ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:小川光生『サッカーとイタリア人』

サッカーとイタリア人 (光文社新書)


カルチョ(サッカー)とカンパリニズモ(郷土愛)の繋がりを読み解く
著者はセリエA関連の翻訳や取材を中心に執筆業を行うヴェネツィア在住のライター。
セリエAを中心としたイタリアの各チームを本拠地である各都市・地域を絡めて紹介。


以前に読んだ、杉山茂樹『闘う都市』も街とクラブをテーマにした内容だったが、
試合レポがメインだった。それに対して、本書は街や地域をベースにした構成だ。
当方は正直な話、昨年から真面目に海外サッカーを見始めた川崎サポなので、
時間を見つけて海外サッカーの書籍や文献を読みあさっている身としては、こういう
書籍の存在は非常にありがたい。断片的な知識が、これで線としてつながった感じ。


さて、若いサカヲタで海外サッカーの入口がイタリアという人は少なくないと思う。
というのも、Jバブル華やかな頃にカズがジェノアに移籍し、初のW杯出場の直後に
中田さんがペルージャ、翌年に名波がヴェネツィアに入るなど、海外挑戦の舞台が
セリエAが中心だったり、90年代後半のセリエAが群を抜いて選手が揃ってたからだ。


そうして、海外のサッカーを見る上で、我々はクラブや選手について知ることは
あっても、クラブが居を構える街について触れるということは少ないと思われる。
本書を読み進めていく上で、流石に歴史の長いクラブも多く、地域や街の特色を
色濃く受けていることを知ることができた。異常とも思われるダービーの熱も、
こうした地域色の濃さが影響にあるのだろう。地域によっては内戦状態だとか(笑)


エピソードで非常に印象に残ったのが、昨シーズンからセリエAに復帰したナポリ
SkyAで何故か放送してるインテルチャンネルの解説を担当している山中忍さんが、
ナポリ戦の際にも即答していたが、過去にマラドーナが所属していたことで有名。
彼がナポリで過ごした数年間、街全体がマラドーナに対して愛情を注いだという。
スグデット獲得、マラドーナ追放とセリエB転落、彼の復調とチーム復活を通じて
カンピオーネと人々の激しくも美しい恋愛模様にカルチョの色濃さを垣間見た。


Jも15年の中で、各チームの特色が出てきたことは誰もが感じることかもしれない。
しかし、川崎もそうであるように、チームが地域や都市の顔になりきれていない。


自分がフロを応援しているのは自分の生まれ育ったこの街の誇りだと思うからだ。
光化学スモッグとか、騒音とか、ベッドタウンに対するコンプレックスとかで、
正直、子供の時は東京で暮らしたいと思っていた。だが、フロンターレのプロ化を
通じて、改めて川崎という街と向き合うことができた。今では愛すべき故郷である。


すぐにカルチョの国のようにはいかないが、今よりも多くの川崎の人たちがフロの
ことで一喜一憂し、川崎市民の170万人の心のホームチームになってほしいと思った。


余談だが、筆者の小川氏が一部ネットで大人気のカッサーノさんとマデラッツィ塾長
をいちいち取り上げていたのが嬉しかった。アッズーリの選手は愛すべき人が多杉。