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ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:大東和美・村井満編『Jリーグ再建計画』

Jリーグは今、何に取り組んでいるのか?
日本代表メンバーも発表され、W杯モードが色濃くなってきました。書店に足を運んでみますと、大会を意識した関連本の新刊が多く発売されておりますが、今回紹介するのは、Jリーグに関する本です。本書は、前チェアマンの大東氏、村井チェアマンが編者となり、Jリーグの現状とともに、昨年、各クラブのサポーターの間で大きな議論となった2ステージ制の導入をはじめとした一連の改革およびビジョンについて紹介しております。新書ながら、資料的価値も含めて非常に読み応えのある内容だと思います。
Jリーグの改革とビジョンについて
一人のクラブサポーターではありますが、私もJリーグの取組について、逐一情報を入れるよう努力しております。そんな中でも、本書の中で、気になった点は以下の3点です。
〇2ステージ制の導入に関する背景と議論過程
昨年、各クラブのサポーターの間で大きな議論になった2ステージ+ポストシーズン制度導入については、本書においても現状認識と合わせ、最初に取り上げているトピックです。2ステージ制度の再移行やチャンピオンシップ復活等は、観客動員数の微減状態が続く中で、従前から話題となってきた議論ではありますが、今般に至る具体的な報道が出てきたときは、多くのサポーターが「寝耳に水」だったと思います。本書では、その経緯と議論について、個々の証言を踏まえ、詳細に記述されております。
本書でも丁寧に紹介しておりますが、2ステージ制度導入の背景は、人気回復の話題性作り以上に、直近に迫るリーグの大幅な減収への対処であるということです。この点が明らかになったのは、導入決定後、川崎フロンターレが昨年9月に開催した説明会であると思います(以下、説明会報告における武田社長の発言を抜粋)。

(武田社長)(略)放映権料とかJリーグのスポンサーや協賛金。これは実は今年2013年度で契約が切れるんですね。来年2014年から新しい契約を結ばないといけない。その時に今現在の交渉で何と言われているかと言うと、2つ合わせて10数億のダウンが見込まれているんですね。10数億のダウンってどういう数字かと言いますと、JリーグはJ1とJ2の各クラブに配当金を出しています。それが10数億下がるというのは、J1でいうと1クラブあたり5千万くらい配分金が減るということ、J2では1クラブあたり2千万くらいが減るという数字に匹敵するもの。そのぐらい影響のある数字です。*1

Jリーグの収入の落ち込みは、各クラブに分配金にも直結する問題で、収益面の柱の1つとなるクラブも少なくないと思います。分配金を削ることは厳しく、減少分を補う運営費や育成等の支出を削ることにも大きな支障が生じる。このため、導入を条件にして、(1) 2014年度以降の新契約が従来と同規模の金額での継続、(2) 2015年からの増収(本書では正確に触れていないが、武田社長の説明を聞く限り、テレビ局の放映権料等で確約している部分、協賛金等の導入後に見込まれる部分があると思われる。)、が「大まかな背景」であるということです。本書にある委員会での議論の過程を拝見すると、改めて「増収」よりも「減収」に対する懸念が議論進展に大きく寄与したことが伺えます。
また、本書の記述の中で興味深かったのは、情報開示の部分です。議論の過程が一般的に明らかになったのは、Jリーグからのリリースではなく、独自に情報を得た新聞報道によるものです。背景となる部分に触れられず、センセーショナルな話題だけが先行して出てしまったことが、批判的な意見が大きく先行した要因になったと思います。情報開示について、混乱を避けるために情報開示に踏み込めなかったという記述もありますが、長年課題とされている、情報発信に対するJリーグの脆弱性が端的に表れている部分と捉えることができると思います上記の背景説明とセットに、コミュニケーション戦略を立てて臨むべきであったと強く感じた次第です。
クラブライセンス制度に対する認識
2つ目として気になったのが、近年の各クラブの経営に大きな影響を与えたクラブライセンス制度です。Jリーグのライセンス制度は、Jリーグが多くの点で参考にしているドイツで採用されていることから、従前から意見や議論が行われてきたところですが、AFCの通達を踏まえ、2012年から導入されました*2
クラブライセンスの発行ならびに基準を満たすために、クラブはスタジアム、練習場やクラブハウスといった環境整備、さらに安定的な経営を行うための財政健全化を行うことが求められるようになりました。特にライセンスの基準を満たすため、赤字を計上していたクラブは健全化を図る動きが必要であります。慢性的な赤字に悩まされるクラブにとっては高いハードルであり、そうでないクラブも、より慎重な経営が求められるようになりました。
回復基調にあるとはいえ、企業単位への波及度が未知数な景気状態を踏まえると、率直に考えると、私は財政面のハードルは厳しいと感じています。しかし、本書で指摘する内容を読んだうえで、ライセンス導入の肝は緊縮的な財政運営を促すというよりは、持続可能なクラブ経営に必要なバランス感覚を身につけることであると感じます。
本書では、マリノスの一連の改革プランを紹介しておりますが、最も評価しているのは内容よりも改革への姿勢だと思います。Jリーグ側が経営者の育成という部分に触れており、今後の取組の視野に入れていることも紹介していることからも、改革に対する姿勢や意識の部分を強調しているのではないかと私は考えます。また、私見ですが、セレッソ大阪のように、クラブの安定した黒字経営と増収傾向を土台にして、単年度の赤字も視野に入れた、フォルラン獲得の大型補強にも踏み出す、という姿勢が最も理想的なのではないかと。
クラブ経営に対するバランス感覚を有したうえで、リスクを含めた適切な判断を下すことを求めていくとすれば、そのために必要なツールとして機能していければと思います。
◯ 原資を育成にどのように向けていくのか
最後に気になったのはJリーグにおける育成の視点です。2ステージ制とポストシーズンの導入に伴う大会フォーマット変更によって得る増収見込み分の原資の用途として、発信と育成に向けると述べておりますが、双方とも具体的にどのような施策を講じるかは不透明なものでした。本書では、その育成に対する施策の考え方や証言、そして今後の方向性を提示しています。予算規模の拡充された場合、現在のJユースカップ*3の開催等とは別に、U13、U14、U16の年代別リーグ戦や海外キャンプの拡充などを一例として挙げている。本トピックのまとめで述べられていた内容であるが、日々の練習環境をクラブで整備し、ゲーム環境の整備にリーグ側が携わるという整理で良いと思いますし、従前のリーグ側の取組を踏まえて考えると、おそらく育成面の投資先はこうした形で納まるのではないかと思います。


以上です。状況は、危機的な状態であるとは言いきれませんが、手を打たなければいけない時期にきているのは確かです。本書で述べたような、Jリーグなりの考え方を持っていることを、もっと広く、多くの人たちに伝えていくべきではないかと思います。繰り返しになりますが、情報開示・発信に対する、Jリーグ内部の改革は必要であると思います。試合に関する情報はもちろん、クラブの事例の共有、対外メディアへの発信等について、リーグ側が窓口となっていけば、露出の機会も熱のある議論も進めていけると思います。
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