ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

読了:北村薫『リセット』


リセット (新潮文庫)


■ 交差する二つの思い
主人公・真澄は神戸のお嬢様の多い女学校に入り、楽しい日々を送る。
彼女は、そうした時に友人の親戚・修一との交流を通して特別な思いを抱く。
やがて戦争が始まり、真澄も飛行機の部品を製造する工場で働き始めることに。
戦争も末期になってきた頃、彼女は再び修一と出会うが、それが最後の別れとなる。
戦争後、彼女は修一と面影の似た村上和彦という小学生に出会うのだが…。


■読み終わって
本作は3部構成で、一部は真澄と二部は年老いた和彦が子供時代の回想が中心。
場面や登場人物が変わり、連続性を見いだせなかったが、次第に連続性を見出す。
人と時間の関係を描いてきた三部作、今回も独特の世界観で魅せてくれたと思う。


著者の北村氏は男性だが、こうも女性の切なる思いを綴れるものなのだろうか?
『ターン』同様、私は読み終わったら寂しさと切なさで胸がいっぱいになった。
また『スキップ』を読んだ時に感じたが、描写が妙にノスタルジーを演出させた。
著者自らが経験した戦後昭和のイメージを表現しているのか、場面に引き込まれた。


三部作読了。世界観的には『ターン』が一番、物語では本書が好きかな。
タイムリーブ的な要素を含んでいるから、ある意味でSFとも捉えられるか?
個人的には3作とも外れはなかったと思うので、もっと早く読んでおけばなぁ。