ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

『THE NEXT GENARATION パトレイバー』


■ 2014年の『パトレイバー
金曜日に新宿ピカデリーで限定公開中の「THE NEXT GENARATION パトレイバー」を見てきました。学生時代は押井守監督の信者であり、真野恵里菜さんのファン(=マノフレ)でもある自分からすれば、本作は夢のような作品です(笑)。ただし「パトレイバー」自体は大好きな作品ではありますが、最後に作られた劇場作等から10年以上経過したこともあり、流石に「今更感」は拭えませんでした。そんな思いが交差しながらも、公開された第1章を見た感想は以下のとおりです。

○ シリーズの「伝統」を継承するという選択肢
結論から述べれば、個人的にはシリーズの新作として大変納得できる内容でした。その理由は、シリーズが積み上げてきた歴史や世界観(監督の言葉を借りれば「伝統」)を適度なバランスで継承していると思ったからです。しかも、長年、押井監督の作品を見てきた人間とすれば、そうした「継承」を行うという選択肢を取ったこと自体に驚きを覚えました(笑)
<似て非なる三代目の登場と「押井ギャグ」の復活>
本作は、初代のメンバーの雰囲気を残しつつ、別人として存在する三代目の特車二課の面々が登場します。名前に限らず、特徴に関する共通項のディティールも細かく入れており、ついつい、ニヤリとする場面が何度もありました。余談となりますが、旧作を知らなくても全く問題無いのですが、知っていればより楽しめるという形は、押井監督の得意の小ネタの入れ方だと思います。これは、自分自身も定義できていない部分はあるのですが、所謂「押井ギャグ」の代表的な型ではないかと考えます。個人的には、押井監督の一番好きなスタイルでもあるので(おそらくは『ミニパト』以来か?)、この形が久々に見れたことが、この作品で秘かに嬉しかったことでもあります。
<物語の繋ぎ役であるチバシゲオ>
また、新たな人物たちとともに、語り手を兼任するかたちで、数少ない旧シリーズからの繋ぎ役として登場したシバシゲオの存在も大きいと思います。歴史を語り、新しい物語に継承する役割を担いつつ、上述の三代目たちと同様に、本人が旧作における榊整備班長をダブらせる風貌にも見えてきたのが、また絶妙な立ち位置ではないかと思います。演じられた千葉繁さんは、特に演技を意識していない旨とパンフレットのインタビュー記事にありましたが、目には見えない空気感の描写に大きな影響を与えたのではないかと考えています。

◯ 『パトレイバー』の空気感=モラトリアムに対する描写
パトレイバー』に限らず、どのような作品を見ていく上でも、私は作品がもつ個性というのを考えます。『パトレイバー』については、出渕氏の精巧なメカ、劇場版『2』に代表される複雑なロジックも個性であると思いますが、私が考える本シリーズ最大の個性は、埋立地に漂う「モラトリアム」だと思います。作品の世界観を紹介し、方向性を打ち出すだろう『エピソード1』において、隊員たちの緊張感の無い、緩い空気感(軍隊式の整備班とのギャップ含む)、退屈を極める長い待機時間の描写に大部分を割いたこと、そして登場人物たちが、自らが持て余す時間を言及したことで、私の作品に対する期待感が一気に高まりました。レイバーが動く場面とか、シリアスなドラマではなく、私がパトレイバーに求めるモノはまさにコレだったと再確認させられました。

マノフレとして見る女優・真野恵理菜
最後に、キャスティングとして、ファンでもある真野さんのことを語りたいです。真野さん自身、CDメジャーデビュー前後から、BS-TBS『東京少女』シリーズ等に出演する等、演技での経験も積んできました。ホラーであったり、コメディ色の強い作品だったり、あとはシリアスな物語だったり、そのバリエーションは非常に幅広かったです。その点では、押井作品の幅広さにも通じるものがあるなと感じました。バスケだったり、ゲーム好きだったり、デビューした頃の真野さんのプロフィール欄に書いてあって、よく話されたことだなぁと思いながら、キャラと本人の共通項を見出しながら、少し懐かしく感じたりもしました。それはともかく、作中での朗の成長過程と寄り添うように女優としての真野さんの成長を見守ることができるのが嬉しくもあります。
<特車二課のカオスさを際立たせるキャスト陣>
もちろん、その他の二課のキャストも非常に魅力的で二課のカオス感をよく表現していたと思います。特に、カーシャ役の太田莉菜さんは素晴らしかったです。兵藤まこさん、佐伯日菜子さん、最近では菊地凜子さんなんかもそうですが、押井作品の戦うヒロインのキャスティングは相変わらず良いです。また、筧利夫さんが演じる後藤田隊長なんかも、個人的にお気に入りです。当初は、真野さん含めて不安にも感じましたが、彼らが描いていく特車二課の風景と言うのが今から楽しみです。

以上です。正直、期待値は高くはありませんでしたが、見終わったら大満足で限定盤BDを手にしていました(笑)ファンとしては、2010年代に入って新作が見れることが既に幸せななことだと思うのですが、連続シリーズとして長く付き合えるわけですから、本当にどうでもいいようなバカな話をたくさん見せてほしいです。