ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:小沼純一『発端は、中森明菜一ひとつを選びつづける生き方』

発端は、中森明菜一ひとつを選びつづける生き方


中森明菜さんの生き方に惹かれる人は今も多いはず
音楽評論家の著者が中森明菜が40歳になったことを知ったことを
契機に、彼女がデビューから1年間の休業という転機を迎えるまでの
80年代の足跡を女性の価値観の変容などとともに、取り上げている。


何の書籍で読んだか忘却してしまったが、中森明菜山口百恵の進んだ
道と比較される。それは、百恵さんは共演した三浦友和氏と出会い、結婚。
芸能界を若くして去っていったのに対して、中森明菜さんは近藤真彦氏の
自宅で自殺未遂をした。つまり、百恵さんと同じ道を歩めなかったという指摘。
(同じケースは90年代初頭の宮沢りえにも言える、と同じ書籍にあったと思う)


中森明菜が80年代に活躍した(アイドル)歌手であるということに異論はない。
しかしながら、本書でも取り上げられているが、同時期にデビューし、活躍した
松田聖子と比較すると、現在の立ち位置は大きく異なる。著者の小沼氏の観点は、
中森明菜の生き方が、その違いを生んでいると指摘している。


小沼氏の意見を要約すると、聖子さんは非常に上手く全体芸能界を生きている。
一方で、明菜さんは不器用に歌を歌い続けることを選んでいるということだ。
上っ面ではなく、より本質的な深い部分を求めていった純粋さというのは私も
楽曲を聞きながら、新しい解釈として知ることができた。


しかし、時代を踏まえた検証の浅さと著者の感覚的なものが中心が残念だ。
元ネタが大学のゼミの話だから仕方ないか。新書でも良かったかもしれん。
これを契機に明菜論の関連書は、他にも何冊か読んでみたいと思った。


文:Y.Ishii