ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:柳澤健『1976年のアントニオ猪木』

1976年のアントニオ猪木


■ 発見、再確認、再発見
筆者は『Number』などで執筆経験があって、今作が単行本デビュー。
内容はアリ戦を含めた、猪木が1976年に行った4試合前後含めた検証。
読み終えて、初めて知ったこと、再確認したこと、再発見したことがあった。


知らなかったことは4試合の背景、ノンフィクションとは思えない内容。
英雄になれなかったルスカ、モハメド・アリの転機、韓国プロレス界の衰退、
パキスタンのペールワン一族の興隆など、今まで語られることの無かったこと。


再確認したこと、1976年の以降の猪木の狂乱とプロレス黄金時代の終焉。
総合格闘技の勃興となるUWF誕生、猪木の事業失敗、新日復活と猪木介入。
プロレスファンなら誰でも知ってるアウトライン、悲しきかな現在までの流れだ。


再発見したのは、筆者の語る「1976年の猪木の4試合」が与えたモノ。
76年で行われた4試合は、私達が観客側に格闘技とプロレスを曖昧にした。
それが「レスリングの匂いのするプロレス」ではない、真剣勝負が混じった試合。


プロレスという存在を不安定なモノにする契機となった1976年。
非常に筆者の視点としては新しいもので、証言集としても貴重な文献かと。
少し前は暴露本が流行っていたけど、こうした形で昇華してくれればいいな。