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ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:岩本ナオ『ジャイキリ読んで○○してきました』

■ 「ジャイキリ好き」が「サッカー観戦好き」になるまで
本書は『Giant Killing』(以下「ジャイキリ」と言う)のムック本『Giant Killing EXTRA』の連載企画として掲載された、漫画家の岩本ナオさんのサッカー観戦マンガが単行本化されたものです。個人的には毎号楽しみにしていた漫画だったので、今回改めて読み返してみて、大変興味深い内容でした。

当初の岩本さんは、特別にサッカーファンというわけではなく、当初はルールと代表の選手は知っていて、テレビでやっていれば、W杯になれば見るという、本人も述べるところの「多分よくいるタイプ」の方です。本書では、ジャイキリに感化された岩本さんが実際のサッカーの試合観戦へと誘われるというお話、最初はJリーグの試合から始まって、代表戦、なでしこ、高校サッカーにも足を運んでいます。

岩本さんは、実家が岡山ということでファジアーノ岡山に愛着を持つとともに、代表では長谷部選手に傾倒しており、スタジアム観戦の魅力から、好きなチーム、選手が出てくるという、非常に理想的な観戦のハマり方ではないかと読んでいて思いました(笑)。個人的には、帯コメントのツジトモ先生と同様に、岩本さんと一緒に見てみたいです。

■ 観戦初心者の「気づき」が持つ意味
岩本さんは漫画の中で、観戦を通じて、気付いたことや感じたことを率直に述べています。最初は「試合をどうやって見るか」という部分から入り、冬場のスタジアムが寒いこと、得点が決まると応援の盛り上がりがすごいこと、肌感覚で得たものを絵や言葉で表現しています。

観戦歴を重ねると少し新鮮にも感じますが、こうした観戦者の気づきというのは、観戦環境や集客においても重要な意味を持つのではないでしょうか。

Jリーグも観客増加に向けた施策として、2015年からの2ステージ制とポストシーズンの採用を決定しました。たしかに、見せ場を作ることは大きな注目を浴びることになりますし、盛り上がるイベントが必要という事務局の考え方の大枠は理解できます(お金がないという状況も)。
また、昨年の秋ごろから、東アジア選手権での柿谷選手や山口選手の活躍を通じて、セレッソ大阪の試合に駆け付ける方が増えたという現象が起こっています。また、J2では各地で開催されたガンバ大阪戦は観客を集めました。こうした事態もまた、一種のイベント現象と考えられるでしょう。

しかし、改革案や上記の現象の中で足りないのは、日々の観戦者の視点だと思います。スター選手は突如出現するわけではありませんし、ステージ優勝争いはともかく、実際のポストシーズンに関係ないクラブがほとんどです。リーグ全体がベースアップをしていくうえでは、日々の「そこにある試合」をいかに盛り上げていくのかが重要ではないでしょうか。そのためには、観戦経験が「ゼロ」の方を「イチ」にしていかねばならないですし、観戦に対する参加障壁をいかに取り払うかが課題だと私は考えています。

そうした意味では、岩本さんのような視点なり感覚というのは貴重なものだと思います。例えば、一緒に見て解説する人の存在が岩本さんにはとても頼りになったこと、選手の名前が何となくしかわからなくてもスタジアムの雰囲気が継続的に足を運ぶ契機になること等、参加して、体験すること自体が大きな魅力になることを本書で改めて感じました。

Jリーグならびに各クラブは、スタジアムに観客を呼ぶためには何が必要なのか、という取組を、チケットを配布するとか、そういうレベルでなく、どのように魅力を伝えるのか、という観戦者目線で進めていかなければと思います。セレ女のような現象を期待するより、観戦者の「岩本ナオ化」を考えていくことが重要ですね。