ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:『ブルーザー・ブロディ 私の、知的反逆児』

ブルーザー・ブロディ 私の、知的反逆児


■ そのレスラーは“インテリジェンス・モンスター”と呼ばれた
80年代を代表するレスラーであるブルーザー・ブロディの妻による手記と伝記。
残念ながら、彼の活躍した時代に物心をついたかという私は映像*1でしか知らない。


チェーンの音と咆哮がリングに響きわたる、ブロディは入場から観客を魅了する。
当初は、パフォーマンス、風貌からラフファイトだけのレスラーだと私は思った。
その推測は甘かった。彼の試合は場外戦を含め、完成度が非常に高い内容だった。


ブロディは観客を魅了させる術を熟知し、恵まれた体格を使って表現していた。
印象的だったのは作中でも取り扱われた83年のリック・フレアーとのNWA王座戦
試合は3本勝負でフレアーが時間切れ引き分け防衛だったが、著者はこう述懐する。

そして最も重要だったのは、この試合が人々の心に「もっと!」という欲望を
抱かせたことだろう。フレアー自身、最も記憶に残っている試合だと語る理由は、
素晴らしい観客のリアクションだった。(略)1時間にもおよんだ死闘から、観客
もまた現在のプロレスからは絶対に感じられない精神的な財産を得た。*2

同時代の彼の試合と比較しても、非常に重厚で素晴らしい構成の試合であった。
彼の研究熱心さ、試合の中で計算された部分を察することができると思われる。


■ リング外のブロディの顔とは?
さて、ブロディの「知的反逆児」たる所以はバックステージでの一面にもあるだろう。
彼はは契約やギャラに対して、非常に厳しく、プロモーターとの衝突が絶えなかった。
本書では“銭闘”内容が事細かに書かれており、こうした視点は新しいと私は感じた。
ギャラが良い*3日本を「ビジネスの防波堤」と語っていたことは印象に残った。


そして、もう一つの顔が素顔のフランク・グルーディッシュについて書かれる。
リングを降りて自宅に戻れば、彼は子供にとっての父親であり、妻にとっての夫だった。
こうした、オン・オフの使い分けをするレスラーは当時にしては非常に珍しいだろう。


素顔、優れたレスラーの顔、シビアなビジネスマンの顔を持つブロディを

「ブロディはマット界に属していたが、
俗に言う意味でのマット界で生きてなかったんだ」
*4

テリー・ファンクは語る。しかし、レスラーと言う立場を客観視できたことも大きい。


ブロディとグルーディッシュを使い分けたから、優秀なレスラーになったのか?
それに関しては確証はないが、私はそうした視点をありえると本書を通じて感じた。
ただ、確かなことは、契約も含め、彼がプロレスというビジネスに対してシビアであり、
彼なりのプロフェッショナリズムに基づいて行動していたということだと私は考える。


また、プロレスについて考えさせられる一冊となった。プロレスとはこんなにも深い。

*1:そんな私は、一昨年から見だしたG+『プロレス・クラシック』で彼の活躍を見続けている。

*2:P183−184より一部抜粋

*3:馬場さんの頃の全日本プロレスは外国人選手の給与が非常に待遇が良かったらしい

*4:P237より抜粋