、今回の催しは高い年齢層にも好評だったようで、試合に足を運んだというより、散歩等で立ち寄った近所の方々も何人か見かけました。あまり、試合とかけ離れすぎるのは良くないと思いますが、イベントを通じて「フロンターレがまた何か面白いものやってるぞ」という雰囲気を醸成してこそ、開催の意義であるとも感じます。また、私見ですが、大型プロモーションは、特定のファンを抱えているジャンルに発信しているように考えることができます。準備や交渉等も大変かと思いますが、より幅広い層に向けて発信していくためにも、こうした取組は引き続き、続けてほしいと考えております。

〇 「ピッチ外」に活躍の場を移した大型新入社員・伊藤宏樹

写真3:アトラクションに参加する伊藤宏樹
また、イベントを語る上で欠かせないのは、選手からスタッフに転身し、サポーターの熱い視線をピッチ外で浴び続けた、伊藤宏樹の存在です。クラブのバンディエラとして、現役時代は抜群の存在感を誇っていた宏樹さんだけに、プロモーション部門に配属されることが発表された当初はある種のフィーバー状態と思います(笑)マスコットからの洗礼など小ネタを提供しつつ、シーズン開幕を迎えた頃、徐々に「プロモヒロキ」の取組が明らかになってきました。

写真4:『ヒロキッズランド』ポスター(神戸戦)
まず、フロンパークにおいて、自らの名前を冠した『ヒロキッズランド』をオープン。従来のキッズランドのアトラクションの中に宏樹さんが参加するなど、アトラクションを盛り上げることに。当初はアトラクションに参加する程度だったのですが、ユニホームを着て、子供達とボールを蹴る姿まで見かけることになりました。現役引退から半年も経たずにユニ姿の宏樹さんを見ることになるとは、流石に私も想像だにしないことでした。
次に、ACL開催時には『ヒロキーをさがせ!』というアトラクションを開催しております。これは、スタジアムに観客に自分の居場所を探してもらうという催しで、結局、派生して開催された「すくえ!」も含めて3回も実施されて、終いには(自主規制)。
とにもかくにも、宏樹さんのピッチ外の奮闘ぶりなしには、この数カ月のフロンパークは語れないです。結果として、2つの宏樹企画のおかげで平日開催の5試合でイベントが開催されたことになりますし、空いたスペースを埋めるディフェンスばりのカバーリングぶりです。正直、個人的には、ルーキー時代から知る選手であるとともに、本当にレジェンドのような存在なので、こんなに無茶ぶりしてよいのかと心配する部分もありました。それでも、現役時代と変わらぬ献身的な姿勢を見せてくれるのですから、本当にありがたいものです。次にお会いしたら、まずは労いの声をかけたいところです。

以上のように、相変わらずの天野乙な企画が早々に炸裂するとともに、伊藤宏樹という大型新人が加わるなど、フロンパークにも新たな風が吹き込んだ印象もします。継続と革新、更なる進化を夏以降も見続けていきたいところです。

■ おわりに
中間発表のようなかたちで、ホームゲームについて考察していきましたが、イベントでの盛り上がり、高い集客率を維持することで非常に良い雰囲気をスタジアムで作れていることに手応えを感じつつ、観戦環境の利便性低下の問題は見過ごせません。問題が起こったことは二度と起こってはいけませんですし、より良いスタジアム作りには何が大切なのか、改めて考える機会になりました。
自分の応援するクラブという立ち位置から、スタジアム観戦について色々と考えていくことは自分にとって色々と考える機会となりますし、アウェイに行く際も視野が広がります。Jリーグを盛り上げるために、自分たちができることはスタジアムの魅力を伝えることだと思いますので、引き続き、自分の足元から考察を続けていきたいと思います。

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