ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:木村元彦『オシムの言葉』

オシムの言葉 (集英社文庫)


オシムさんにもっと教えて欲しかった
本書はジェフの監督として辣腕をふるっていた頃に出版された本であったが、
文庫化に際して、日本代表監督就任以降の出来事についてを大幅に加筆している。
経験の浅かった若手を中心としたチームを率いて、Jリーグで快進撃を続けたオシム
選手を時には驚かせ、時には厳しく叱り、時には褒める。それを語録とともに振り返る。


本書からオシム語録、つまりオシムの言葉に何が込められているのかを知った。


言葉の意味のひとつ、彼の「リスクを冒して攻める」という攻めの哲学であった。
それはプレースタイルから、大学で数学を専攻していた彼が教授という道ではなく、
プロサッカー選手として身を投じたことも、監督として采配を振るうこともそうだ。
人生そのものをリスクを冒して体現してきた、攻めの哲学をチームの選手に共有した。


オシムの言葉のもう一つの意味は、選手の心の内を察した上で、言葉を発したことだ。
外人、若手、選手を横一線に捉えて接するオシム氏。言葉も選手のことを考えたうえで
話す。そして選手を信じ、使い続けて伸ばしてきた。プロの世界では特に大変なことだ。


そんなオシム氏だからこそ、私だけではないだろうがグッときた言葉は

「作り上げることは難しい。
でも、作りあげることのほうがいい人生だと思いませんか?」

祖国の内戦で大会前にチームが崩壊していったという経験もした*1オシム氏だけに、
非常に重い言葉だ。改めて、彼の非常にふり幅の大きな人生を経験していることを感じる。


そんなオシム氏に、日本サッカーはもっと学ばなければいけないことがあったと思う。
たしかにアジアカップは勝てなかったかもしれない、知名度の低い選手たちの起用が
多かったかもしれない。でも、僕は少なくとも何かを掴んで、これからに期待したい
サッカーを見れた気がした。日本サッカーが低成長、マイナス成長時代に突入した今、
アドバイザーになったオシム氏はどう思っているのか、自分は今だから言葉が聞きたい。


そういえば何年か前に読書感想文の課題図書になったって聞いた様な気がするが、
これはたしかにいい。題材も題材なので、普段本を読まない中学男子学生にも
スルスルっと読めると思う。自分も中学生くらいから、スポーツノンフィクション
にハマったころだし。夏休みの宿題に『オシムの言葉』っていいかもしれない。

*1:これについては本書の第3章から5章だけでなく、引き裂かれたイレブン ~オシムの涙~ [DVD]のDVDでも紹介されている。