ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了・野村克也『あぁ、阪神タイガース−負ける理由、勝つ理由』

あぁ、阪神タイガース―負ける理由、勝つ理由 (角川oneテーマ21)


■ 野村“元”監督から見た阪神タイガースとは?
同社発行の『巨人軍論』で外部から見た巨人という組織を評した野村監督。
今作では実際に指揮を執られた経験もある阪神タイガースについてかく語りき。
野村監督の私見も含みながらも読みやすく、「組織論」として読んでも面白い。


本書の構成は、1・3章で阪神タイガースを慣習、歴史という側面から分析。
その間の2章では監督時代の失敗談から、チーム・組織としての阪神について、
そして、4章から最後にかけては星野監督以降のチームの変化等に触れている。


関東在住の巨人ファンという立場の自分が読んで興味深かったのは慣習の分析。
野村監督が選手・監督の経験から「ダメ虎」の要因について何点か挙げている。
簡単にまとめると、以下のことを言及している。

1.過剰報道と提灯記事で選手に勘違いをさせる関西のスポーツ新聞
2.選手間の内紛・派閥抗争といったお家騒動の歴史
3.補強に消極的なフロント、球団を収入源する親会社の体質
4.タニマチ的な扱い、巨人戦至上主義、待てないファンの風土

特に、関西マスコミに関しては最大の原因として、痛切に批判している。

関西に少しでも住んだことがある方ならおわかりだろうが、関西のスポーツ・
メディアは異常である。『報知』以外のどのスポーツ新聞の一面も、とにかく
阪神阪神阪神…”。まるで阪神以外のチームは存在していないようである。


したがって、阪神の選手だというだけでマスコミがこぞって取り上げてくれる。
主力選手だけでなく、まだ実力が伴っていない選手でさえ、スター選手並みに
扱われる。ほかのチームの中心選手など比べ物にならないくらい知名度も上が
る。当然、若い選手は「自分はスターなんだ」と勘違いすることになる。*1

ジャイアンツも御用メディアを抱えているが、それ以上に批判報道が多いだろう。
ここら辺はノムさんの主観が結構強いので、当方としても一概には支持できない。
ただ、私的にもタイガースの選手の知名度が関西で高いというのは納得できる。
それが過信、勝利への渇望の薄さに繋がり、野村野球の浸透の障害となったとか。


こうした部分でも組織における構成員のモチベーションの重要性を改めて感じる。
行政改革でも「首長だけがやる気で職員はやらされ感が蔓延している」なんて話は
事例調査でも耳にした。トップのビジョンの徹底と共有を計るべきかが問題となる。


野村監督が阪神時代の最大の敵は、ある意味で阪神という「組織」だったのかも。
野村さんが変えることが出来なかった組織の体質が星野監督でどう変わったのか?
そして、現在、今後の阪神についてまで。本当に幅広く、考え、述べられています。

*1:本書P20より