ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了・コミック:山本直樹『レッド』(1)(2)

レッド(1) (KCデラックス イブニング ) レッド(2) (KCデラックス イブニング )


■ 若者たちが抱いた青き幻想は赤かったのか?
宮沢りえが主演した映画『ぼくらの七日間戦争』は廃ビルに立てこもった中学生と
厳しい校則を押しつける学校の教師との闘争を描いたものだが、原作を読んでみると
立てこもった中学生の中心人物の親たちは学生運動に参加していたという設定だった。
今、考えれば、少年たちは親たちが行った権力への打倒をなぞっているように感じた。


さて、本書は最近2巻も発売したので購入。もっと早く読んでおけばと思った。
↑以外にも大学に入った頃に『赤頭巾ちゃん気をつけて』や『僕って何』という、
60年代安保を描いた作品を読んでいて、それ以降の時代も気になっていたので。


本作は、その学生運動の大きな転換点である1969年から1973年までの出来事を
様々な人物の視点から細かい時系列で描いた作品。登場人物は一応、同年代だ。
年齢も変わらない若者たちが爆弾を作り、銀行を襲い、銃を奪い、闘争を続ける。
今から考えると、それこそ物語のような話にも聞こえるが、これが現実だったり。


安田講堂陥落、東大入試中止という大きな事件を境に学生運動というのが下火に
なり、次第にテロリズムへ傾倒する。最終的に連合赤軍による「あさま山荘事件
という大事件が起こり、連合赤軍は崩壊。残党は自首もしくは日本赤軍と合流する。


安保の頃の大学生は(今の)僕らよりもずっと勉強してて、難しい本を読んでいた。
と、当時の先生か誰かに言われた。その時は「僕らって不真面目なのか」と思った。
本書を読んでいて、確かにそう思う反面、彼らの甘さというか矛盾もまた感じたり。


70年代に突入すると完全に学生運動が大学におけるメインストリームから外れていく。
気がつくと彼らのコミュニティ内部では、革命だ、武装蜂起だ、国外に拠点といった
大きな話は展開されるが、物事も社会も政治も全然変わらないし、うねりも起きない。
社会との繋がりが希薄化した集団の「閉鎖性」を感じる。これは大きな矛盾ではないか。


自分を追い詰め、公安や警察にも追い詰められ、そして事件に繋がっていったのなら、
本当に彼らが追い求めた青き幻想は赤かったのかどうか、それは少し引っかかったり。