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ボンクラライフ

アニメバンプ論・課題:『天保異聞妖奇士 あやかしあやし』

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■ 人は物語なしには生きていけない
先日、ようやく最終巻を見終わったのでリアル放映時は書いてなかったので総括。
「良い意味でも悪い意味でもBONESらしい」というのが、私の率直な感想である。


以前、岡田斗司夫氏が『BSアニメ夜話』で『カウボーイビバップ*1を取り上げた際に
「(渡辺信一郎監督は)綿密に作り上げた設定を全部ぶっつぶす』*2と評していたが、
逆を言えば、私はボンズ作品の特徴に「綿密な設定の積み重ね」を挙げられると思う。
実際、例外に漏れず、本作も設定から時代考証まで、非常に綿密に作り込まれている。


さて、いきなり私見となるが、本作『あやかしあやし』(以下『あやし』と表記)は
過去に放映されたボンズ作品の中でも特に取っつきづらい作品だったと考えている。
天保14年」という日本史に腕を覚えがある人にしかピンと来ないような時代設定、
40近い主人公、己の名に宿る「漢神(あやがみ)」といい、とことん渋すぎる(笑)


事実、會川昇氏の「今放映されているTVアニメとは違うものを目指したい」*3という
決意からも伺えるが「あやし」という「オリジナルの時代劇」作りへのこだわりを感じた。
同氏は「土6という人気の時間帯で時代劇、しかもオリジナルの題材を放送できたこと
だけでも十分成功といえる」*4と述べたが、たしかにそれは快挙とも言えるだろう。


では、私がこの『あやし』に惹かれた部分は何かと言えば「虚実の交差」と考えている。
たしかに、史実では「妖夷(ようい)」のような怪物も「蛮社改所」なる部署も存在しない。
だが、作中で語られた歌舞伎・吉原に代表される江戸の風俗や歴史上の人物達などは
史実にある事実である。そのフィクションとノンフィクションの絡み具合が魅力的だった。


これも冒頭で書いた「綿密な作り込み」と「オリジナルへのこだわり」の賜だろう。
オリジナリティの追求は大切だし、私はボンズのその姿勢は作品の相性はともかく好き。


また、DVD収録のOVA『奇士新曲』も世界観・コンセプトを受け継いだ作風だった。
内容も番外編にならず、残されていた課題やさらにディープな部分に突っ込んでいる。
何だかんだで『あやし』を見終えた視聴者には見て欲しい、宰蔵とか好きな人にも…。


「人は物語なしには生きていけない」という『幕間』のテロップが印象に残っていたが、
今後も私は「物語」を追い求めていきたいですね。

*1:制作はサンライズ、メンバーが後にボンズ創設。『ビバップ』はボンズの雛形的な作品

*2:BSアニメ夜話』第9弾(2007年9月27日放送)より

*3:DVD最終巻のブックレット『妖奇士特別解説書二』の錦織監督インタビューより

*4:同書、會川氏インタビューより