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ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』


TOHOシネマズ渋谷では『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を見てきました。ディカプリオ出演作品は、何気に昨年も劇場で『ジャンゴ』と『華麗なるギャツビー』を見ていたので、すっかり彼の怪演技を楽しむという姿勢になっている気がします(笑)。そうした見方は別として、本筆者も一応、金融関係で働く立場ですので、本作を「ウォール街と映画」という視点を含めて考えていければと思います。

■『ウォール街』が残したインパク

ウォール街を取扱った作品といえば、誰もが思いつくのはオリバー・ストーン監督の『ウォール街』(1987年)ではないでしょうか。当時のウォール街を舞台に、マネーゲームを繰り広げる男たちを描いた同作品では、マイケル・ダグラスが演じる大物投資家のゲッコーが『GREED IS GOOD(欲というのは善である)』という資本主義をポジティブな面を評価しています。ゲッコー自身は善人ではなく悪役の立ち回りではありますが、ウォール街にある野望と欲望を体現するような人物として、強烈な印象を残しています。
公開された1987年(作品では1985年から始まっている)といえば、現代史でも触れられる「ブラック・マンデー」が発生した年で、監督自身も想定しなかったほどの大事態が発生しています。現実が物語を上回る出来事というのはしばしばありますが、それほどまでに、ウォール街で起こっている出来事の危うさを象徴しているようにも感じます。

■ 『ウォール・ストリート』が描く変化と不変

ウォール街』の公開から23年後、金融危機後のウォール街を舞台として、オリバー・ストーン監督は、続編として『ウォール・ストリート』(2010年)を作っています。監督自身も述べているように、ゲッコーが戻ってきたとはいえ、前作と本作ではウォール街を取り巻く環境は大きく異なっており、その点を非常にわかりやすく描いています。
特に、金融における機械の存在は印象的です。前作の時代では、当時の取引のトレンドであった、企業のM&Aを巡る攻防が描かれており、普及が始まったコンピューターも取引をサポートする立場にありました。しかし、本作が舞台となる00年代では、金融工学を駆使して組成された金融商品が多く売り出されるようになり、そのためにはコンピューターや機械の存在は欠かせないものになっていきました。金融システムの入門書にも書かれていますが、合理化・効率化の一端を担う立場から代替不可能な存在に変容しています。機械が支配的なウォール街の姿を、印象的に描いています。
一方で、20年以上経過しても変わらない部分は、監督自身も述べるとおり「過ちを繰り返している」と言う点です。熱狂、混乱そして破綻といった流れをウォール街が繰り返していることを『ウォール・ストリート』でも描いています。そのダイナミズムは、欲望と野望が源泉となることはもちろん。出所したゲッコーも、講演の中で「欲は善である」ことは否定していません。時代を超えながら、変化と不変を描いている点(ゲッコー自身の描き方も同じですが)、その連続性も含めて続編として成立していると思います。

■ 外側からウォール街に攻め込んだ『キャピタリズム

上記2作品は内幕からのアプローチでしたが、逆に外側から攻め込んでいったのはマイケル・ムーア監督の『キャピタリズム』(2009年)だと思います。本作は、資本主義をテーマに、同監督が金融危機を生み出した投資銀行や保険会社の内情を調べ上げ、最終的にウォール街に失われた金を取り返すために攻め込みます(笑)

■ 「ウォール街の狼」と言われた当事者が語る狂乱

ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、『ウォール街』と『ウォール・ストリート』の間でもある80年代後半から90年代を舞台にしています。原作となったのは、ウォール街に君臨したジョーダン・ベルフォードの告白本。つまり、実話がベースになっています。
正直、その内情は、狂乱そのもの。描写に関しては、映画でも、かなり強烈に描いていたので驚きました(カップルで見るのは避けましょう)。アプローチは異なるものの、上記の作品と同様に、ウォール街の異常さを描いていると思います。

もちろん、ジョーダンも、ウォール街に渦巻く欲望と野望を体現しています。ジョーダンは、自ら証券会社を経営し、ステージ上でマイクを振り回し、顧客に売って、売りまくる兵隊たる社員たちを鼓舞するシーンは特に印象的です。まさに、ロックスター。こうしたアプローチは、激しいながらも、静かに重みのある言葉で訴えかけたゲッコーとは対照的で、ディカプリオの怪演技も際立ちました。
また、彼だけでなく、ジョーダンを取り巻く人物たちを演じたジョナ・ヒルをはじめ、個性的なキャストの振る舞いも非常に見ていて面白かったです。特に、序盤でジョーダンに心得を授けるマーク・ハンナを演じたマシュー・マコノヒーは短いシーンながらも非常に印象的でした。

あと、個人的に気になったのが、本作で、ジョーダンが証券会社で外交員(実際に顧客に株を販売することができる資格)を得て初めて対応を行った日が、まさにブラック・マンデー。出社する場面の流れが、『ウォール街』冒頭で主人公のバド(チャーリー・シーン)の出社シーンにダブって見えたのは偶然なのか、意識してなのかは少し気になるところ。

非常に刺激的な作品、好き嫌いが出てきそうですね。