ぶらり人生途中下車の旅

ボンクラライフ

【アドベントカレンダー】OCHA NORMAからスポーツ・プロモーションを考え直してみたぜ

本記事は「川崎ブレイブサンダース ファミリー Advent Calendar 2022 - Adventar」の第22日目に寄稿するものです。昨日(12月21日)は、宮井さやかさんの「Home Sweet Home」でした。ビジター観戦を経験すればするほど感じるホームの「我が家」感、とてもわかります。是非×2ご覧ください。

以下、本記事本文は平時と同様に「である」調で書かせていただきます。

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筆者はスポーツ観戦者であると同時に、アイドルイベント足を運ぶアイドルファンである。本記事では、双方の視点に立ち、川崎ブレイブサンダースで実施されたアイドルとのコラボ事例を踏まえ、プロモーションのあり方を考察できればと思う。

1. 【事例】:ハーフタイムショーデビューだぜ

www.barks.jp

2022年10月21日、シーホース三河戦にハロー!プロジェクト(以降「ハロプロ」と書く)のアイドルグループ 『OCHA NORMA (オチャノーマ) 』が来場した。

ブレサンファミリーならばご存じだと思うが、川崎の担当者に熱心なアイドルファンがいるのか、数年前から隙あらばアイドルをゲストブッキングしている。特にハロプロが好き(あくまで筆者の推測である)なのか、BEYOOOOONDS、あるいはアンジュルム上國料萌衣さんも来場した実績がある。

同じアイドルファンとして熱い想いは汲み取れるが、スポーツ観戦者としては違和感を覚える部分もある。理由はシンプルで、ゲストとマッチデーに脈絡が無いからである。厳しいことを言えば、趣向とプロモーションのバランスが取れていないと思う。

2.【検証】「セカンドアタック」不発から考える【+】と【×】

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忖度無しで言えば、OCHA NORMAの一般的な知名度は正直低い。熱心なアイドルファンの間でも、ようやく名前が知られてきた程度のレベルだと思う。そのような現況を踏まえれば、ハーフタイムイベント起用は抜擢とも言える好待遇だろう。

一方、ハーフタイムイベントの模様は、テレビ東京で放送された『ハロドリ。』(2022年11月7日放送分)に取り上げられている。リハーサルの模様からハーフタイムイベント、試合の応援、そしてメンバーとロウルとの交流の模様を時間を割いて紹介していた。視聴者層も限られる番組であるが、ネット配信(TVer)もある地上波番組で取り上げたことをクラブ側から一切発信が無かったのは勿体なかった。

ameblo.jp

また、メンバー最年少の筒井澪心(つついろこ)さんは、昨年12月のオーディションに合格する直前までバスケットを続けていた経験者(ポジションはガード)だ。本年9月に開催されたNBAジャパンゲームも生観戦したこともあり、とどろきアリーナの試合観戦も非常に楽しんだそうで、メンバーに熱心に解説したそうだ。ファンの視点に立つと、こうした繋がりを掘り下げてあげても良かったとも考える。

このように、イベント起用をベースとした拡張性も想定されるが、試合に敗戦したことも影響しているのか、試合開催後は何事も無かったかのように取り上げていない。やはり、こうした対応を含めると、集客プロモを「足し算」で考えているのではないか。

news.yahoo.co.jp

イベントに参加した縁でファンになってくれるという事例は多々ある。例えば、(筆者も記事を読んで笑ってしまったのだが)数年前の川崎フロンターレのファン感謝祭での余興が契機でハーフタイムイベントに参加してくださったDJ KOOさんが、W杯関係の報道は『芸能界きってのフロンターレ通(原文ママ)』として登場した(汗)

極端な事例であるが、小さな接点・コラボがファン獲得の入口となり、発信力を付与する存在となったのは「掛け算」のプロモ戦略が功を奏したと言える。

3.【考察】観客に提供するメインディッシュは何か?

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東芝からDeNAに体制変更後、地域密着を押し出したドメスティックなスタイルから、地域性を取り込みながらもスタイリッシュに仕上げたブランドイメージを形成するスタイル変化を取り上げてきた。

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ブランドイメージ形成の過程で、バスケに無関心だった層をアリーナに呼ぼうとする施策も積極的に行っている。アイドルに限らず、有名人やインフルエンサーをイベント等に呼ぶといったインフルエンサーマーケティングに近い取組も積極的に行っている。このインパクトは凄まじく、知名度や集客獲得に繋げており、成功事例と言えるだろう。

一方、こうしたアプローチは一過性の影響度、あるいは単発的な集客には繋がるかもしれないが、リーチした人々をファンに変換できるかが重要だろう。先ほどの事例紹介にも繋がるが、イベント後のリバウンド、セカンドアタックを続けなければならない。

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そして、スポーツ興行のメインディッシュは、スタジアム・アリーナで繰り広げられる公式戦=試合であることを忘れてはならない。国内のトップリーグに位置するチームは、競技レベルを維持・成長するための【牽引者】であると同時に、競技を「布教」する立場にある【伝道師】の役割を果たす。プロアマ関係なく、その役割が機能するか否かで競技力・競技人気を左右するものだろう。

たしかに、プロスポーツにおける結果とは【試合の勝利】と【満員の観客】だと考えるが、全ては試合終了後に、その競技の理解者・ファンを1人でも多く作ることが本当の目的であることを忘れてはならない。スポーツビジネスの発展ともに、より多く稼ぐ話は盛んに取り上げられているが、より多くの人たちに競技の魅力を伝えるための議論も同じくらい活発であってほしいと考えている。

4.【私見】脱体育・部活動の雰囲気作りへの期待

川崎の取組に対してネガティブな意見を述べてきたが、逆に期待している部分もある。それは、エンタテイメント性を強調することで、スポーツ観戦に対するハードルを押し下げること、さらに運動の得意・不得意に関係なくスポーツに対する関心を寄せてくれる可能性はあると考えているからだ。

どうしても、日本国内の競技会・公式戦は、学校教育の中にある体育、あるいは運動部の延長線にあることが多い。そこに付随する応援文化であったり、会場の雰囲気も寄せられている。こうした純度の高い真剣勝負の雰囲気が観客に伝染し、見ごたえのある試合を生み出す土壌になることも理解しているが、そうした雰囲気が苦手な人は結構多いと思う。

とどろきアリーナが作り出すエンタテイメント空間は、そうした人々も足を運べるような敷居の高さを提供してくれると思う。プロバスケットボールの市場規模を考えれば、もっと多くの人々に足を運んでもらえるようになる空間作りを目指して欲しいと思う。

さいごに:お茶の間デビューだぜ!

バスケに限らず、スポーツ興行がライブエンタテイメント、あるいはファンビジネスとして成長することは非常に良いことだと思う。一方、競技である側面からも批評、あるいは批判なるものも出てくる。これ自体は普通の現象ではあるが、圧倒的肯定をマインドとするファン層との相性は良くない。ファンも含めて、その最適解を模索している最中だと思われる。

そして、OCHA NORMAは、イベント参加後の11月15日に日本レコード大賞の新人賞を受賞した。その結果、12月30日(金)放送される同番組にも出演し、とどろきアリーナでパフォーマンスした『恋のクラウチングスタート』等をテレビで披露する予定だ。マッチデーと被っているが、ブレサンファミリーの皆様も最優秀新人賞を争う彼女たちの雄姿を見守ってほしい。

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最後まで読んでくださってありがとうございました。

23日目はasamin_sportさんがご執筆の予定です。現時点では内容はベールに包まれておりますが、どのような記事になるか楽しみです。こちらも是非ご覧ください。

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【観戦記】TOKYO IDOL FESTIVAL 2022『今日は素晴らしい今日だ』

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8月5日から7日までの3日間、お台場で開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL 2022」(以下「TIF」という)に足を運ぶ。

オンライン開催となった2020年を含め、今年で13回目の開催となったアイドルの祭典。お台場開催となった2011年が初参加の筆者は節目となる通算10度目の参加だった。個人的に久々の3日間参加に加えて、コロナ禍に開催された大規模イベントの参加ということもあったので本記事において個人的な総括をまとめていきたいと思う。

1. ボーナスステージの恩恵

3年ぶりの8月開催となったTIF。開催直前の7月31日から8月3日まで4日連続で猛暑日を記録する等、筆者はタイテよりも熱中症対策で頭がいっぱいだった。

図表1-1:東京の気温・日照時間(7月31日~8月8日)*1

しかし、表1-1のとおり、降雨しない程度に天候が崩れた5・6日は平均気温がグッと下がるボーナスステージに突入。もちろん、蒸し暑さは感じたものの、直射日光を浴びなかったことで身体への負荷は段違いだった。最終日の7日は天候も回復傾向を見せて暑さを感じたが、平均気温は27℃程度とマシな方だった。

図表1-2:8月開催時における東京の平均気温の比較(2017・18・22年)*2

「灼熱地獄からの生存戦略」から解放された2日目までは比較的快適に過ごすことができた。前週ならば酷暑、翌週ならば台風接近中だったことを踏まえると、本当に幸運だったと思う*3。アイドルたちの日頃の行いが良かったということにしよう(強引)

2.開催フォーマット変更による「TIFの夏フェス化」

こうした天候面の幸運に恵まれた本年のTIFであるが、開催フォーマット変更による変更点も大きな影響を感じた。

図表2-1:TIF2022の会場マップ*4

昨年10月開催のTIF2021に続き、コロナ禍の有観客開催となった本年もチケット購入者による有料ステージのみで構成された。一方、前年から「DREAM STAGE」「ENJOY STADIUM」が追加されたため、2019年以前のステージ数を確保することができた。

図表2-2:TIFのステージ数の推移(2016年~2022年)*5

従前の無料+有料を混在した開催方式は気軽にステージを見れること、普段は見ないユニットを見る機会を作れることから、アイドルに関心がある幅広い層の来場に繋がり、TIFの発展に寄与していたと考えることができる。しかし、今般の情勢下を踏まえると、現行の開催形式がベターな選択と筆者は考える。

そう考える理由は、昨夏のフジロック、ロック・イン・ジャパン等の大型音楽フェスを巡る騒動に代表されるように、大規模イベントに対する一般の視線が一層厳しい目で見られた経緯を知るからだ。

2021年の野外音楽イベントを巡る動向を補論に追記した『増補版 夏フェス革命 音楽が変わる、社会が変わる 』(2022年・blueprint)において著者のレジー氏が指摘したように一過性のものながら「コロナ禍において、フェスは2020年時点での「開催されないもの」から2021年には「広くヘイトを集めるもの」へと位置づけを変えた」*6であった事実は忘れてはならない。

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日本を代表する大規模フェスと比較すれば圧倒的に規模が小さいTIFであっても、数々の問題が起こってきた歴史があった。アイドルライブ自体が一般的な音楽イベントと比較しても偏見なりヘイトを集めやすい事象を踏まえれば、仮に過去と同様の問題が起こればイベント存続が危ぶまれる致命傷にもなりかねない。それを防ぐためには、観客をコントロールする仕組みを構築する必要が求められるので、このような形式を採用せざるを得ないと考えられる。

結果論であるが、主催者発表でも、過去最多来場者となった2019年の来場者数約88,000人*7に対し、本年は約30,000人*8ということで半数以下に減っている。コロナ第7波による感染拡大に伴う自粛等も関連していると思われるが、開催フォーマットの変更による流動性の低下による影響も大きいだろう。

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一方、観客視点で述べれば、フォーマット変更は悪いことばかりではなかった。区画内のスペースを一定規模確保することで、ゆとりが生まれ、参加者がそれぞれの楽しみ方ができるようになった。また、後述する一定層を除けば、平時よりライブハウスに足を運んでいる観客が多いため、マスク着用厳守・ジャンプ禁止・声出し禁止等の厳格なルールに対する遵守されており、例年には無い当事者意識の高さを感じ取れた。

正直、筆者が鑑賞した範囲でも危うい場面も散見されたが、絵恋ちゃんが湾岸スタジオ入口で追い返されたのが主要事件?に取り上げられるくらいには平和だったと思う。(あくまで個人の感想です)

3.求められる「2つのTIF」問題への対応

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3日間のTIFを自分なりに楽しんだ筆者だが、逆に「HOT STAGE」に割り当てられた坂道等の大手グループだけを目当てに行列に並んだだけでTIFを終えた人たちもいる。

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この手の問題は以前から指摘されていたが、本年は座席配置で入場者管理も厳格だったことから、例年以上に入場制限が厳しかったことが考えられる。

例えば、来日したPSGの公開練習に4,500円払って見に行く人も、ユースの試合を見るために首都圏から青森山田高校まで遠征する人も、部外者から見れば「サッカーファン」に雑に括られてしまう。同じように、日向坂46の立つステージだけを見るためにチケットを購入して長時間並ぶ人も、筆者のように楽曲等が気になったユニットを見るために各エリアを歩きまわる人も「アイドルヲタク」と言われる。

何が言いたいのかと言えば、それぞれがTIFに求めるものは全く異なるのである。特に最終日は顕著であったが、HOT STAGE周りとその他ステージの「2つのTIF」が同時開催されているような感覚に陥ることもある。DAY2(8月6日)、自身のプロデュースユニットによる「HOT STAGE」を見れなかったファンが多数発生した事象を受けて指原さんは下記のコメントを述べている。

指原さんが言及した「野外の大きなステージ」とは、フジテレビのお台場冒険王で設置したステージを活用*9したものであり、TIF独自で設置した事例は無い*10

ただし、今回のようなトラブルが続き、大手グループに出場依頼を続けるのであれば、今回設置した2つの野外ステージよりも更に規模が大きい野外ステージを設置するしかないだろう。あるいは5日に開催された「メインステージ争奪LIVE 決勝戦」のように抽選整理券方式を採用することも考えられる。チケット代を支払った人が一方的に損を被らず、不要なヘイトを溜めない対応が求められる。

理想を言えば、列に長時間並ぶ時間を他のステージを見る時間に費やしてもらい、新しい発見を契機に繋げてほしいと思う。大手グループのブランドに親しみを持つ層ほど、こうしたフィールドを掘り下げる難しさはあると思うが、何が起こるかわからないというのは多くのアイドルファンなら理解してもらえることだろう。

4. 異なる文脈の交差点で垣間見た「鼓動」と「熱波」

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ここまでイベント全般に関する総論を述べてきたが、筆者が個人的に印象に残ったステージ等も取り上げたいと思う。ご当地アイドルをフォローしてきた筆者としては、今回のTIFで久々に地域を拠点に活動するアイドルたちの活躍が光ったことが嬉しかった。

特に「北海道から歴史を変える」を合言葉にメイン争奪LIVEで見事に優勝を果たしたタイトル未定さんは、間違いなくTIF2022のメインキャストに上り詰めた。北海道から全国に足を運んで精力的にライブを行った4人組ユニットは、アイドル戦国時代下に頭角を現した2010年代前半のロコドルたちの熱量を思い出させた。

都内ライブハウスで開催される対バンライブで実力・実績を積み上げたsituation、Ringwanderung、INUWASHI等とハイレベルなライブを展開した「メインステージ争奪LIVE」には抜群の物語性を感じたが、同日に行われたTIF初ステージとなるDREAM STAGE、SMILE GARDENのライブも見る人の心を惹きつける気持ちの引力を感じた。

彼女たちの代表曲である『鼓動』が好きになった。コール&レスポンス、声出しができない現在のライブシーンにおいて、彼女たちの想いの込められた「届けたい歌があるから」という歌詞が胸に響く。気持ちが通じあえば、こんな熱いステージを作れるのかと感銘を受けた。彼女たちのステージをTIFで見れて本当に良かったと思う。

静岡からやってきたアイドルユニット・fishbowlも大きな注目を集めた。素晴らしい楽曲製作を通じて「楽曲派」の支持を集めてきたヤマモトショウ氏が手がけるアイドルユニットとしてお披露目から1曲単位に注目されてきたが、本年に入って静岡県外ライブも解禁されたことで実際のライブで見る機会を得た者も多いだろう(筆者含)

筆者は、前週(7月31日)に清水で開催されたワンマンライブ『オランダシシガシラ』も鑑賞していたが、まだまだスキル等に発展途上の部分であると感じるものの「ライブをするのが楽しい」という気持ちを爆発させて歌って踊るエナジーに驚かされた。

都会のライブハウスとは異なる時間軸・環境で育まれたからこそ描ける成長曲線があると感じただけに、初めてのTIFを体験した刺激を取り込んでほしいと思う。

この他、漫画家・うすた京介氏が漫画担当を務める京都発・きのホ。が初参加する等、ご当地アイドルに新しい風が吹いていることを実感させられる。この他、筆者が知りうる範囲でも相当数の新たなアイドルが各地で活動を続けている。全国選抜ライブという道筋はあるものの、もう少し門戸を広げていく流れも出てくると面白いかもしれない。

おわりに:「君の夢」が叶う場所であってほしい

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本記事の最後に、自分の推しユニットの話をしたいと思う。自分が応援しているダークポップダンスアイドルユニット・クロスノエシスがTIFに初出場した。

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発表後、メンバーに感想を聞いたところ「やっと」「長かった」というコメントが多かった。クロスノエシスは結成から3年超、各メンバーのキャリアは更に年数を重ねていることを知るだけに到達できたことに対する思いがシンプルに伝わった。

「アイドル」と名乗る者が誰しも参加できる場所というわけでは無い。過去にフォローしてきたユニットでも、この舞台に立つ夢が叶わなかった者、大変な予選を勝ち抜いて上がった者の記憶は今も胸に残っており、現在進行形でTIFを目指している人たちがいることも知っている。

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クロスノエシスのTIF最初のステージとなったのは天空の舞台・SKY STAGE。最初の曲にチョイスされたのは長めのイントロに合わせ、舞台袖からメンバーが1人ずつ入ってくる『翼より』だった。

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2日目まではあまり見られなかった青空が広がる中で披露された力強くも美しい舞は「晴れ舞台」という言葉に相応しい光景だった。

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刹那性という言葉は好きではないが、現在「アイドル」と名乗る者が10年後もアイドルとして存続する可能性は極めて低い。更に述べれば、我々と同じように社会人として日常を過ごす者の割合の方が圧倒的多い。

一度しかない人生の貴重な時間をステージに立つという選択をした人たちにとって、TIFは夢が叶う場所であってほしい。クロスノエシスのステージを見終えて、その気持ちは強くなった。

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来年も、お台場でお会いしましょう。

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*1:気象庁ウェブサイト『各種データ・資料』参照して筆者作成(最終閲覧日:2022年8月13日)

*2:気象庁ウェブサイト『各種データ・資料』参照して筆者作成。2020年および2021年は10月開催のため省略(最終閲覧日:2022年8月13日)

*3:実際、本年から千葉開催となった「ロック・イン・ジャパン2022」最終日は台風の影響で開催中止となった

*4:TIF2022 公式ウェブサイト(最終閲覧日:2022年8月13日)

*5:TIFの公式ウェブサイトを参照して筆者作成(最終閲覧日:2022年8月13日)

*6:272-273頁

*7:http://www.idolfes.com/2019/tif_news/detail.html?p=tif_news20190804_01 (最終閲覧日:2022年8月13日)

*8:https://official.idolfes.com/s/tif2022/news/detail/10177?ima=1009 (最終閲覧日:2022年8月13日)

*9:2014・15・17年の3回利用。ZEPP DIVERCITYは「HEAT GARAGE」の名称で利用された

*10:2016年の「SHIP STAGE」(船の科学館の駐車場)は、セカンドステージに相当する規模のステージを設置した実績はある

【観戦休題】「#タワレイクはMAIちゃん激推し 」からCDショップの立ち位置を考える

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4月16日、ダークポップダンスアイドルユニット・クロスノエシスのイベントでイオンレイクタウンに足を運ぶ。

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イオンレイクタウンに初めて足を運んだが、複数の施設が連結して形成されるショッピングモールの規模感には驚かされた。

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中学時代の同級生が吉川市に住んでおり、近場にあるイオンレイクタウンの利便性を何度か聞いていたが、本当に何でもある印象。

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イベント会場は奥にあるレイクイオンモールmoriの広場に設けられたステージ。後述するが、普段はイベントを開催する場所ではないらしい。

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イベント前に、リリイベを実質誘致し、筆者をレイクタウンに引き寄せたタワーレコードイオンレイクタウン店(以下「タワレイク」と言う)を訪問。

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タワレイクは、実際にイオンレイクタウンをよく利用していたメンバーのMAIさん(筆者の推しメンでもある)を大フューチャー。

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他の推し店舗にもある映像&等身大ポップだけに留まらず、専用ハッシュタグ「#タワレイクはMAIちゃん激推し」を設け、陳列スペースもギッシリと猛アピール。

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最終的にはタワレイク独自の特典としてオリジナルポスターを制作。その全貌が明らかになった筆者の感想は下記のとおりである。

正直、衣装展示を行なっている渋谷店に負けない、全国ナンバーワンの熱量でクロノスのイベント誘致したタワレイク。そして、レイクタウンのイベント情報を調べるうちに、とんでもない事実に気づいてしまったのである。

同日、ほぼ同時間帯に瑛人さんの発売記念イベントやってる・・・。

後日、調べてみたところ、タワレイクで開催する発売記念イベントは通常「木の広場」で、クロノスのイベント会場となった噴水広場は開催実績が皆無だった(記録のレベルでは2014年以来8年ぶりの開催のようだ)。つまり、何気ないリリイベは、推し店舗の剛腕で実現した奇跡のイベントだったのである。(多分)

そうした推し店舗の努力で実現したイベントであるが、人通りの多いエリアで行われたミニライブは盛況だった。

CD購入者=優先エリアで観覧するファンだけではなく、足を止めて眺めるカップル、メンバーが歌い踊るステージを凝視する少女、珍しげに見つめる老夫婦等、久々にライブ鑑賞を通じて色々な人の目を感じた。

しばらく忘れていたリリースイベントの空気感がそこにはあった。熱心に見るファンの立ち位置が浮きがちで、普段だと恥ずかしく感じるものだが、今日に限っては悪くない気分だった。

地元でイベントを開催できたことに対するMAIさんの喜びの言葉、笑顔を見聞きすることができて本当に良かった。ありがとうタワレイク、タワレイクに栄光あれ。。。

◯ 配信・サブスク時代のCDショップ

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フィジカルから音楽配信、近年はYouTubeチャンネルや定額配信サービス(サブスク)が普及した現在、タワーレコードをはじめとするCDショップは難しい立場にあると思う。

今回、予約〜リリイベ期間で平時より多くタワレコに足を運ぶ機会があり、改めて各店舗のフロアを回る機会があったが、様々な客層がいることに気づかされる。

例えば、アーティストの衣装やパネルのような企画展示は非常に盛況だ。タワレイクの翌日に足を運んだ渋谷店では公演日と併せて足を運んだファンを中心に盛り上がりを見せていた。

また、店舗を挙げた大規模なものだけでなく、自分が好きなジャンル等の販売スペースに足を運んで写真を撮ったり、友達同士で盛り上がる光景をよく見かけるように、ショップ巡り=推し活の一環となっているようだ。

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その意味では、今年3月に足を運んだタワーレコード静岡店では、地元・静岡を活動拠点とするfishbowlの特設コーナーなんかも、地元ファンだけでなく筆者のような遠征民にとっては巡礼スポットとして嬉しい企画だ。

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このように、CDショップがファンとアーティストを繋ぐ役割を果たすという流れは今後も生存戦略として加速するしていくのではないか。タワレイクが見せた熱量を通じて、1つの可能性を感じたリリースイベントであった。

◯ 音楽を知る場としてのCDショップ

ここまで書いて、本記事を締めても良かったのであるが、同時に活況あるジャンルに力を入れることをCDショップの生存戦略として前面に押し出すことに危うさを感じている。やはり、CDショップは、書籍であれば本屋、映像作品であればレンタルビデオ店のように、単純に商品を購入するだけではなく、店内を回り、物色することで新たな作品との出会いや発見を与えてくれる場だと考えている。

たしかに、ウェブショップが発達し、近年では動画コンテンツでの紹介・レビューも増えていることで、リアル店舗の位置づけは不透明になっているが、個人的には店舗に足を運ぶことで、ふいに目に入ったり、手に取った商品が気になり、視聴して購入する契機を得る。必然ではなく、偶然がそこにあることをアピールしても良いのではないか。

丁度、リリイベ前の時間を利用して渋谷店7階のJAZZコーナーでじっくり視聴する機会があったので何枚も聞いて、気に入ったものを3枚ほど購入した。特にコーナー内で大きく取り上げていたKyoto Jazz Sextetの新譜は鳥肌が立つほど良かった。リリイベで同じCDを購入していた筆者が最終日に買ったCDはこれだった。

タワレコ渋谷店も長く足を運んでいるが、洋書を中心とする書籍コーナーは縮小し、クラシック・JAZZといったジャンル音楽のフロア統合化が進んだ。そうした状況を嘆くのは簡単なのだが、こうした売り場が持つ魅力をユーザーも含めて大切にしていくことも大事かもしれない。音楽との様々な出会いの場、学びの場を提供してくれる文化資本としてのCDショップは生きながらえてほしい。

そんなことを考えながら、リリースイベント週を駆け抜けた。

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【観戦休題】サッカー観戦者がクロスノエシスの魅力をサッカー戦術風に考えてみた

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最近、観戦記と併せてアイドルに関する記事を再び書くようになったので、今回は筆者が足を運んでいるアイドルユニット・クロスノエシスを独自の視点で紹介できればと思う。

1.【前提】ダークポップダンスアイドルユニット・クロスノエシスとは?

クロスノエシス(以下「クロノス」という)は「ダークでダンサブルなサウンド、華やかで力強いダンスでステージを支配する」*1ことを意味する『ダークポップダンスアイドルユニット』を標榜する女性アイドルユニットである。

アイドルに限らず、観客が出来るリアクションが限られる今般のライブシーンでは、観客にじっくり見て聞くことが大半であることから、クロノスのようなパフォーマンススタイルも受け入れやすくなっていると思う。

2.【仮説】クロノスの魅力=フォーメーションの可変性?

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筆者がクロノスの出演ライブに頻繁に足を運ぶようになったのは、2021年12月21日にSpotify O-EASTで開催された4th oneman live『blank』の発表後ということで、まだまだファンとしては新参者である。

【図1】クロスノエシス『インカネーション』における【台形】⇒【斜線】の動き

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彼女たちのライブを継続的にフォローするようになって気になったことがある。それは、曲中で展開される配置=フォーメーションのパターンが非常に多いことだ。直列(縦・横)、斜線、V字型、五角形、円等、彼女たちは数分間で可変を繰り返すのである。それなりにアイドルライブを見てきた筆者であるが、クロノスのように形状変化に特化したユニットはあまり記憶に無かった。

本稿では、クロノスのパフォーマンス構造を筆者なりの視点で検証を行い、彼女たちのライブの魅力を掘り下げていきたい。ただし、素人の筆者が技術的な検証を行うのは無理があるため、検証は「パフォーマンスの特徴」と「フォーメーション構造」に絞った内容であることを最初に述べておきたい。

3.【整理】クロスノエシスの「パフォーマンスモデル」を作ってみる

まず、検証する前に、クロノスを構成する要素を整理しておきたいと思う。そこで、サッカーにおけるゲームモデルの考え方を参考に【図2】のようにクロノスのライブパフォーマンスに関するモデルを作成してみた。本稿においては『パフォーマンスモデル』と仮称して説明することとした。

【図2】クロスノエシスのパフォーマンスモデル

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冒頭に書いたように、クロノスはコンセプトに「ダークポップダンスアイドルユニット」を掲げている。この点は、大きな転換が無い限り不変の部分だろう。

次に、現在の彼女たちのステージ=主戦場は都内を中心とするライブハウスと位置付けられる。現場レベルで様々なアイドルのライブを見慣れた観客層が中心となることから、ステージ上で行われるライブパフォーマンスが比較・評価される環境でコンセプトを体現する必要がある。

コンセプトを実現する手法として「ダークでダンサブルなサウンド」「華やかで力強いダンス」を採用し、パフォーマンスを通じて「ステージを支配する」ことを目標としているものと考えられる。

このような整理を通じて考えられることは、単純に「アイドル」といっても、構成要素の違いで特徴や魅力は大きく異なるということである。筆者のようなライブ鑑賞者の好みも、各構成要素の中から、どの部分を重要視するかで変わってくる。筆者がクロノスにハマったのも、パフォーマンスにおいて「ステージを支配する」ことを目標とする高い志に惹かれたところも大きいだろう。

4.【検証】ステージを支配するための特徴・原則

パフォーマンスモデルで整理した上で、ユニットが掲げるビジョン、目標とするライブを実現するため、どのようなアプローチを行っているのかについて考察を重ねた。彼女たちの特徴として以下の4点を取り上げたいと思う。

(1)ダークなサウンドの重みを活かす力強いボーカル

(2)サウンドと歌詞を通じて拡張する楽曲の世界観

(2)各メンバーは、曲中の場面ごとの「正しい立ち位置」を把握し、逆算して動く。

(3)複雑なフォーメーション変化は「横幅の伸縮性」+「ポジションチェンジ」

(1)については、楽曲と歌唱に関する部分である。クロノスの楽曲は「ダーク」=暗さを表現する低音をベースにしつつ、ダンスパフォーマンスとも相性も良いポップなサウンドに仕上げられている。

例えば、活動初期に発表された『corss』という曲は、こうしたアプローチを色濃く表現したものと考えることができる。「重みを感じつつ、それでいて跳ねたサウンド」というのは言葉にすると矛盾するようにも感じるが、絶妙な仕上がりを見せている。

こうしたサウンドを歌い上げるため、各メンバーはソロパートは強く歌うようにしている。もちろん単に大声を出せばよいわけではなく、音程を守って強く歌う必要がある。素人ながらスタジアムで応援歌を歌ってきた筆者も、思い当たる節が多々ある(汗)

次に(2)として、力強いボーカルで歌唱を牽引する立場でもあり、作詞を手がけるAMEBAさんが綴る世界観に触れておきたい。クロノスの楽曲では、サウンドに併せるように「心の中にある闇」「生と死」といった重いテーマも取扱っている*2

AMEBAさんの作詞曲で興味深かったのは、『光芒』『幻日』という複数の楽曲で1つのテーマを描くことで物語に拡張性を持たせる試みを行ったことだ。双方の曲には「僕」という主人公がいるのであるが、『光芒』で「僕」が亡くなった「君」に記憶の中で再会するというものだが、『幻日』では「僕」と「君」が逆の立場になっている。*3

さらに、12月に開催した4thワンマンライブでは上記2曲の母体となる『幻光』という楽曲を披露している。3曲で物語性を共有するという発想も珍しいが、サウンドも既存2曲をマッシュアップさせたような仕様とする。3曲を繋げて披露したワンマンでは脳内で大いに混乱した(汗)筆者としては、こうした世界観も彼女たちの構成要素を補強するものであり、大きな魅力だと考えている。

(3)および(4)は、仮説でも取り上げたダンスパフォーマンスの部分のため、公式で取り上げたダンス配信動画を用いて書いていこうと思う。

クロノスのフォーメーションは、変化を円滑に機能させるため、立ち位置=ポジショニングの原則がかなり徹底されている。例えば、下記の図3のように、正面から見ると一列に並んでいる見えるが、よく見ると縦横をジグザグに配置している。

【図3】クロスノエシス『インカネーション』冒頭におけるメンバーの立ち位置

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各メンバーは曲中のステージ上の立ち位置を把握し、曲中に移動を繰り返す。「人」基準に動くよりは、曲中における「場所」を重視している。

若干強引かもしれないが、こうした原則は、ピッチ上の各選手は局面ごとの「正しい立ち位置」を理解し、試合中の判断・動きを正確かつ素早くすることに繋げるメソッドである「ポジショナルプレー」の理論に通ずるところがある。

【図4】クロスノエシス『インカネーション』での動き(動画:0:35~0:42)

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次に、筆者が注目していた複雑なフォーメーションの可変性であるが、この点においても立ち位置の場所が重要なポイントだと思われる。例えば、上記【図4】の可変の流れを見ると、真横のスライド、縦の前進・後退といった直線的な動きを組合せ、各メンバーが被ることなく円滑に実施できるように設計している。

また、こうした立ち位置の移動にも曲によって工夫が凝らされており、短時間で細かな可変を繰り返すときはフォーメーションの横幅をグッと狭め、中央に集積した配置を取ることもある。

【図5】クロスノエシス『VENOM』のV字型⇒円旋回の流れ(動画:冒頭~0:25)

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ライブハウスのステージには、立ち位置を補助する目印はあるが、可変が連続する時は目印と目印の間にある中間スペースに立たせ、密集した状態で移動するように設計している。場面に応じて横幅を意図的に伸縮させるのも、クロノスが採用するパフォーマンスモデルの大きなポイントと言えるだろう。

一方、大半の配置転換では、次の場所に向かう導線=ルートが確保されているが、どうしても次に移動する位置が離れており、明確な導線が確保されてないケースもある。この時は、メンバー間のタイミングと意思疎通といった部分が必要になる。どれだけシステマチックに機能する構成を設計しても、最終的にはステージ上のメンバーの技術・連携が重要なことには変わりがない。

5.【私論】魅力的なライブを作るための「精度」と「強度」

先ほど触れたポジショナルプレーの話に戻ると、各選手の理解、ポジショニングの原則が浸透すると、ピッチ上のプレーの再現性を高めることができると言われている。結果としてプレーの高い再現性は「精度」と「強度」を引き上げる手助けとなり、ピッチ上のクオリティ担保に貢献することとなる。

私見であるが、アイドルライブにも似たことを言えると思う。たしかに、同じステージ・プログラムだったとしても全く同じライブは存在しない。一方、クオリティの高いライブに定評があるユニットはライブパフォーマンスの再現性が高い。

夏以降のクロノスはライブ数という経験値に加えて、ユニット内で楽曲を構成する様々な部分に対する理解を深め、今回の検証で取り上げたような個々の技術、集団の連携を積み上げたことでユニット内の「精度」と「強度」を高められたと思う。

売り方はともかく、ステージ上におけるアイドルユニット育成の必勝メソッド、虎の巻はありそうで無いと思うが、やはり成長の上澄み液として新曲なりワンマンといった刺激を継ぎ足すことが王道であることが検証を通じて再認識することができた。

今回のような検証方法は、クロノスに限らず、同じ事務所のクマリデパートさんであったり、フォーメーションダンスを実装するアイドルユニットの大半で活用可能な見方だと思う。そして、ユニットの人数構成はもちろん、フォーメーション(例:横一列、2列配置)を含めた配置・変化の原則も指導者によって多種多様だ。

アイドルライブは本能のままに楽しむものだと思うが、理屈っぽい見方するとライブの見方も変わってくると思う。かく言う筆者もクロノスの検証を行った結果、ライブを見るクセが強くなった(汗)

本記事がクロノスというユニットの存在と、推しアイドルの楽曲・パフォーマンスの魅力を言語化する手助けになれば幸いである。最後に、特典会において筆者の細かな質問に丁寧に答えてくれたAMEBAさんに感謝の言葉を伝えたい。

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*1:クロスノエシス » ABOUT

*2:ダークポップという音楽ジャンルは明確に定義されていないが、過去に代表格として取り上げられたビリー・アイリッシュの楽曲のテーマも心の闇に寄り添うような楽曲は少なくない。

*3:『BRODY』2022年2月号(白夜書房)97頁より

【鑑賞記】俺のダブライズ

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1月17日、翌日の自分に仕事を託して新宿LOFTで開催された『俺のダブライズ』(以下「オレダブ」という。)を鑑賞。普段は首都圏開催の対バンライブの感想は書くことは無いのだが、興味深いライブだったので記録として残しておきたいと思う。

1.変則ツーマンライブ企画「ダブライズ」とは?

横浜発グループ・nuance(ヌュアンス)がゲストとともに開催してきた変則対バンライブ『ダブライズ』シリーズ。開催概要は、当方が書き出すよりも正確なnuance公式の説明ツイートを参考いただきたい。

サウンド・振付を含めて独自の世界観をステージ上で映し出すのがnuanceの魅力であるが、BPM・人数・振付の構造も異なる2組が曲間をシームレスに繋げるダブライズの噛み合わせは難しい。しかも、今回のオレダブでは、ライブ当日にくじ引きで楽曲を選び、約1時間でセトリに仕上げて披露する過酷なレギュレーションを設けていた。

2.ワークショップ型で垣間見たアイドルの「考える力」

観客を入れたライブハウスのステージ上でくじ引きを終えた2組は、組合せや繋ぎ方をその場で考える。まるで、演劇におけるワークショップを見学しているような感覚であった。セトリを作り上げるため、演者は自身の持ち曲の構造を相手に的確に伝えること、相手側の楽曲の構造を把握して自分たちの曲に繋げるアイディアを出し合う。

【参考図】クロスノエシス『VENOM』⇒ nuance『ナナイロナミダ』

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レダブのセトリを作るということは、単純に曲順を並べるだけではない。楽曲をシームレスに繋ぐためには、【参考図】のようにクロスノエシスとnuanceが並ぶ配置を設計するとともに、nuanceをステージ上に呼び込み、クロスノエシスを上手く袖下に逃がす仕組みも考えなければならない。

ameblo.jp

両陣営サウンドプロデューサーの助言、過去のダブライズで培った再現性のある繋ぎはあったものの、大半はその場で決めた内容であった。終演後に双方のメンバーに話を聞いたところ、想像以上に頭の体力が削られたようだった。

そうした中で、議論の場を回す進行役を担ったnuance・misakiさん、持ち歌の振付を論理的に説明する等の高い言語化能力を発揮したクロスノエシス・FLAMEさん&AMEBAさん、アイディアの内容をメモを取りながら要点整理を行ったnuance・わかさんなど、自分の出来ることを率先して行う姿勢も興味深かった。

過去の企画を含めて、ダブライズが成立しているのは彼女たちのスキルだけではなく、論理的思考力も大きいということがよくわかる場面だった。10分ほど押したものの、約1時間で10曲のセットリストを仕上げた彼女たちの仕事ぶりには唸った。

3.作り手側が「ダブライズ」を経験させる意図とは?

インターバルを挟んで臨んだライブは、大きな混乱もなく10曲+αを繋ぐことに成功した。双方のメンバーには疲労と安堵が先行していたが、そして自信にも繋がったようだ。こうした経験は自分たちの表現の幅を広げることであったり、自身の楽曲を客観視する機会にもなったと思う。

nuanceを手がけるフジサキ氏の場合は「これやったら面白そう」の感覚も伝わってくるが、こうした経験を踏まえた伸びしろの部分を意識してるのはたしかだろう。演者にとって相当大変なのは承知であるが、両ユニットのファンとして今後もダブライズ企画を継続して欲しいと思う。メンバープロデュース等の更なる変化球も期待。

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【鑑賞記】エクストロメ静岡!!

年初に「今年は観戦記を中心にブログ更新を頑張る」と述べた勢いで、久々にアイドルライブに関する記事を書きたいと思う。

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1月18日、LIVE ROXY SHIZUOKAで開催された『エクストロメ静岡!!』を鑑賞。

筆者が最近足を運んでいるダークポップダンスアイドル・クロスノエシスが参加すること、静岡はサポーター活動で土地勘があることもそうだが、以前からライブで見たいと思っていた静岡発6人組アイドルグループ・fishbowl(フィッシュボウル)の参加したことが大きな契機となった。

1.金魚鉢が映すセカイ

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活動開始から約1年のfishbowlであるが、『深海』の「第10回アイドル楽曲大賞2021」インディーズ・地方アイドル楽曲部門に4位に入るなど、音楽プロデューサー・ヤマモトショウ氏が手がけた楽曲は既に多くのアイドルファンの耳に届いている。

一方、2021年のイベント・ライブ活動は全て静岡県内だったことから、彼女たちの曲を知るアイドルファンもライブで見る機会は限られていた。そうした経緯もあって、筆者もライブが本当に楽しみだった。

当日2回(1・2部)のステージで見たところ、リリースされている楽曲はもちろん、衣装・パフォーマンスも型に当てはめず、各メンバーの個性に寄り添ったものであるという印象を受けた。例えば、MCで盛り上げる子(久松さん)もいれば、ボーカルのソロで見せ場を作る子(新間さん)もいれば、ダンスが得意なことはパンツルックでダンスを披露する子(木村さん)もいる。単純に役割分担ではなく、個を活かしつつ、グループとしてのパフォーマンスを形成していることがよくわかった。

こうした取組は、現代的な表現であれば「多様性を重んじる」と解すべきだろうか。しかし、色分け・キャラ付けのような記号的なもので分けるのではなく、個の部分をそのまま生かそうとする部分には好印象を抱いた。東西に長く、各地域別の特色が異なる静岡県を体現しているようにも感じた。

グループとしてのパフォーマンスは成長途上というところであるが、新年最初のライブとなる1部を終えて迎えた2部では、歌唱時におけるユニゾンの部分、個々のパフォーマンスも緊張感も取れて大変素晴らしかった。クオリティに対するこだわりも随所に感じただけに、成長曲線をどのように描き、楽曲等がどのように変わっていくのかも非常に楽しみな内容だった。ありきたりの言葉となってしまうが、無限の可能性を感じすにはいられない。是非、今後もフォローしていきたいと思う。

2.コロナ禍のアイドルライブと説得力

エクストロメ静岡!!に参戦したクロスノエシス、MIGMA SHELTERの2組も良いステージだった。コロナ禍のライブは、クラップはあるものの、観客によるコール&レスポンス、口上あるいは激しい動きは原則禁止されている。観客とともに「沸く」ライブ、それを生み出せる「沸き曲」が武器として活かせなくなったからこそ、ステージ上のパフォーマンスに対する説得力が一層求められることとなった。

クロスノエシスさんは変幻自在のポジショナルなダンスと力強いボーカル、MIGMA SHELTERさんは長時間のレイブをこなすフィットネスと会場の熱量を上げるパッションを放ちステージを盛り上げていた。普段とは異なる場所、ライブハウスでもイベントに来た人たちを引き込む力を信頼しての起用だと思われるが、その役割を果たしたのではないだろうか。クロスノエシスのファン視点からも、楽しい遠征したい 経験値を積む意味でも是非また彼女たちを起用してほしいと思う。

引き続き、2022年もアイドルを含めた音楽ライブシーンは厳しい環境下での運営が求められている。長くライブハウスに足を運んでいた筆者でさえ、ワクチン接種前の感染拡大期においては自粛していたように、現在もなおファンのマインドも決して回復しきったとは言えない。そうした中でも吹きはじめた新しい風に筆者は期待が膨らんでいる。

一段と面白くなってきたぞ、2022年のアイドルシーン。

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観戦記:明治安田生命J1リーグ・川崎フロンターレ-清水エスパルス

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8月29日、等々力陸上競技場清水エスパルス戦を観戦。

試合は、川崎が3試合ぶりの勝利。以下、当日の観戦を通じて感じたことについて書いていきたいと思います。

1.ビルドアップVSプレッシング

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対戦相手となる清水さんは、フレッシュな選手を起用して試合に臨まれた。その意味では、両チームとも、起用したメンバーがピッチ上で上手くかみ合うのか否かが、勝敗の行方を占うという印象を受けた。こうした条件下において、川崎は前線からのプレッシングで優位な状況に持ち込むことに成功した。

クラフモフスキー監督が就任した清水さんは、GKから組み立てるビルドアップを採用し、自陣から手数をかけてボールを運ぶことをコンセプトにしておりました。この日の川崎は、相手陣内の深い位置までアグレッシブにプレスを仕掛けていった。連動性は高いとは言えなかったが、両翼に据えた斎藤・宮代両選手の出足の速さは鋭く、ダミアン選手の迫力ある単騎特攻プレスは、ここまで出場機会が限られていた選手を中心に臨んだ清水さん側にとっては嫌なアプローチだと思う。

また、清水さんが最終ラインの圧を外したところに待ち構える、中盤のトライアングルの潰しが効いていた。下田・旗手両選手もやはり機動性に優れ、キャプテンマークを巻いた守田選手も前に出て潰す役割を担うなど、この日の組合せの良い部分を引き出すことができたと思う。

このように、ボール奪取から素早くゴールを狙うかたちを狙う縦の推進力を押し出すことによって、積極的に攻め続けた結果がシュート数「36本」に表れている。極端であるが、今季の川崎が目指す、攻め続ける姿勢を色濃く体現する試合になったと思う。

2.タイムシェア&ローテーション

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表1:川崎フロンターレ 試合出場選手・プレー時間(8月版)

モーニング娘。の往年の名曲『真夏の光線』ではないが、エンドレス、エンドレスサマー連戦中の川崎。去年どころか、今後もまず起こり得ない展開だろう。地獄のような日程の中でも、ルヴァン杯プライムステージ進出、リーグ戦の連勝を10まで伸ばすことができたことは客観的に見ても大きな成果だ。

ただし、アウェイ連戦となった直近2試合は「1敗1分」。今後の戦いに不安を感じたサポーターも少なくはなかっただろう(筆者を含む)。上記表2-2にあるとおり、10連勝を達成した直前3連戦もアウェイ連戦だったこともあり、連戦の疲労度が多くのメンバーに集中していた。連勝が止まった名古屋戦の終盤、名古屋さんのプレー強度の前に跳ね返すことができなかったのは、名古屋イレブンの高い集中力とタスク処理能力によるところが大きいが、川崎側に反撃するだけのエネルギーが残されておらず、ガス欠状態であったことも追い打ちをかけてしまった。連戦の難しさをあらためて実感する敗戦だったと言える。

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表2:8月の出場選手数、プレー時間が180・215分以上

等々力に戻って迎えた8月最後の試合、鬼木監督はフレッシュな選手を先発起用し、リハビリを続けてきた憲剛さんも約10か月ぶりにメンバーに名を連ねた。上記の試合雑感で述べたとおり、清水さんのゲームモデルとの相性は大きかったと思うが、斎藤・宮代選手のように運動量を全面に押し出せるのは疲労度の少なさも攻守のアグレッシブさを後押しするかたちとなった。清水戦の前半は、出場機会と活躍に飢えた選手たちのエナジーに満ち溢れた45分だった。

8月を振り返ると、タイムシェアによる特定選手への依存傾向の軽減に加えて、ターンオーバーによる休養を置くことでコンディションを高い水準にキープする重要性が求められることを実感した。1か月で9試合を消化する非常にハードなスケジュールを、負傷等による離脱は無く乗り切れたことは良かったと思う。7月に離脱した長谷川選手が戻ってくれば、今季を戦う陣容は概ね整ったといえる。まずは、ルヴァン杯を含めた9月13日までの中2~3日の4試合を乗り切るか?鬼木監督の運用面での対応に注目していきたい。

3.思いは重なる

futabanet.jp

清水戦を迎える前日、1枚の写真が話題となった。神戸戦の試合前に斎藤選手がジョギングをする場面を撮影した写真だった。前節の名古屋戦で負傷した三笘選手に変わって急遽、ベンチ入りする可能性があった斎藤選手だが、結局出番は訪れず。折しも、最初の移籍ウインドー終了間近だったこともあり、サポーターは様々な思いを巡らせた。3年目を迎えた斎藤選手の今季にかける決意は誰しもが知るところであり、こうした状況下で出場機会を得られないことに憤りを感じているかもしれないとも考えた。

清水戦で先発出場した斎藤選手には、一段と大きな手拍子が送られたように思えた。今日の活躍に対する期待、真摯な姿勢に対する敬意の双方がこもっているように感じた。思いに応えるかのように斎藤選手はピッチを全力で駆け抜けた。若手選手のようなハツラツとしたプレーに等々力の観衆は一喜一憂した。清水・大久保選手の好セーブの前にネットを揺らすことはできなかったが、振りぬかれたシュートの瞬間、スタジアムの心は重なっていたと私は感じていた。更なる輝きを次の試合でも見たいところだ。

メンバー入りしたものの、出場機会は限られると思っていた憲剛さんであるが、後半2点を追加したことで投入できる状況を作ることができた。久々にピッチ上で見る背番号14番は、テンポよくボールを捌いたと思えば、ペナルティエリア近くで勢いよくシュートを放っていた。「憲剛さん、ゴール狙っているな」と感じた川崎サポは少なくないだろう。そうした隠しきれないゴールへの強い意欲が、ゴールに繋がったとも言える。

一昨年の2018年のゴールも相手のビルドアップをかっさらって決めたかたちが多かったので、近年の得意なかたちでもあるが、ブランクを感じさせない高い集中力と技術で見せるあたりは見事としか言いようがない。

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優勝するために必要なラストピースであることを強く印象づける復帰戦となった。憲剛さんとともに、僕らは走っていく。

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素敵な思い出があなたとまた増えたわ

僕たちだけの エンドレス エンドレス サマ〜

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