■ 勝 新太郎と書いて、まとまるなんて、おかしいよ。(あとがきより)
昭和を代表する名優・勝新太郎氏が自らの半生を書き記した人生録。
新装版に際して、吉田豪氏による帯コメント、解説が巻末にも収録。
昨年、吉田氏がpodcastで話していた勝新ネタが面白かったので購入する。
吉田氏の解説でも触れられたが、↑の一文のように、文章のリズムがいい。
勝氏は演技について、間を大切しているという記述が何回も見られたが、
本書の文においても、文における、言葉の置き方が本当に絶妙であった。
台本のセリフは基本的に覚えなかった人なので、そこら辺は自然体かもな。
一方、構成はアンバランスだった。発売の数年前、勝氏は麻薬の所持で
逮捕されたりしたことから、スキャンダルに対する暴露話などが語られる
という期待があったらしいのだが、前半部の少年時代の記述のウェイト
が高く、逮捕後の話は一部で、自身の不景気な話はさほど語られずじまい。
内容については、勝氏の破天荒さを表すような話題には驚かされるばかり。
そんな彼の理不尽さがまかり通っていたのは、寛容な時代だというべきか、
まさに役者が絶対的だった時代と考えるべきか、とにかく現在とは大違いだ。
強烈な個性がエンターテイメントとして成立するというのは、彼が
スター・名優たる所以なのだろう。下手な漫画より全然面白かった。