ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

アニメバンプ論・春期レポート:『true tears』(全13話)

作品に対する印象を端的に述べれば「思春期の男女の揺れ動く恋愛模様」だった。
結論としては、不安定さ故にスッキリとはせず、満足度はさして高くはなかった。
この結論の理由として「最後まで不格好かつ不器用な各人の立ち回り」に集約される。


眞一郎、比呂美、乃絵、愛ちゃん…。上手くいかなかったり、行ったり来たりした。
高校生、それでいて思春期にありがちな親との衝突や悩みを抱えながら物語が進んだ。
アクセントで複雑な人間関係なんてのもあったが、締めるところは不器用さを感じた。


そんなトゥルティアを形作った世界観の特徴として、私は二つを挙げたい。


一点目は、リアルとロマンの混在=「王道に対する挑戦の爪痕」ということ。
原作からテーマだけを継承して、オリジナルに挑戦した作品の例は少なくない。
「王道ラブストーリーをガチで作る」(スタッフ談)ということも容易ではない。


王道を新しくデザインすることは、奇抜な作品を作ることの数倍も困難ではないか。
王道というものはジャンルの根底を成すものだから、既視感とマンネリとの戦いだろう。
それを乗り越えて、視聴者に満足度を提供するという、二重のハードルがあると言える。


監督やスタッフのコメントで、作品の構成要素として「ロマン」という言葉を用いている。
具体例として「一つ屋根の下の異性」や「マフラーをかけてもらう」を挙げていたりする。
王道を語る要素として、その枠組みをど直球ではめてくるんだから、大胆と言えば大胆。


一方で、型に様式美と重厚さを引き出すためにリアリティへの飽くなき追求がなされた。
背景に対する数多くのロケハン、音響効果、細部は見れば見るほど驚くべきクオリティ。
ベタなものに対する目新しさを生んだのは、効果の部分であると私は考えている。


二点目は、物語がファンタジー“テイスト”で色づけられていたということ。
“テイスト”と私が言及する理由としては、語り部であった眞一郎が詩的な語りと
乃絵の比喩的な言い回しで展開されるも、物語そのものにはファンタジーはない。


これは西村監督がコメントで述べている

「力業の真っ向勝負で繊細な描写を積み重ねる一方で、
           説明に必要な描写を敢えて切り捨てる」

という、所謂「贅沢な手法」の具体例ではないだろうか。


描写そのものは繊細な反面、説明は比喩的かつ感情的で不透明な部分は少なくない。
終盤は行動一つとっても読解力を要した。自分も、これだけ頭を捻ったのも久々である。


一枚絵を多用した部分で苦しさも感じたが、全体的には非常に丁寧な作りを感じた。
昨年の『ときメモ』同様に「王道への挑戦」という姿勢も自分はかなり燃えさせた。
何だかんだで、バンプは積極的に取らせてもらったわけですからね。楽しかったです。